Special Feature
タブレットレジが店舗DXの入り口に、データに基づく運営を支援
2022/12/08 09:00
週刊BCN 2022年12月05日vol.1948掲載
テンキーやレシートプリンタを搭載した伝統的なキャッシュレジスターに代わり、汎用的なタブレットとアプリの組み合わせで売り上げを管理できるタブレットレジが普及し、中小規模の事業者が新たな店舗をオープンするときはもはやデファクトスタンダードになりつつある。キャッシュレス対応やコストパフォーマンスで選ばれることの多かったタブレットレジだが、単純な効率化にとどまらず、店舗経営により深く関わる形で浸透している。
(取材・文/日高 彰)
汎用のAndroidタブレットを採用した「EZネットレジ」
単独利用(POSシステム等に接続されないスタンドアローン型)のキャッシュレジスターで最大手のカシオ計算機は6月、Androidタブレットをベースとした「EZネットレジ」を提供を開始し、タブレットレジの市場に本格参入した。
タブレットレジでは後発となるカシオだが、長らく従来型のレジを使ってきた店舗の間でも、タブレットへの移行ニーズがあることは認識していた。移行を促す最も大きい力と考えたのが、国内におけるキャッシュレス決済の普及だ。同社システムビジネスユニットの石川和男・戦略部長は、「単独利用型のレジではキャッシュレス決済端末との連動が行われていないことが多く、現金の売り上げとキャッシュレスの売り上げを別々に管理しなければならないという問題があった」と述べ、キャッシュレス決済の導入で、店舗の業務がより煩雑になっていることを指摘する。
カシオ計算機 システムビジネスユニット 石川和男 戦略部長
インバウンド需要や決済事業者による積極的なポイント施策などによって、小規模店舗でもキャッシュレス決済は急速な普及を見せている。しかし、クレジットカード、電子マネー、二次元コードによる決済などさまざまな決済手段に対応するため、店舗のレジの周辺には複数の決済端末が置かれ、乱雑な状態になっている光景はよく見られる。しかも、それらがレジと連動していないために、スムーズな会計を阻害するのに加え、売り上げの集計も決済手段ごとに行う必要があるなど、店舗にとっての業務負担は増している。
一方でカシオでは、中小店舗支援事業の一つとして、2019年から東京・高円寺の「高円寺パル商店街振興組合」などと共同でIT導入による商店街活性化プロジェクトを開始し、レジを起点とした売り上げ・来店客の分析や、キャッシュレス決済の導入などの実証実験を行っていた。その中でカシオは、実験参加店舗向けに複数のキャッシュレス対応レジを提案したが、参加店舗の半数以上がタッチパネル式のレジを選択したという。それまで従来型のレジを使っていた店舗でも、機能や視認性、操作性の面でタッチパネルへの関心が高いことがわかった。
ただし、選択肢の中にあった当時のタッチパネル型レジは専用のハードウェアを用いる機種だったため、1台30万円程度とコストの面で小規模店舗には導入のハードルが高かった。EZネットレジでは、カシオは本体に汎用のAndroidタブレット(レノボ製)を採用。キャッシュドロアーやレシートプリンタなどを含めても十数万円で導入できる価格帯を実現し、タッチパネル型レジの本格普及を図りたい考えだ。
タブレットレジでは後発となるカシオがもう一つの武器としているのが、キャッシュレス決済システムの開発に加え、決済代行サービス(100%子会社のCXDネクストが運営)を自社グループで手がけているという点だ。さらに今年7月、欧州最大手の加盟店契約会社(アクワイアラ)である仏Worldline(ワールドライン)と業務提携することで、業界標準の3.24%よりも低廉な手数料でキャッシュレス決済サービスの提供を開始した。EZネットレジとカシオのキャッシュレス決済サービスを同時に導入する店舗には、ビザ/マスターカードの場合2.95%、交通系電子マネーの場合1.95%の手数料率を適用する。小規模店舗にとって導入の障害となる端末代とランニングコストの両方を低減することで、従来型のレジからの移行を促していく。
また、高機能なタブレットレジが店舗に導入されると、従来は合計金額や大まかな品目でしか管理できなかった売り上げを、商品単位で分析できるようになる。EZネットレジはクラウド上のダッシュボード画面を通じて、日別の売り上げ実績や客数をリアルタイムで確認することが可能で、データに基づく店舗運営への意識が高まる。
