Special Feature
期待高まるカスタマーサクセスの価値、関連ソリューションのニーズは増大
2023/01/30 09:00
週刊BCN 2023年01月30日vol.1955掲載
米国で生まれたカスタマーサクセスという概念が、日本企業に浸透しつつある。関連ソリューションのニーズは増大しており、IT企業の役割に対する期待感は高まっているといえる。だが、まだ定義や意義を理解している企業は少ないのが実態のようだ。カスタマーサクセスとはどのような概念で、企業はどのような価値を提供するべきなのか。注目されるようになった背景や最新動向、先進事例を取材した。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)
「カスタマーサクセスとは、カスタマーセントリックな企業文化、または、それが根付いた企業のあらゆる活動だ。カスタマーセントリックな企業文化とは何かと言えば、デジタル時代になくてはならない存在になるために、顧客の成功を絶えず追求することを重視する価値観であり、それが組織に浸透していることを指す」
サクセスラボ 弘子ラザヴィ 代表取締役
この概念が登場した背景についてラザヴィ代表取締役は「もはや、従来型のモノの売り切りをしていては、競争に負けてしまう。顧客をとりこにするリテンションモデルのビジネスにシフトしていくことが重要で、カスタマーサクセスが成功の秘訣になる」と語る。
日本を代表するものづくり企業であっても例外ではないという。ラザヴィ代表取締役は、デジタル時代に生き残っていくためには、リテンションモデルにかじを切っていく上で「問題は、IT企業が何をしていくかだ。ITのアドバイザーとしてのポジションを築いている強みを生かし、テクノロジーの道先案内人として顧客の中に入っていけると、リテンションモデルへのシフトがうまくいく。IT企業は顧客に先んじてカスタマーサクセスに取り組む必要がある。カスタマーサクセスを根付かせるためにも、IT企業が総合力を生かして新たな付加価値を提供していくことに期待したい」と話す。
だが、実際は簡単な話ではないようだ。ラザヴィ代表取締役は「顧客のニーズがある限り請負っていく今までのビジネスモデルを捨てずに、新しいモデルに着手していく。この異なるビジネスモデルを同時にマネージし、場合によっては軸足をいずれ後者に移していくことは大きな課題だ。タイミングを見極めつつ準備をしていかなければいけないからだ。これは、もはや経営の仕事と言える」と指摘する。
ラザヴィ代表取締役は、IT企業の指針になればという思いもあって、2022年7月に自ら翻訳した「カスタマーサクセス経営: 顧客に成功と優れた体験(CX)を届けるプロダクト主導型成長(PLG)戦略」を出版した。PLGについては「プロダクトをカスタマージャーニーの最前線に位置付け、プロダクトを体験してもらうことで、リテンションやアダプション、エクスパンションを加速させる戦略だ」としている。
ラザヴィ代表取締役は、カスタマーサクセスを仕事にしたいと思う日本人が増えていくべきであるとも考えており、「SuccessGAKO」と題してカスタマーサクセス人材を輩出するプログラムを開講している。「カスタマーサクセスに取り組まない日本企業は、早晩消える。こんな改革ができる、こんなイノベーティブなことができるというレベルではなく、やらないと消えるということをぜひ伝えたい」と強調する。
Zendesk日本法人
近年、日本企業でカスタマーサクセスへの関心が急速に高まっている。そうした流れに伴い、最先端のテクノロジーを駆使して支援していこうと言う企業が目立つ。なかでも注目したいのは米Zendesk(ゼンデスク)だ。カリフォルニア州を拠点に、カスタマーエクスペリエンスに焦点を当てたパッケージ「Zendesk Suite」を提供している。
Zendesk日本法人 冨永 健 社長
日本法人の設立は13年。参入は早かったものの、長らく大きな投資はしていなかったという。それが、21年あたりから状況が一変。日本法人の冨永健社長は「これまでは先見性のあるスタートアップのユーザーが多かったが、中堅や大手のお客様にも利用が広がってきている。日本法人もサポート部門を中心に人員を拡充している」とし、理由について「コロナ禍によって顧客との接点が一気にリモートになったことに加え、商品の差別化が困難になってきていることがある。製品をより良くするよりも、カスタマーエクスペリエンスに投資し、顧客体験を上げると売り上げが伸びる傾向が見られる」と解説する。
同社の調べでは、国内では、コロナ禍にリモートでの顧客からの問い合わせは19%増加した。それで急きょリモートに投資する動きが加速しているというわけだ。
