「2025年の崖」という問題意識からERPのモダナイゼーションに取り組んでいる企業にとって、見過ごせないのが計画業務のデジタル化である。予算編成に代表される財務計画から在庫水準の最適化のための生産計画に至るまで、ほとんどの企業の計画業務はExcelとメールに依存している。これでは、ビジネス環境の変化に応じて計画を臨機応変に見直したくてもできない。どうすればこの課題を解決できるのか。コロナ禍で不確実性が増大する中、どんな支援が求められているのか。プランニングツールを提供する主要3社に聞いた。
(取材・文/冨永裕子  編集/日高 彰)

S&OPからIBPへの発展

 経済環境の不確実性が高い状況下では、期初に立てた年間経営計画の着地点を見通すことは難しい。世界がコロナ禍に見舞われた後はなおさらだ。ビジネス環境の変化の兆候を迅速にとらえ、リスクを最小に抑えつつ、売り上げや利益、キャッシュフローを最大化する計画プロセスの確立が重要性を増している。

 通常、日本の上場会社は決算発表時に「次期の業績予想」を開示するが、発表済みの数値を修正する必要が生じた場合は、次の発表を待たず、即時に開示しなくてはならない。5月は3月期決算の企業の本決算の発表がピークを迎える。2020年のこの時期は、ちょうど最初の緊急事態宣言下にあったため、大混乱が発生した。この業績予想を正確かつ迅速に開示できるようにする仕組みとして注目を集めるのが、「IBP(Integrated Business Planning:統合ビジネス計画)」ソリューションである。

 IBPは、会計、人事、マーケティング、営業、調達、生産、物流など、組織のあらゆる業務機能が連携し、信頼性の高い一つのデータソースを参照しながら、組織リーダーの継続的な意思決定と対策の実行を支援するアプローチである。このIBPのルーツは、需要と生産のバランス調整のための「S&OP(Sales and Operations Planning)」にさかのぼる。

 SCMが数量ベースで在庫の最適化と納期の順守でオペレーションの最適化を行うのに対し、S&OPは数量ベースの供給計画と金額ベースの財務計画の整合性を保ちつつ、事業計画の達成を目指すアプローチとして1980年代に登場した。この考え方を基に、現代の企業が求めるものに発展させたものがIBPである。

 今のIBPには、S&OPに欠けていた、戦略との整合性や「ヒト」というリソースの最適化の視点が加わっている。エンタープライズソリューションとしてのIBPは、財務計画や業績予想のためのEPM(Enterprise Performance Management)、部門を越えたデータを可視化するBI、シミュレーション機能を融合したものに進化した。