加えてカシオが狙うのは、商店街に対してのEZネットレジの一括導入だ。EZネットレジを商店街の推奨機とし、商店街側の窓口となる導入担当者を設置した商店街に、キャッシュレス決済サービスでの特別決済手数料率を適用するほか、ビーコン端末を用いた来店客属性調査(有償)などを提供。個店のデジタル化と同時に、街ぐるみでのデータ活用を推進することで、来客数の増加や、ターゲットとする客層とのマッチングなどを図っていく。店舗の許諾が得られれば、商店街全体での売り上げ推移やキャッシュレス利用状況なども集計することが可能という。
従来型のレジは、税制の改正といった制度対応が必要になるときに引き合いが急増する傾向にあったが、タブレットレジはそのような特需に左右されることなく、店舗経営改革のツールとして提案が可能だ。カシオでは、商店街や自治体とのつながりが深い地場の販売パートナーなどと組んで、「小規模店舗DX」の入り口となるレジやキャッシュレス決済の拡販に力を入れる。
リクルートホールディングス 北村吉弘 常務執行役員
店舗向けサービスで稼ぎ頭となっているのは、やはりキャッシュレス決済だ。Airレジと連携する同社の「Airペイ」は、クレジットカード、電子マネー、二次元コードによる決済など55種類の決済ブランドに対応しており、月額固定費用や、売り上げ金額の銀行口座への振り込み手数料などを無料としているのが特徴。リクルートホールディングス常務執行役員でリクルート社長の北村吉弘氏によると、Airペイの決済流通額は22年度に約1兆円に達する見込みだという。レジを無料で提供しながら、店舗の営業活動に応じた手数料を得るビジネスモデルが完成している。
リクルートでは、AirレジやAirペイなどのSaaS型店舗支援サービスを総称して「Airビジネスツール」と呼んでいるが、21年度末時点での累計アカウント数は約245万に上る。同社はAirビジネスツールのターゲットとなる潜在的な事業所数を453万箇所と見込んでおり、複数のサービスの連携によりさらにアカウント数を大きく伸ばせると踏んでいる。
有償サービスとしては、受付・順番待ち管理システムの「Airウェイト」、予約管理システムの「Airリザーブ」、勤務シフト管理サービスの「Airシフト」などがある。さらに今年4月、資金調達サービス「Airキャッシュ」を開始した。これは、Airペイの決済実績に応じて資金を提供するもので、同社では「将来の売り上げを今のお金に変える」サービスと銘打っている。
北村社長は「急な運転資金ニーズが発生したときに、どこで資金調達したら良いのかわからない、個人で大きな立て替えや借金をしている、という中小・個人経営者は実はとても多い」と指摘。銀行融資の場合、借りる側にとっては“借金”という心理的ハードルがあることに加え、銀行側にとっても、少額では収益にならないという課題があったが、Airキャッシュは店舗から見て借り入れではなく、将来の売り上げを債権としてリクルートに売却するスキームとなっており、精算も自動的にAirペイの売り上げから差し引く形で行われる。利用金額に対し0.5%~の手数料がリクルートに入る仕組みだ。
Airビジネスツールズを開通するには、通信回線と端末を同時に導入する必要があるため、回線を取り扱っているパートナー経由の販売が多くなっているという。「Airペイを始めたことで新規の代理店が増えた。販売網は拡大基調にある」(北村社長)。同社では予約機能を持つ情報サイト「ホットペッパー」など自社メディアとの連携も強化し、店舗がAirレジを基幹的な業務システムとして活用する世界を目指す。
(取材・文/日高 彰)

キャッシュレスとタッチ式レジを安価に導入可能
新規店舗ではタブレットレジの導入が標準的になったとはいえ、従来からの店舗では現在もキャッシュレジスターを使用していることが多い。しかし、タブレットへの乗り換え需要は従来店舗でも確実に高まっている。
単独利用(POSシステム等に接続されないスタンドアローン型)のキャッシュレジスターで最大手のカシオ計算機は6月、Androidタブレットをベースとした「EZネットレジ」を提供を開始し、タブレットレジの市場に本格参入した。
