Special Feature
生成AIがオラクルの全てを変える 米国で「Oracle CloudWorld」開催
2023/10/09 09:00
週刊BCN 2023年10月09日vol.1987掲載
【米ラスベガス発】米Oracle(オラクル)は米国時間9月18日から21日、米ラスベガスで年次イベントの「Oracle CloudWorld」を開催した。昨年から会場をラスベガスに移すとともに、イベント名を「OpenWorld」から「CloudWorld」へと代えてクラウド戦略を前面に押し出す同社だが、今回の話題の多くは生成AI。「Gen-AIWorld」とも呼ぶべき内容で、ラリー・エリソン会長兼CTOは、生成AIが同社の状況を「根本的に変えようとしている」と強調した。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)
エリソン会長は、「1年ほど前に生成AIが登場し、それが世の中の全てを変え、オラクルの全ても変える」と話す。これまで新しい技術に関心を示さなかった国の代表や政府首脳なども生成AIに関心を示している。一方でAI専門家などはこの新しい技術のリスクを懸念し、利用の規制を議論している。エリソン会長は、新しい技術への懸念もあるが「生成AIとそのための大規模言語モデル構築では、数十億ドル規模の投資が数え切れないほどある。この技術が最も重要なコンピューター技術であるかどうかを、みんなが知りたがっている」と指摘する。
生成AIは「世の中の全てを変え、オラクルの全ても変える」と力を込める
ラリー・エリソン会長兼CTO
「ChatGPT」を提供する米OpenAI(オープンエーアイ)を始め、今後1年でオラクルが支援するカナダのCohere(コヒア)やその他のベンダーが新しい大規模言語モデルを構築し、言語だけでなく画像や音楽、プログラムのコードなどを生成するだろう。新しい生成AI技術が、米Tesla(テスラ)など完全自動運転のクルマの完成を早めるかもしれない。そしてエリソン会長が最近高い関心を示す医薬分野でも、AIによる新薬開発などが加速している。
急激に生成AIが関心を集める状況は、オラクルのビジネスにどう影響するのか。エリソン会長は、同社にとっては良い影響になるという。オラクルでは、クラウド上のコンピューターでデータベースの処理を高速に行うために、コンピューター同士を高速に接続するRemote Data Memory Access(RDMA)というネットワーク技術を利用している。これは別のコンピューターのメモリに直接アクセスできるもので、従来のネットワークの何倍も速くメモリ間でデータを移動できる。
RDMAは大規模言語モデルをトレーニングするためのコンピューターや、ネイティブGPUで構成されたコンピューターでも有効だ。「GPUを相互接続することで、われわれのクラウドはほかのクラウドよりもはるかに速く動作する。クラウドでは時は金なりで、2倍速いことはコストが半分になること。3倍速ければコストは3分の1になる」とエリソン会長。AIモデルのトレーニングでは他のクラウドよりも圧倒的に速く、何倍も安い。だから米NVIDIA(エヌビディア)やコヒア、イーロン・マスク氏が率いる米xAI(エックスエーアイ)などが、AIトレーニングにオラクルのクラウドを選んでいると指摘する。既に1万6000台の「NVIDIA H100」のスーパークラスターが、RDMAネットワークを使って構成されており、これは世界最速のものだという。
既に何年にもわたり、オラクルではデータベースの自動化などさまざまな領域でAIを活用してきた。「とはいえ生成AIはこれまでのAIとは違い、革命的なものだ。画期的でわれわれのビジネスに変革をもたらす。これは、オラクルの状況を根本的に変えようとしている」とエリソン会長は力を込めた。
米Oracle クレイ・マグワイク EVP
クラウドの課題に、電力消費の増大がある。世界中に8000以上のデータセンターがあり、世界全体の電力消費量の3%ほどを占めており、30年には8%に増加するとの予測もある。生成AIの登場でデータセンターの需要がさらに高まっており、一方でエネルギー価格は高騰し、消費電力とCO2の削減により一層取り組む必要がある。
エネルギー効率の面で大きく貢献しているのが、英Arm(アーム)のテクノロジーだ。電力1ワットあたりのコンピューターの計算能力は以前より大きく向上している。「携帯電話やタブレットなど、ポケットに入るものを見るとArmアーキテクチャーが支配している。これには理由があり、それらの機器ではエネルギー消費が極めて重要だからだ。オラクルでは、業界がこのテクノロジーに移行する前から大きな投資をしている。現状、OCIとOracle Fusion Applicationsの新規顧客の95%が、ArmアーキテクチャーのAmpereテクノロジーで稼働している」とマグワイクEVPは明かす。