同社は、この機を逃すまいと、パートナープログラムを重要視しており、冨永社長は「中堅から大手の市場では、『既存のシステムと繋ぎたい』などといった壁が立ちはだかる。インテグレーションが発生するだけに、お客様と一緒にビジネスプロセスを考え、提案し、つくり込んでいけるパートナーの存在が必要になってくるため、パートナー連携に力を入れている」と説明する。
同社は現在、パートナーを四つに分類している。再販、インテグレーション、リファラルとBPOだ。特にBPOに注力しており、特別なプログラムを構築。既に東京電力エナジーパートナーやディー・エヌ・エーなどの大手企業での事例が増えているという。
一方、冨永社長は「日本企業においては、まだまだカスタマーサクセスの定義は定まっていない。会社によって受け止め方が全く違う」とし、「カスタマーサクセスの話をする場合、顧客接点として定義し、業務プロセスを含めて顧客体験を一から設計し直していく必要があるとアドバイスしている」と付け加える。Sansan
カスタマーサクセスという概念が米国で市民権を得たのは12年ごろと言われている。ほぼ同時期に、日本でもこの取り組みにいち早く着手した企業がある。それが、Sansanだ。その経緯を、同社の執行役員で、カスタマーサクセス部の児玉悠子・部長は、こう語る。
Sansan 児玉悠子 執行役員
「当時、当社の主力プロダクトである『Sansan』をクラウド名刺管理サービスというコンセプトで訴求していたものの、名刺をスキャナに通す行動がなかなか定着せず、ボトルネックになっていた。われわれが価値を提供するためにはデータベースの構築が不可欠であったため、そこを支援したいと思ったのがきっかけだ」
価値提供への強い思いは今も受け継がれており、同社のカスタマーサクセス部には120人のメンバーが在籍する。同社のカスタマーサクセスの特徴として、児玉執行役員は「一つは、お客様のサクセスにしっかりと向き合うフェーズに入れていること。最初はオンボーディングが中心だったが、それを実現した後にチャーンマネジメントを行い、今はお客様に本当の意味で価値を提供できる段階にある。もう一つは、マルチプロダクトに適用できる組織体制になっていることだ」と説く。
同社は近年、プロダクトのラインアップを広げており、カスタマーサクセス部では営業DXサービスをうたう「Sansan」以外に、請求書管理サービス「BillOne」などもカバーしている。特に、Sansanでのカスタマーサクセスの活動として重視しているのが定着化だ。名刺以外の接点も蓄積できる機能がリリースされていることもあって、顧客企業でのデータ量が増えているかどうかを見ているという。
児玉執行役員は「KPIとしては、チャーンの金額やレートだけでなく、利用率にも着目している。接点が蓄積されているか、データベースが構築されているか、データが定期的に、しかも安定して入ってきているかといった点を指標にしている」と語る。
目標の達成に向け、同社はSansanのサポート業務にZendeskのソリューションを活用している。メリットは、対応件数や解決時間などの問い合わせに関する主要なKPIをZendesk上で自動的に蓄積、集計し可視化できることだといい、児玉執行役員は「問い合せの現状把握はもちろん、チームや個人ごとの目標設定も可能とあって手放せない」と評価する。
さまざまな工夫を施してきたことで、今やサービスの解約率は業界屈指の低水準になっている。児玉執行役員は「それぞれの会社でプロダクトを通じて伝えたい価値を明確にした上で、それに見合った指標をいち早く設定し、達成できているかを継続的に見ていくことが重要になる」と主張。10年余りのカスタマーサクセスの取り組みを通じた成果については「解約率を抑えることができているのは、顧客に価値を提供できている証し。データを活用した営業戦略が実践できているといった事例がたくさん出てきている」と胸を張る。
ただ、児玉執行役員はまだ満足していない。「最終的に目指しているカスタマーサクセスのゴールは、お客様に届けたい価値を体感していただき、ROIの向上・達成に貢献していくこと。そこに向けてやらなければいけないことは、まだまだたくさんある」と気を引き締めている。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)

IT企業は顧客に先んじた対応を
そもそも、カスタマーサクセスとは何か。日本にその概念を広めたパイオニアと言われるサクセスラボの弘子ラザヴィ代表取締役は、こう定義する。「カスタマーサクセスとは、カスタマーセントリックな企業文化、または、それが根付いた企業のあらゆる活動だ。カスタマーセントリックな企業文化とは何かと言えば、デジタル時代になくてはならない存在になるために、顧客の成功を絶えず追求することを重視する価値観であり、それが組織に浸透していることを指す」