タブレットレジでは後発となるカシオだが、長らく従来型のレジを使ってきた店舗の間でも、タブレットへの移行ニーズがあることは認識していた。移行を促す最も大きい力と考えたのが、国内におけるキャッシュレス決済の普及だ。同社システムビジネスユニットの石川和男・戦略部長は、「単独利用型のレジではキャッシュレス決済端末との連動が行われていないことが多く、現金の売り上げとキャッシュレスの売り上げを別々に管理しなければならないという問題があった」と述べ、キャッシュレス決済の導入で、店舗の業務がより煩雑になっていることを指摘する。
インバウンド需要や決済事業者による積極的なポイント施策などによって、小規模店舗でもキャッシュレス決済は急速な普及を見せている。しかし、クレジットカード、電子マネー、二次元コードによる決済などさまざまな決済手段に対応するため、店舗のレジの周辺には複数の決済端末が置かれ、乱雑な状態になっている光景はよく見られる。しかも、それらがレジと連動していないために、スムーズな会計を阻害するのに加え、売り上げの集計も決済手段ごとに行う必要があるなど、店舗にとっての業務負担は増している。
一方でカシオでは、中小店舗支援事業の一つとして、2019年から東京・高円寺の「高円寺パル商店街振興組合」などと共同でIT導入による商店街活性化プロジェクトを開始し、レジを起点とした売り上げ・来店客の分析や、キャッシュレス決済の導入などの実証実験を行っていた。その中でカシオは、実験参加店舗向けに複数のキャッシュレス対応レジを提案したが、参加店舗の半数以上がタッチパネル式のレジを選択したという。それまで従来型のレジを使っていた店舗でも、機能や視認性、操作性の面でタッチパネルへの関心が高いことがわかった。
ただし、選択肢の中にあった当時のタッチパネル型レジは専用のハードウェアを用いる機種だったため、1台30万円程度とコストの面で小規模店舗には導入のハードルが高かった。EZネットレジでは、カシオは本体に汎用のAndroidタブレット(レノボ製)を採用。キャッシュドロアーやレシートプリンタなどを含めても十数万円で導入できる価格帯を実現し、タッチパネル型レジの本格普及を図りたい考えだ。
タブレットレジでは後発となるカシオがもう一つの武器としているのが、キャッシュレス決済システムの開発に加え、決済代行サービス(100%子会社のCXDネクストが運営)を自社グループで手がけているという点だ。さらに今年7月、欧州最大手の加盟店契約会社(アクワイアラ)である仏Worldline(ワールドライン)と業務提携することで、業界標準の3.24%よりも低廉な手数料でキャッシュレス決済サービスの提供を開始した。EZネットレジとカシオのキャッシュレス決済サービスを同時に導入する店舗には、ビザ/マスターカードの場合2.95%、交通系電子マネーの場合1.95%の手数料率を適用する。小規模店舗にとって導入の障害となる端末代とランニングコストの両方を低減することで、従来型のレジからの移行を促していく。
また、高機能なタブレットレジが店舗に導入されると、従来は合計金額や大まかな品目でしか管理できなかった売り上げを、商品単位で分析できるようになる。EZネットレジはクラウド上のダッシュボード画面を通じて、日別の売り上げ実績や客数をリアルタイムで確認することが可能で、データに基づく店舗運営への意識が高まる。
加えてカシオが狙うのは、商店街に対してのEZネットレジの一括導入だ。EZネットレジを商店街の推奨機とし、商店街側の窓口となる導入担当者を設置した商店街に、キャッシュレス決済サービスでの特別決済手数料率を適用するほか、ビーコン端末を用いた来店客属性調査(有償)などを提供。個店のデジタル化と同時に、街ぐるみでのデータ活用を推進することで、来客数の増加や、ターゲットとする客層とのマッチングなどを図っていく。店舗の許諾が得られれば、商店街全体での売り上げ推移やキャッシュレス利用状況なども集計することが可能という。
従来型のレジは、税制の改正といった制度対応が必要になるときに引き合いが急増する傾向にあったが、タブレットレジはそのような特需に左右されることなく、店舗経営改革のツールとして提案が可能だ。カシオでは、商店街や自治体とのつながりが深い地場の販売パートナーなどと組んで、「小規模店舗DX」の入り口となるレジやキャッシュレス決済の拡販に力を入れる。
レジは無料で提供し周辺サービスで稼ぐモデル