顧客がAmpereを使うことは、オラクルにとっても消費電力の大きな節約となる。ゲストとしてステージに登壇した米Ampere Computing(アンペール・コンピューティング)のルネ・ジェイムズCEOは、クラウドの課題は性能の向上と同時に、効率性と持続性を発揮することだと指摘する。より低い消費電力で高い性能を発揮するコンピューティングリソースが必要であり、それを満たすために同社ではクラウドネイティブプロセッサーの開発を5年以上前に決断した。高性能で低消費電力への要求は、生成AIの登場でより一層高まっているともいう。
米Ampere Computing ルネ・ジェイムズ CEO
「Ampere A1 Compute」は、OCIで利用できるArmベースのコンピューティングサービスで、最大160コアのプロセッサーを利用できる。これは電力効率が高いだけでなく「信じられないような性能の向上も実現している」とジェイムズCEO。コンピューティングの世界では何十年もの間、電力を性能向上のために使ってきた。熱設計電力500ワットのマイクロプロセッサーやGPUで満たされたデータセンターは、もはや空冷では冷やせない。電力供給網の制限で新たなデータセンターが設置できないこともある。これらの課題解決には根本的に異なるアプローチが必要であり、それがAmpereだと言う。
今回のイベントでオラクルは、現世代のx86アーキテクチャーのコンピュートシェイプよりも最大44%優れたコストパフォーマンスを実現する「OCI Compute A2」の提供予定も発表した。OCI Compute A2は、最大320コアのベアメタルと最大156コアを単一の仮想マシンで提供できる。
もう一つのマルチクラウド戦略が、イベント直前に発表された、米Microsoft(マイクロソフト)との新たな協業だ。オラクルとマイクロソフト両社の技術を使う顧客は多い。そこでOCIと「Azure」の間を直接接続し、双方のサービスを連携する協業を19年から開始している。既に12リージョンを接続し、これを利用してAzureのコンソールから容易にOCIのデータベースサービスを利用できる「Oracle Database Services for Azure」も追加し、既に500社以上がこれらのサービスを利用しているという。
米Microsoft ジャドソン・アルソフ EVP
この協業をさらに進めたのが、新たにリリースした「Oracle Database at Azure」だ。米マイクロソフトのチーフ・コマーシャル・オフィサーのジャドソン・アルソフEVPは「OCIをAzureの中に入れ、よりシームレスな顧客体験を可能にする」とアピールする。相互接続は革新的だったが、顧客はより低いレイテンシー(遅延時間)を望む。そこでAzureのデータセンターにOCIのラックを置き、オラクルのデータベースサービスをAzureのサービスのように利用できるようにした。まずはこれを12地域でスタートし、「『Copilot』や『Power BI』をオラクルのデータベースに接続して、顧客が生成AIのソリューションをどんどん展開してより良い顧客体験ができる」とアルソフEVPは言う。
今回のCloudWorldでは、ほかにも「Oracle Cloud Applications」に生成AI技術を追加し、業務プロセスをエンドツーエンドで自動化する取り組みが紹介された。「Oracle Database 23c」にはベクトルデータベースが追加され、生成AIの学習に利用するデータを高速かつ効率的にデータベースに追加し利用できる機能の提供も明らかにしている。イベントを通して紹介されたさまざまな新機能が何らかのかたちで生成AIに関連しており、「生成AIがオラクルの全てを変える」というエリソン会長の言葉を裏付けていた。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)

OCIはAI開発で圧倒的に速く コストも数分の1の安さ
エリソン会長による基調講演は、生成AIがITと社会にいかに大きな影響を与えるかが主題だった。エリソン会長は、「1年ほど前に生成AIが登場し、それが世の中の全てを変え、オラクルの全ても変える」と話す。これまで新しい技術に関心を示さなかった国の代表や政府首脳なども生成AIに関心を示している。一方でAI専門家などはこの新しい技術のリスクを懸念し、利用の規制を議論している。エリソン会長は、新しい技術への懸念もあるが「生成AIとそのための大規模言語モデル構築では、数十億ドル規模の投資が数え切れないほどある。この技術が最も重要なコンピューター技術であるかどうかを、みんなが知りたがっている」と指摘する。
ラリー・エリソン会長兼CTO
「ChatGPT」を提供する米OpenAI(オープンエーアイ)を始め、今後1年でオラクルが支援するカナダのCohere(コヒア)やその他のベンダーが新しい大規模言語モデルを構築し、言語だけでなく画像や音楽、プログラムのコードなどを生成するだろう。新しい生成AI技術が、米Tesla(テスラ)など完全自動運転のクルマの完成を早めるかもしれない。そしてエリソン会長が最近高い関心を示す医薬分野でも、AIによる新薬開発などが加速している。
