Special Feature
快進撃続く14型ノートPC 市場変革もたらす“台風の目”になるか
2022/04/25 09:00
週刊BCN 2022年04月25日vol.1920掲載

14型ディスプレイを搭載したノートPCが人気を集め始めている。全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、2022年3月はノートPCのシェア全体の約15%を占めており、販売台数の構成比率は1年間で約1.6倍に拡大した。PCメーカー各社が投入している機種数も、この3年間で2.3倍に増えており、ノートPC市場に変革をもたらす“台風の目”になる可能性もある。なぜ、14型ノートPCに注目が寄せられているのか。
(取材・文/大河原克行 編集/藤岡 堯)
BCNランキングから見る14型市場(1)
この1年で高まった存在感
現在発売されているノートPCは、ディスプレイサイズでみると、大きく六つに分類することができる。最も売れているのが、メインストリームと呼ばれる15.6型ディスプレイを搭載したノートPCだ。光学ドライブを内蔵するほか、さまざまなインターフェースを備えるなど「全部入り」と言われる仕様の製品が多く、家庭内で利用するにも適した1台となっている。
量販店の店頭でも15.6型は最も目立つところに展示されている場合が多く、BCNの調べでは、22年3月のノートPCの販売実績のうち、43.4%を占めている(表1)。

次いで多いのが、13.3型である。持ち運びに適したモバイルノートとして認知されている領域で、22年3月の実績では32.0%となり、3台に1台を占めるまでに高まっている。
据え置きに近い使われ方をする15型台と持ち運びしやすい13型台、その間となるのが14型台である。22年3月で14型台は14.8%を占めており、21年4月の9.4%から構成比率を高めながら、ここ2カ月は、過去最高を更新し続けている。
そのほか、GIGAスクール構想でも積極的に導入が進んだ11.6型以下のディスプレイを搭載したノートPC、モバイル性を追求した12型のノートPC、据え置きで利用することがほぼ前提の17型ディスプレイを搭載するノートPCがあり、BCNのデータでは、それぞれ2~3%の構成比率となっている。
この六つのカテゴリーの構成比率をみると、21年4月と比較して、唯一、比率を高めているのが14型ノートPCであり、しかも比率は約1.6倍に拡大しているのだ。この1年で一気に存在感を増していることがわかる。
14型への関心が高まっている背景には何があるのだろうか。各ベンダーの戦略を見ると、いくつかの理由が浮かんでくる。
家庭にちょうどいいサイズ
一つは、個人市場において、新たな需要を創出している点だ。コロナ禍において、多くの企業がテレワークを導入し、在宅学習も広がっている。それに伴って、家庭内で利用するPCを新たに購入するといった動きが見られるなかで、14型がそれに適したモデルとして注目を集めているのだ。富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の竹田弘康・副社長兼COOは、「なるべく大画面であり、それでいて省スペースであること、さらには、家の中でも持ち運びたいというニーズが高まっている。15型では持ち運びにくい、13型では画面が小さいといった課題を解決するカテゴリーとして14型が注目を集めている。家庭内でちょうどいいサイズと認識されており、家庭内での2台目需要も刈り取っている」と指摘する。FCCLが22年3月に実施した調査では、2年以内にPCを購入したユーザーのうち、14型ノートPCの保有者はおよそ10%を占めているという。
FCCLは21年10月に、14型としてLIFEBOOK MHシリーズを発表。「家族みんなにちょうどいい」をコンセプトに、家のなかを快適に持ち運べること、自宅で仕事をしたり、学習したりする際にも適したモデルであることを訴求している。
日本HPの「HP Pavilion x360 14-dy」は、狭額縁化により画面占有率を88%にまで引き上げた。一方、13型モデルと比較しても、横幅では13mm増、高さでは3.9mm増にとどめ、奥行きでは5mm減とし、14型ディスプレイでも13型とほぼ同じサイズに収めている。狭額縁化や筐体の小型化によって、より大画面がほしいというニーズを取り込む狙いだ。
13型モバイルノートPC並みのコンパクト感と、A4ノートPC並みの大画面、充実したポート類による生産性の高さが特徴で、据え置いて利用するだけでなく、時々持ち運んで利用するといった使い方に適している。
BCNの調査によると、22年3月に量販店で最も売れた14型ノートPCは、NECパーソナルコンピュータ(NECPC)の「LAVIE N14」だ(表2)。同製品は「ちょこっとモバイルPC」として位置付けられ、15型である「LAVIE N15」の「おうちメインPC」、13型の「LAVIE N13」の「軽量モバイルPC」の中間的な利用を狙っている。