タブレット型レジで最も多くのユーザーを獲得しているのが、13年から「Airレジ」を提供しているリクルートだ。他のタブレット型レジの多くが有償でアプリケーションやクラウドサービスを提供しているのに対し、同社は周辺サービスとの連携によって収益を得る形態としており、売り上げ登録、会計、管理・分析といったレジの機能を無償で利用できることから、飲食店や小規模小売店を中心に幅広い店舗に導入されている。
店舗向けサービスで稼ぎ頭となっているのは、やはりキャッシュレス決済だ。Airレジと連携する同社の「Airペイ」は、クレジットカード、電子マネー、二次元コードによる決済など55種類の決済ブランドに対応しており、月額固定費用や、売り上げ金額の銀行口座への振り込み手数料などを無料としているのが特徴。リクルートホールディングス常務執行役員でリクルート社長の北村吉弘氏によると、Airペイの決済流通額は22年度に約1兆円に達する見込みだという。レジを無料で提供しながら、店舗の営業活動に応じた手数料を得るビジネスモデルが完成している。
リクルートでは、AirレジやAirペイなどのSaaS型店舗支援サービスを総称して「Airビジネスツール」と呼んでいるが、21年度末時点での累計アカウント数は約245万に上る。同社はAirビジネスツールのターゲットとなる潜在的な事業所数を453万箇所と見込んでおり、複数のサービスの連携によりさらにアカウント数を大きく伸ばせると踏んでいる。
有償サービスとしては、受付・順番待ち管理システムの「Airウェイト」、予約管理システムの「Airリザーブ」、勤務シフト管理サービスの「Airシフト」などがある。さらに今年4月、資金調達サービス「Airキャッシュ」を開始した。これは、Airペイの決済実績に応じて資金を提供するもので、同社では「将来の売り上げを今のお金に変える」サービスと銘打っている。
北村社長は「急な運転資金ニーズが発生したときに、どこで資金調達したら良いのかわからない、個人で大きな立て替えや借金をしている、という中小・個人経営者は実はとても多い」と指摘。銀行融資の場合、借りる側にとっては“借金”という心理的ハードルがあることに加え、銀行側にとっても、少額では収益にならないという課題があったが、Airキャッシュは店舗から見て借り入れではなく、将来の売り上げを債権としてリクルートに売却するスキームとなっており、精算も自動的にAirペイの売り上げから差し引く形で行われる。利用金額に対し0.5%~の手数料がリクルートに入る仕組みだ。
Airビジネスツールズを開通するには、通信回線と端末を同時に導入する必要があるため、回線を取り扱っているパートナー経由の販売が多くなっているという。「Airペイを始めたことで新規の代理店が増えた。販売網は拡大基調にある」(北村社長)。同社では予約機能を持つ情報サイト「ホットペッパー」など自社メディアとの連携も強化し、店舗がAirレジを基幹的な業務システムとして活用する世界を目指す。
テンキーやレシートプリンタを搭載した伝統的なキャッシュレジスターに代わり、汎用的なタブレットとアプリの組み合わせで売り上げを管理できるタブレットレジが普及し、中小規模の事業者が新たな店舗をオープンするときはもはやデファクトスタンダードになりつつある。キャッシュレス対応やコストパフォーマンスで選ばれることの多かったタブレットレジだが、単純な効率化にとどまらず、店舗経営により深く関わる形で浸透している。
(取材・文/日高 彰)
汎用のAndroidタブレットを採用した「EZネットレジ」
単独利用(POSシステム等に接続されないスタンドアローン型)のキャッシュレジスターで最大手のカシオ計算機は6月、Androidタブレットをベースとした「EZネットレジ」を提供を開始し、タブレットレジの市場に本格参入した。
タブレットレジでは後発となるカシオだが、長らく従来型のレジを使ってきた店舗の間でも、タブレットへの移行ニーズがあることは認識していた。移行を促す最も大きい力と考えたのが、国内におけるキャッシュレス決済の普及だ。同社システムビジネスユニットの石川和男・戦略部長は、「単独利用型のレジではキャッシュレス決済端末との連動が行われていないことが多く、現金の売り上げとキャッシュレスの売り上げを別々に管理しなければならないという問題があった」と述べ、キャッシュレス決済の導入で、店舗の業務がより煩雑になっていることを指摘する。
カシオ計算機 システムビジネスユニット 石川和男 戦略部長