この概念が登場した背景についてラザヴィ代表取締役は「もはや、従来型のモノの売り切りをしていては、競争に負けてしまう。顧客をとりこにするリテンションモデルのビジネスにシフトしていくことが重要で、カスタマーサクセスが成功の秘訣になる」と語る。
日本を代表するものづくり企業であっても例外ではないという。ラザヴィ代表取締役は、デジタル時代に生き残っていくためには、リテンションモデルにかじを切っていく上で「問題は、IT企業が何をしていくかだ。ITのアドバイザーとしてのポジションを築いている強みを生かし、テクノロジーの道先案内人として顧客の中に入っていけると、リテンションモデルへのシフトがうまくいく。IT企業は顧客に先んじてカスタマーサクセスに取り組む必要がある。カスタマーサクセスを根付かせるためにも、IT企業が総合力を生かして新たな付加価値を提供していくことに期待したい」と話す。
だが、実際は簡単な話ではないようだ。ラザヴィ代表取締役は「顧客のニーズがある限り請負っていく今までのビジネスモデルを捨てずに、新しいモデルに着手していく。この異なるビジネスモデルを同時にマネージし、場合によっては軸足をいずれ後者に移していくことは大きな課題だ。タイミングを見極めつつ準備をしていかなければいけないからだ。これは、もはや経営の仕事と言える」と指摘する。
ラザヴィ代表取締役は、IT企業の指針になればという思いもあって、2022年7月に自ら翻訳した「カスタマーサクセス経営: 顧客に成功と優れた体験(CX)を届けるプロダクト主導型成長(PLG)戦略」を出版した。PLGについては「プロダクトをカスタマージャーニーの最前線に位置付け、プロダクトを体験してもらうことで、リテンションやアダプション、エクスパンションを加速させる戦略だ」としている。
ラザヴィ代表取締役は、カスタマーサクセスを仕事にしたいと思う日本人が増えていくべきであるとも考えており、「SuccessGAKO」と題してカスタマーサクセス人材を輩出するプログラムを開講している。「カスタマーサクセスに取り組まない日本企業は、早晩消える。こんな改革ができる、こんなイノベーティブなことができるというレベルではなく、やらないと消えるということをぜひ伝えたい」と強調する。
Zendesk日本法人
中堅や大手にも利用が拡大
近年、日本企業でカスタマーサクセスへの関心が急速に高まっている。そうした流れに伴い、最先端のテクノロジーを駆使して支援していこうと言う企業が目立つ。なかでも注目したいのは米Zendesk(ゼンデスク)だ。カリフォルニア州を拠点に、カスタマーエクスペリエンスに焦点を当てたパッケージ「Zendesk Suite」を提供している。
日本法人の設立は13年。参入は早かったものの、長らく大きな投資はしていなかったという。それが、21年あたりから状況が一変。日本法人の冨永健社長は「これまでは先見性のあるスタートアップのユーザーが多かったが、中堅や大手のお客様にも利用が広がってきている。日本法人もサポート部門を中心に人員を拡充している」とし、理由について「コロナ禍によって顧客との接点が一気にリモートになったことに加え、商品の差別化が困難になってきていることがある。製品をより良くするよりも、カスタマーエクスペリエンスに投資し、顧客体験を上げると売り上げが伸びる傾向が見られる」と解説する。
同社の調べでは、国内では、コロナ禍にリモートでの顧客からの問い合わせは19%増加した。それで急きょリモートに投資する動きが加速しているというわけだ。
同社は、この機を逃すまいと、パートナープログラムを重要視しており、冨永社長は「中堅から大手の市場では、『既存のシステムと繋ぎたい』などといった壁が立ちはだかる。インテグレーションが発生するだけに、お客様と一緒にビジネスプロセスを考え、提案し、つくり込んでいけるパートナーの存在が必要になってくるため、パートナー連携に力を入れている」と説明する。
同社は現在、パートナーを四つに分類している。再販、インテグレーション、リファラルとBPOだ。特にBPOに注力しており、特別なプログラムを構築。既に東京電力エナジーパートナーやディー・エヌ・エーなどの大手企業での事例が増えているという。
一方、冨永社長は「日本企業においては、まだまだカスタマーサクセスの定義は定まっていない。会社によって受け止め方が全く違う」とし、「カスタマーサクセスの話をする場合、顧客接点として定義し、業務プロセスを含めて顧客体験を一から設計し直していく必要があるとアドバイスしている」と付け加える。
Sansan
データを活用した営業戦略を実践