コストメリットも生みやすい
もう一つの理由が、コスト競争力を持った製品展開ができる領域である点だ。FCCLの竹田副社長兼COOは、「海外では、すでに14型が主流となっており、むしろモバイル性を追求した13型は、日本が特殊市場になっている」と強調。その上で「液晶ディスプレイは、サイズが小さいほどコストが高くなる。13型ディスプレイよりも、14型ディスプレイのほうが、調達コストが低くなり、価格面でもメリットを生みやすい」とする。また、「家庭内で持ち運ぶことだけを想定すれば、1kgを超えた重量でも問題がないため、高価な軽量素材を採用しないで済む。13型よりも購入しやすい価格を実現しやすいカテゴリーである」と続ける。
13型は持ち運びを前提としたモノづくりとなるため、軽量素材を使用することが多く、価格には割高感が生まれやすい。それに対して、14型は持ち運び用途は家庭内やオフィス内などを想定しているため、筐体にはアルミや樹脂を使用することで、購入しやすい価格設定が可能になるというわけだ。
フラッグシップに加えるメーカーも
さらに、見逃せない動きが、14型ノートPCの領域に、ユニークな製品が登場し始めている点だ。Dynabookは、14型でありながら、約940gを実現した法人向けプレミアムモバイルの「dynabook RJ74」を発売。同社の覚道清文・社長兼CEOは「秀抜の軽さだけでなく、速さ、強さに加え、画面の見やすさ、バッテリ駆動時間の長さといったハイブリッドワークを実践する上で必要とされる使いやすさを実現。さらに、持つ喜び、美しさまでも極めた至高の14型プレミアムモバイルPCに仕上げた」と自信をみせる。
歴代のdynabookシリーズでは、「R」という型番は時代を変えたり、節目となったりする製品に命名してきた経緯がある。「dynabook RJ74は、22年の今の時代に求められるハイブリッドワーク向けの14型モバイルになる」とし、14型の領域から新時代のPCを生み出す意気込みを示す。
NECPCでも、883gの14型の「LAVIE NEXTREME Carbon」を発売。カーボン素材により、軽量化と堅牢性を両立し、米国MIL規格に準拠した試験をクリアしたほか、バッテリ駆動は24時間を確保した。LAVIE NEXTREMEは、同社が新たに用意したフラッグシップブランドであり、14型の領域から、新たな挑戦をスタートしている。
「モバイルPCでは、900g以下の重量になると80%以上のユーザーが満足する。また、バッテリ駆動時間では20時間以上で約8割のユーザーが満足する。14型に画面サイズをアップしても、それに応えられるスペックを目指した」(NECPCの森部浩至・ 商品企画本部本部長代理)とする。
打ち心地を追求したキーボード、フルHD対応の200万画素カメラ、ボックス型ステレオスピーカーや360度集音マイク、ヤマハ製AudioEngineによって実現したミーティング機能などにより、「ワンランク上のミーティング環境を実現した」と、新たなワークスタイルに対応した機能をアピールする。
パナソニックコネクト(旧パナソニックコネクティッドソリューションズ社)も21年6月に発売した14型の「レッツノートFV1」によって市場開拓に成功した。ニューノーマルで多様化する働き方をサポートすることを狙って開発したモバイルノートで、13型とほぼ同等の筐体サイズながら、縦横比が3:2という独特の14型ディスプレイを搭載。縦方向が長く、その分、表示領域が広いという特徴が評価されている。マグネシウム合金ボディによる999gの軽量化やウェブ会議環境の快適さなどもセールスポイントとする。
同社の坂元寛明副社長は、「従来の14型ノートPCのLV9に比べると、約5倍の売れ行きで、想定外の反響に驚いている」と手応えを語る。「社内でも、レッツノートは、12型モバイルであるという枠を決めていた部分があった。だが、FV1によって14型以上の領域でも、レッツノートの強みを提案できる新たな市場が生まれた。コロナ禍での市場ニーズの変化、狭額縁化の進展などの技術進化が背景にある。今後、大画面ニーズにも積極的に展開していきたい」とも述べ、14型を新たな事業領域として位置付けようとしている。
BCNランキングから見る14型市場(2)
機種数は1年で1.4倍に
すでに海外では広がりを見せている14型ノートPCだが、ここにきて、日本市場に最適化した付加価値を持った製品も登場している。これも日本の14型ノートPC市場の拡大につながっている要因の一つといえる。BCNのデータでは、販売実績があった14型ノートPCの機種数は、19年3月には84機種だったものが、20年3月には113機種、21年3月には144機種と着実に増えている。22年3月には195機種となり、この3年間で2.3倍に増えている。この1年でも1.4倍となっている。機種数の増加傾向は、14型が15型、13型に続く、重要なカテゴリーの一つに成長しつつあることを意味する(表3)。

