2011年、起業家のマーク・アンドリーセン氏が「Software is Eating the World(ソフトウェアが世界を飲み込む)」と指摘し、あらゆるビジネスがソフトウェア化する未来を予測した。その言葉通り、ウーバー、エアビーアンドビー、フェイスブック、スポティファイ、ネットフリックスなど、デジタルプロダクトを扱う多くの企業が「デジタルディスラプター」となり、既存市場を大きく変えた。その成長の背景には「プロダクトアナリティクス」によるユーザーの行動解析がある。21年にはプロダクトアナリティクスツールを手掛ける2社が国内市場に本格参入した。国内ではまだ聞きなれないプロダクトアナリティクスだが、もはや一部の先進企業だけのものでなはい。
(取材・文/冨永裕子  編集/藤岡 堯)

ビジネスの成長に効くユーザー体験の向上

 プロダクトアナリティクスとは、顧客の行動データを収集し、その分析からインサイトを得るための手法だ。そのためのツールは、「データの収集」と「データの分析」という二つのコア機能で構成され、企業は集めたデータの分析から得た洞察をプロダクト改良のための意思決定に役立てることができる。

 行動データの収集対象となる「顧客」とは「ユーザー」を意味する。従来、エンドユーザーのニーズ把握は主にインタビューによる聞き取りが一般的だった。しかし、この方法で得られるデータは必ずしも正確ではない。ユーザーがどのような機能を使い、操作のどの部分でつまずいたかなど、細部を把握するまでには至らず、声の大きい一部のユーザーの意見が目立ってしまい、陰に潜む重大な要望を反映できないおそれもあるからだ。

 プロダクトアナリティクスはこの課題を解決する方法であり、ソフトウェアの使い方に関する問題をデータで解決するアプローチとも言える。行動データであれば誰かの主観が入る余地は少なく、ユーザー全員から取得できる。一定のデータ量が必要になるものの、これまでの調査手法では難しかった客観的な分析が可能になる。

 プロダクトアナリティクスを活用できる領域は広い。社内の情報システムはもちろん、ソフトウェアビジネスを展開しているSaaSベンダー、コンシューマー向けにデジタルサービスを手掛ける企業、ECサイトの運営事業者、IoTデバイスを提供するメーカーも、宝の山であるユーザーの行動データを生かすことができる。プロダクトの使われ方を分析して得たインサイトを、ユーザー体験(UX)の向上に役立て、ビジネス成長につなぐことも期待できる。

 今後の需要拡大を見据え、日本市場に進出した米アンプリチュードと米ペンドのビジネス戦略から、プロダクトアナリティクスの可能性を探る。