カスタマーサクセスという概念が米国で市民権を得たのは12年ごろと言われている。ほぼ同時期に、日本でもこの取り組みにいち早く着手した企業がある。それが、Sansanだ。その経緯を、同社の執行役員で、カスタマーサクセス部の児玉悠子・部長は、こう語る。
「当時、当社の主力プロダクトである『Sansan』をクラウド名刺管理サービスというコンセプトで訴求していたものの、名刺をスキャナに通す行動がなかなか定着せず、ボトルネックになっていた。われわれが価値を提供するためにはデータベースの構築が不可欠であったため、そこを支援したいと思ったのがきっかけだ」
価値提供への強い思いは今も受け継がれており、同社のカスタマーサクセス部には120人のメンバーが在籍する。同社のカスタマーサクセスの特徴として、児玉執行役員は「一つは、お客様のサクセスにしっかりと向き合うフェーズに入れていること。最初はオンボーディングが中心だったが、それを実現した後にチャーンマネジメントを行い、今はお客様に本当の意味で価値を提供できる段階にある。もう一つは、マルチプロダクトに適用できる組織体制になっていることだ」と説く。
同社は近年、プロダクトのラインアップを広げており、カスタマーサクセス部では営業DXサービスをうたう「Sansan」以外に、請求書管理サービス「BillOne」などもカバーしている。特に、Sansanでのカスタマーサクセスの活動として重視しているのが定着化だ。名刺以外の接点も蓄積できる機能がリリースされていることもあって、顧客企業でのデータ量が増えているかどうかを見ているという。
児玉執行役員は「KPIとしては、チャーンの金額やレートだけでなく、利用率にも着目している。接点が蓄積されているか、データベースが構築されているか、データが定期的に、しかも安定して入ってきているかといった点を指標にしている」と語る。
目標の達成に向け、同社はSansanのサポート業務にZendeskのソリューションを活用している。メリットは、対応件数や解決時間などの問い合わせに関する主要なKPIをZendesk上で自動的に蓄積、集計し可視化できることだといい、児玉執行役員は「問い合せの現状把握はもちろん、チームや個人ごとの目標設定も可能とあって手放せない」と評価する。
さまざまな工夫を施してきたことで、今やサービスの解約率は業界屈指の低水準になっている。児玉執行役員は「それぞれの会社でプロダクトを通じて伝えたい価値を明確にした上で、それに見合った指標をいち早く設定し、達成できているかを継続的に見ていくことが重要になる」と主張。10年余りのカスタマーサクセスの取り組みを通じた成果については「解約率を抑えることができているのは、顧客に価値を提供できている証し。データを活用した営業戦略が実践できているといった事例がたくさん出てきている」と胸を張る。
ただ、児玉執行役員はまだ満足していない。「最終的に目指しているカスタマーサクセスのゴールは、お客様に届けたい価値を体感していただき、ROIの向上・達成に貢献していくこと。そこに向けてやらなければいけないことは、まだまだたくさんある」と気を引き締めている。
米国で生まれたカスタマーサクセスという概念が、日本企業に浸透しつつある。関連ソリューションのニーズは増大しており、IT企業の役割に対する期待感は高まっているといえる。だが、まだ定義や意義を理解している企業は少ないのが実態のようだ。カスタマーサクセスとはどのような概念で、企業はどのような価値を提供するべきなのか。注目されるようになった背景や最新動向、先進事例を取材した。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)
「カスタマーサクセスとは、カスタマーセントリックな企業文化、または、それが根付いた企業のあらゆる活動だ。カスタマーセントリックな企業文化とは何かと言えば、デジタル時代になくてはならない存在になるために、顧客の成功を絶えず追求することを重視する価値観であり、それが組織に浸透していることを指す」
サクセスラボ 弘子ラザヴィ 代表取締役
この概念が登場した背景についてラザヴィ代表取締役は「もはや、従来型のモノの売り切りをしていては、競争に負けてしまう。顧客をとりこにするリテンションモデルのビジネスにシフトしていくことが重要で、カスタマーサクセスが成功の秘訣になる」と語る。
日本を代表するものづくり企業であっても例外ではないという。ラザヴィ代表取締役は、デジタル時代に生き残っていくためには、リテンションモデルにかじを切っていく上で「問題は、IT企業が何をしていくかだ。ITのアドバイザーとしてのポジションを築いている強みを生かし、テクノロジーの道先案内人として顧客の中に入っていけると、リテンションモデルへのシフトがうまくいく。IT企業は顧客に先んじてカスタマーサクセスに取り組む必要がある。カスタマーサクセスを根付かせるためにも、IT企業が総合力を生かして新たな付加価値を提供していくことに期待したい」と話す。