急激に生成AIが関心を集める状況は、オラクルのビジネスにどう影響するのか。エリソン会長は、同社にとっては良い影響になるという。オラクルでは、クラウド上のコンピューターでデータベースの処理を高速に行うために、コンピューター同士を高速に接続するRemote Data Memory Access(RDMA)というネットワーク技術を利用している。これは別のコンピューターのメモリに直接アクセスできるもので、従来のネットワークの何倍も速くメモリ間でデータを移動できる。
RDMAは大規模言語モデルをトレーニングするためのコンピューターや、ネイティブGPUで構成されたコンピューターでも有効だ。「GPUを相互接続することで、われわれのクラウドはほかのクラウドよりもはるかに速く動作する。クラウドでは時は金なりで、2倍速いことはコストが半分になること。3倍速ければコストは3分の1になる」とエリソン会長。AIモデルのトレーニングでは他のクラウドよりも圧倒的に速く、何倍も安い。だから米NVIDIA(エヌビディア)やコヒア、イーロン・マスク氏が率いる米xAI(エックスエーアイ)などが、AIトレーニングにオラクルのクラウドを選んでいると指摘する。既に1万6000台の「NVIDIA H100」のスーパークラスターが、RDMAネットワークを使って構成されており、これは世界最速のものだという。
既に何年にもわたり、オラクルではデータベースの自動化などさまざまな領域でAIを活用してきた。「とはいえ生成AIはこれまでのAIとは違い、革命的なものだ。画期的でわれわれのビジネスに変革をもたらす。これは、オラクルの状況を根本的に変えようとしている」とエリソン会長は力を込めた。
オラクルクラウドの新規ユーザーの大部分がArmアーキテクチャーを選択
「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」担当のクレイ・マグワイク・EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)は、「Building the More Intelligent Future of Cloud(クラウドのよりインテリジェントな未来を築く)」と題して講演した。クラウドは2000年ごろにアプリケーション、つまりSaaSから始まり、数年後にIaaSがスタートした。以降クラウドベンダーは別々のレイヤーのサービスを展開してきたが、オラクルは「インフラ、エンタープライズアプリケーション、そして業界別アプリケーションの機能を単一の統合クラウドにまとめている」とマグワイクEVPは説明。全てのレイヤーでアプリケーションがどのように機能するかを再構築したことで、OCIではパブリック、政府専用クラウド、ソブリンクラウド、顧客のデータセンターで運用する専用リージョンのサービスで、統一された同じクラウド環境を利用できる。
クラウドの課題に、電力消費の増大がある。世界中に8000以上のデータセンターがあり、世界全体の電力消費量の3%ほどを占めており、30年には8%に増加するとの予測もある。生成AIの登場でデータセンターの需要がさらに高まっており、一方でエネルギー価格は高騰し、消費電力とCO2の削減により一層取り組む必要がある。
エネルギー効率の面で大きく貢献しているのが、英Arm(アーム)のテクノロジーだ。電力1ワットあたりのコンピューターの計算能力は以前より大きく向上している。「携帯電話やタブレットなど、ポケットに入るものを見るとArmアーキテクチャーが支配している。これには理由があり、それらの機器ではエネルギー消費が極めて重要だからだ。オラクルでは、業界がこのテクノロジーに移行する前から大きな投資をしている。現状、OCIとOracle Fusion Applicationsの新規顧客の95%が、ArmアーキテクチャーのAmpereテクノロジーで稼働している」とマグワイクEVPは明かす。
顧客がAmpereを使うことは、オラクルにとっても消費電力の大きな節約となる。ゲストとしてステージに登壇した米Ampere Computing(アンペール・コンピューティング)のルネ・ジェイムズCEOは、クラウドの課題は性能の向上と同時に、効率性と持続性を発揮することだと指摘する。より低い消費電力で高い性能を発揮するコンピューティングリソースが必要であり、それを満たすために同社ではクラウドネイティブプロセッサーの開発を5年以上前に決断した。高性能で低消費電力への要求は、生成AIの登場でより一層高まっているともいう。
「Ampere A1 Compute」は、OCIで利用できるArmベースのコンピューティングサービスで、最大160コアのプロセッサーを利用できる。これは電力効率が高いだけでなく「信じられないような性能の向上も実現している」とジェイムズCEO。コンピューティングの世界では何十年もの間、電力を性能向上のために使ってきた。熱設計電力500ワットのマイクロプロセッサーやGPUで満たされたデータセンターは、もはや空冷では冷やせない。電力供給網の制限で新たなデータセンターが設置できないこともある。これらの課題解決には根本的に異なるアプローチが必要であり、それがAmpereだと言う。