インバウンド需要や決済事業者による積極的なポイント施策などによって、小規模店舗でもキャッシュレス決済は急速な普及を見せている。しかし、クレジットカード、電子マネー、二次元コードによる決済などさまざまな決済手段に対応するため、店舗のレジの周辺には複数の決済端末が置かれ、乱雑な状態になっている光景はよく見られる。しかも、それらがレジと連動していないために、スムーズな会計を阻害するのに加え、売り上げの集計も決済手段ごとに行う必要があるなど、店舗にとっての業務負担は増している。
一方でカシオでは、中小店舗支援事業の一つとして、2019年から東京・高円寺の「高円寺パル商店街振興組合」などと共同でIT導入による商店街活性化プロジェクトを開始し、レジを起点とした売り上げ・来店客の分析や、キャッシュレス決済の導入などの実証実験を行っていた。その中でカシオは、実験参加店舗向けに複数のキャッシュレス対応レジを提案したが、参加店舗の半数以上がタッチパネル式のレジを選択したという。それまで従来型のレジを使っていた店舗でも、機能や視認性、操作性の面でタッチパネルへの関心が高いことがわかった。
ただし、選択肢の中にあった当時のタッチパネル型レジは専用のハードウェアを用いる機種だったため、1台30万円程度とコストの面で小規模店舗には導入のハードルが高かった。EZネットレジでは、カシオは本体に汎用のAndroidタブレット(レノボ製)を採用。キャッシュドロアーやレシートプリンタなどを含めても十数万円で導入できる価格帯を実現し、タッチパネル型レジの本格普及を図りたい考えだ。
タブレットレジでは後発となるカシオがもう一つの武器としているのが、キャッシュレス決済システムの開発に加え、決済代行サービス(100%子会社のCXDネクストが運営)を自社グループで手がけているという点だ。さらに今年7月、欧州最大手の加盟店契約会社(アクワイアラ)である仏Worldline(ワールドライン)と業務提携することで、業界標準の3.24%よりも低廉な手数料でキャッシュレス決済サービスの提供を開始した。EZネットレジとカシオのキャッシュレス決済サービスを同時に導入する店舗には、ビザ/マスターカードの場合2.95%、交通系電子マネーの場合1.95%の手数料率を適用する。小規模店舗にとって導入の障害となる端末代とランニングコストの両方を低減することで、従来型のレジからの移行を促していく。
また、高機能なタブレットレジが店舗に導入されると、従来は合計金額や大まかな品目でしか管理できなかった売り上げを、商品単位で分析できるようになる。EZネットレジはクラウド上のダッシュボード画面を通じて、日別の売り上げ実績や客数をリアルタイムで確認することが可能で、データに基づく店舗運営への意識が高まる。
加えてカシオが狙うのは、商店街に対してのEZネットレジの一括導入だ。EZネットレジを商店街の推奨機とし、商店街側の窓口となる導入担当者を設置した商店街に、キャッシュレス決済サービスでの特別決済手数料率を適用するほか、ビーコン端末を用いた来店客属性調査(有償)などを提供。個店のデジタル化と同時に、街ぐるみでのデータ活用を推進することで、来客数の増加や、ターゲットとする客層とのマッチングなどを図っていく。店舗の許諾が得られれば、商店街全体での売り上げ推移やキャッシュレス利用状況なども集計することが可能という。
従来型のレジは、税制の改正といった制度対応が必要になるときに引き合いが急増する傾向にあったが、タブレットレジはそのような特需に左右されることなく、店舗経営改革のツールとして提案が可能だ。カシオでは、商店街や自治体とのつながりが深い地場の販売パートナーなどと組んで、「小規模店舗DX」の入り口となるレジやキャッシュレス決済の拡販に力を入れる。
(取材・文/日高 彰)

キャッシュレスとタッチ式レジを安価に導入可能
新規店舗ではタブレットレジの導入が標準的になったとはいえ、従来からの店舗では現在もキャッシュレジスターを使用していることが多い。しかし、タブレットへの乗り換え需要は従来店舗でも確実に高まっている。
単独利用(POSシステム等に接続されないスタンドアローン型)のキャッシュレジスターで最大手のカシオ計算機は6月、Androidタブレットをベースとした「EZネットレジ」を提供を開始し、タブレットレジの市場に本格参入した。