だが、実際は簡単な話ではないようだ。ラザヴィ代表取締役は「顧客のニーズがある限り請負っていく今までのビジネスモデルを捨てずに、新しいモデルに着手していく。この異なるビジネスモデルを同時にマネージし、場合によっては軸足をいずれ後者に移していくことは大きな課題だ。タイミングを見極めつつ準備をしていかなければいけないからだ。これは、もはや経営の仕事と言える」と指摘する。
ラザヴィ代表取締役は、IT企業の指針になればという思いもあって、2022年7月に自ら翻訳した「カスタマーサクセス経営: 顧客に成功と優れた体験(CX)を届けるプロダクト主導型成長(PLG)戦略」を出版した。PLGについては「プロダクトをカスタマージャーニーの最前線に位置付け、プロダクトを体験してもらうことで、リテンションやアダプション、エクスパンションを加速させる戦略だ」としている。
ラザヴィ代表取締役は、カスタマーサクセスを仕事にしたいと思う日本人が増えていくべきであるとも考えており、「SuccessGAKO」と題してカスタマーサクセス人材を輩出するプログラムを開講している。「カスタマーサクセスに取り組まない日本企業は、早晩消える。こんな改革ができる、こんなイノベーティブなことができるというレベルではなく、やらないと消えるということをぜひ伝えたい」と強調する。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)

IT企業は顧客に先んじた対応を
そもそも、カスタマーサクセスとは何か。日本にその概念を広めたパイオニアと言われるサクセスラボの弘子ラザヴィ代表取締役は、こう定義する。「カスタマーサクセスとは、カスタマーセントリックな企業文化、または、それが根付いた企業のあらゆる活動だ。カスタマーセントリックな企業文化とは何かと言えば、デジタル時代になくてはならない存在になるために、顧客の成功を絶えず追求することを重視する価値観であり、それが組織に浸透していることを指す」
この概念が登場した背景についてラザヴィ代表取締役は「もはや、従来型のモノの売り切りをしていては、競争に負けてしまう。顧客をとりこにするリテンションモデルのビジネスにシフトしていくことが重要で、カスタマーサクセスが成功の秘訣になる」と語る。
日本を代表するものづくり企業であっても例外ではないという。ラザヴィ代表取締役は、デジタル時代に生き残っていくためには、リテンションモデルにかじを切っていく上で「問題は、IT企業が何をしていくかだ。ITのアドバイザーとしてのポジションを築いている強みを生かし、テクノロジーの道先案内人として顧客の中に入っていけると、リテンションモデルへのシフトがうまくいく。IT企業は顧客に先んじてカスタマーサクセスに取り組む必要がある。カスタマーサクセスを根付かせるためにも、IT企業が総合力を生かして新たな付加価値を提供していくことに期待したい」と話す。
だが、実際は簡単な話ではないようだ。ラザヴィ代表取締役は「顧客のニーズがある限り請負っていく今までのビジネスモデルを捨てずに、新しいモデルに着手していく。この異なるビジネスモデルを同時にマネージし、場合によっては軸足をいずれ後者に移していくことは大きな課題だ。タイミングを見極めつつ準備をしていかなければいけないからだ。これは、もはや経営の仕事と言える」と指摘する。
ラザヴィ代表取締役は、IT企業の指針になればという思いもあって、2022年7月に自ら翻訳した「カスタマーサクセス経営: 顧客に成功と優れた体験(CX)を届けるプロダクト主導型成長(PLG)戦略」を出版した。PLGについては「プロダクトをカスタマージャーニーの最前線に位置付け、プロダクトを体験してもらうことで、リテンションやアダプション、エクスパンションを加速させる戦略だ」としている。
ラザヴィ代表取締役は、カスタマーサクセスを仕事にしたいと思う日本人が増えていくべきであるとも考えており、「SuccessGAKO」と題してカスタマーサクセス人材を輩出するプログラムを開講している。「カスタマーサクセスに取り組まない日本企業は、早晩消える。こんな改革ができる、こんなイノベーティブなことができるというレベルではなく、やらないと消えるということをぜひ伝えたい」と強調する。
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- Zendesk日本法人 中堅や大手にも利用が拡大
- Sansan データを活用した営業戦略を実践
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