14型ノートPCの市場構成比が拡大傾向にあることや、国内PCメーカーから戦略的製品が相次いで登場していることを考えると、今後、14型ノートPCが、PC市場全体の勢力図にも影響を及ぼすことになるのは間違いないだろう。

14型ディスプレイを搭載したノートPCが人気を集め始めている。全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、2022年3月はノートPCのシェア全体の約15%を占めており、販売台数の構成比率は1年間で約1.6倍に拡大した。PCメーカー各社が投入している機種数も、この3年間で2.3倍に増えており、ノートPC市場に変革をもたらす“台風の目”になる可能性もある。なぜ、14型ノートPCに注目が寄せられているのか。
(取材・文/大河原克行 編集/藤岡 堯)
BCNランキングから見る14型市場(1)
この1年で高まった存在感
現在発売されているノートPCは、ディスプレイサイズでみると、大きく六つに分類することができる。最も売れているのが、メインストリームと呼ばれる15.6型ディスプレイを搭載したノートPCだ。光学ドライブを内蔵するほか、さまざまなインターフェースを備えるなど「全部入り」と言われる仕様の製品が多く、家庭内で利用するにも適した1台となっている。
量販店の店頭でも15.6型は最も目立つところに展示されている場合が多く、BCNの調べでは、22年3月のノートPCの販売実績のうち、43.4%を占めている(表1)。

次いで多いのが、13.3型である。持ち運びに適したモバイルノートとして認知されている領域で、22年3月の実績では32.0%となり、3台に1台を占めるまでに高まっている。
据え置きに近い使われ方をする15型台と持ち運びしやすい13型台、その間となるのが14型台である。22年3月で14型台は14.8%を占めており、21年4月の9.4%から構成比率を高めながら、ここ2カ月は、過去最高を更新し続けている。
そのほか、GIGAスクール構想でも積極的に導入が進んだ11.6型以下のディスプレイを搭載したノートPC、モバイル性を追求した12型のノートPC、据え置きで利用することがほぼ前提の17型ディスプレイを搭載するノートPCがあり、BCNのデータでは、それぞれ2~3%の構成比率となっている。
この六つのカテゴリーの構成比率をみると、21年4月と比較して、唯一、比率を高めているのが14型ノートPCであり、しかも比率は約1.6倍に拡大しているのだ。この1年で一気に存在感を増していることがわかる。
14型への関心が高まっている背景には何があるのだろうか。各ベンダーの戦略を見ると、いくつかの理由が浮かんでくる。
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- 14型への関心が高まっている背景 コストメリットも生みやすい
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