タブレットレジでは後発となるカシオだが、長らく従来型のレジを使ってきた店舗の間でも、タブレットへの移行ニーズがあることは認識していた。移行を促す最も大きい力と考えたのが、国内におけるキャッシュレス決済の普及だ。同社システムビジネスユニットの石川和男・戦略部長は、「単独利用型のレジではキャッシュレス決済端末との連動が行われていないことが多く、現金の売り上げとキャッシュレスの売り上げを別々に管理しなければならないという問題があった」と述べ、キャッシュレス決済の導入で、店舗の業務がより煩雑になっていることを指摘する。
インバウンド需要や決済事業者による積極的なポイント施策などによって、小規模店舗でもキャッシュレス決済は急速な普及を見せている。しかし、クレジットカード、電子マネー、二次元コードによる決済などさまざまな決済手段に対応するため、店舗のレジの周辺には複数の決済端末が置かれ、乱雑な状態になっている光景はよく見られる。しかも、それらがレジと連動していないために、スムーズな会計を阻害するのに加え、売り上げの集計も決済手段ごとに行う必要があるなど、店舗にとっての業務負担は増している。
一方でカシオでは、中小店舗支援事業の一つとして、2019年から東京・高円寺の「高円寺パル商店街振興組合」などと共同でIT導入による商店街活性化プロジェクトを開始し、レジを起点とした売り上げ・来店客の分析や、キャッシュレス決済の導入などの実証実験を行っていた。その中でカシオは、実験参加店舗向けに複数のキャッシュレス対応レジを提案したが、参加店舗の半数以上がタッチパネル式のレジを選択したという。それまで従来型のレジを使っていた店舗でも、機能や視認性、操作性の面でタッチパネルへの関心が高いことがわかった。
ただし、選択肢の中にあった当時のタッチパネル型レジは専用のハードウェアを用いる機種だったため、1台30万円程度とコストの面で小規模店舗には導入のハードルが高かった。EZネットレジでは、カシオは本体に汎用のAndroidタブレット(レノボ製)を採用。キャッシュドロアーやレシートプリンタなどを含めても十数万円で導入できる価格帯を実現し、タッチパネル型レジの本格普及を図りたい考えだ。
タブレットレジでは後発となるカシオがもう一つの武器としているのが、キャッシュレス決済システムの開発に加え、決済代行サービス(100%子会社のCXDネクストが運営)を自社グループで手がけているという点だ。さらに今年7月、欧州最大手の加盟店契約会社(アクワイアラ)である仏Worldline(ワールドライン)と業務提携することで、業界標準の3.24%よりも低廉な手数料でキャッシュレス決済サービスの提供を開始した。EZネットレジとカシオのキャッシュレス決済サービスを同時に導入する店舗には、ビザ/マスターカードの場合2.95%、交通系電子マネーの場合1.95%の手数料率を適用する。小規模店舗にとって導入の障害となる端末代とランニングコストの両方を低減することで、従来型のレジからの移行を促していく。
また、高機能なタブレットレジが店舗に導入されると、従来は合計金額や大まかな品目でしか管理できなかった売り上げを、商品単位で分析できるようになる。EZネットレジはクラウド上のダッシュボード画面を通じて、日別の売り上げ実績や客数をリアルタイムで確認することが可能で、データに基づく店舗運営への意識が高まる。
加えてカシオが狙うのは、商店街に対してのEZネットレジの一括導入だ。EZネットレジを商店街の推奨機とし、商店街側の窓口となる導入担当者を設置した商店街に、キャッシュレス決済サービスでの特別決済手数料率を適用するほか、ビーコン端末を用いた来店客属性調査(有償)などを提供。個店のデジタル化と同時に、街ぐるみでのデータ活用を推進することで、来客数の増加や、ターゲットとする客層とのマッチングなどを図っていく。店舗の許諾が得られれば、商店街全体での売り上げ推移やキャッシュレス利用状況なども集計することが可能という。
従来型のレジは、税制の改正といった制度対応が必要になるときに引き合いが急増する傾向にあったが、タブレットレジはそのような特需に左右されることなく、店舗経営改革のツールとして提案が可能だ。カシオでは、商店街や自治体とのつながりが深い地場の販売パートナーなどと組んで、「小規模店舗DX」の入り口となるレジやキャッシュレス決済の拡販に力を入れる。
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