今回のイベントでオラクルは、現世代のx86アーキテクチャーのコンピュートシェイプよりも最大44%優れたコストパフォーマンスを実現する「OCI Compute A2」の提供予定も発表した。OCI Compute A2は、最大320コアのベアメタルと最大156コアを単一の仮想マシンで提供できる。
Azureデータセンターの中にOCIのラックを設置する大型協業
マグワイクEVPがもう一つ取りあげたのが、マルチクラウドへの対応だ。昨年、パートナー企業がOCIのテクノロジーを用いてクラウド事業者になれる「Oracle Alloy」を発表した。1年が経過し、イタリアの通信大手テレコムイタリアと野村総合研究所(NRI)がこれを採用したことを明らかにした。NRIでは自社データセンターにOCIのクラウドを導入して利用する「OCI Dedicated Region」を採用しており、その実績を踏まえてOracle Alloyも取り入れている。「NRIは素晴らしいパートナーであり、Alloyのパワーを理解しすぐに採用を決めた。NRIはAlloyを使い官公庁や金融機関など規制の厳しい市場に新たなサービスを提供できる」とマグワイクEVPは話す。もう一つのマルチクラウド戦略が、イベント直前に発表された、米Microsoft(マイクロソフト)との新たな協業だ。オラクルとマイクロソフト両社の技術を使う顧客は多い。そこでOCIと「Azure」の間を直接接続し、双方のサービスを連携する協業を19年から開始している。既に12リージョンを接続し、これを利用してAzureのコンソールから容易にOCIのデータベースサービスを利用できる「Oracle Database Services for Azure」も追加し、既に500社以上がこれらのサービスを利用しているという。
この協業をさらに進めたのが、新たにリリースした「Oracle Database at Azure」だ。米マイクロソフトのチーフ・コマーシャル・オフィサーのジャドソン・アルソフEVPは「OCIをAzureの中に入れ、よりシームレスな顧客体験を可能にする」とアピールする。相互接続は革新的だったが、顧客はより低いレイテンシー(遅延時間)を望む。そこでAzureのデータセンターにOCIのラックを置き、オラクルのデータベースサービスをAzureのサービスのように利用できるようにした。まずはこれを12地域でスタートし、「『Copilot』や『Power BI』をオラクルのデータベースに接続して、顧客が生成AIのソリューションをどんどん展開してより良い顧客体験ができる」とアルソフEVPは言う。
今回のCloudWorldでは、ほかにも「Oracle Cloud Applications」に生成AI技術を追加し、業務プロセスをエンドツーエンドで自動化する取り組みが紹介された。「Oracle Database 23c」にはベクトルデータベースが追加され、生成AIの学習に利用するデータを高速かつ効率的にデータベースに追加し利用できる機能の提供も明らかにしている。イベントを通して紹介されたさまざまな新機能が何らかのかたちで生成AIに関連しており、「生成AIがオラクルの全てを変える」というエリソン会長の言葉を裏付けていた。
【米ラスベガス発】米Oracle(オラクル)は米国時間9月18日から21日、米ラスベガスで年次イベントの「Oracle CloudWorld」を開催した。昨年から会場をラスベガスに移すとともに、イベント名を「OpenWorld」から「CloudWorld」へと代えてクラウド戦略を前面に押し出す同社だが、今回の話題の多くは生成AI。「Gen-AIWorld」とも呼ぶべき内容で、ラリー・エリソン会長兼CTOは、生成AIが同社の状況を「根本的に変えようとしている」と強調した。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)
エリソン会長は、「1年ほど前に生成AIが登場し、それが世の中の全てを変え、オラクルの全ても変える」と話す。これまで新しい技術に関心を示さなかった国の代表や政府首脳なども生成AIに関心を示している。一方でAI専門家などはこの新しい技術のリスクを懸念し、利用の規制を議論している。エリソン会長は、新しい技術への懸念もあるが「生成AIとそのための大規模言語モデル構築では、数十億ドル規模の投資が数え切れないほどある。この技術が最も重要なコンピューター技術であるかどうかを、みんなが知りたがっている」と指摘する。
生成AIは「世の中の全てを変え、オラクルの全ても変える」と力を込める
ラリー・エリソン会長兼CTO
「ChatGPT」を提供する米OpenAI(オープンエーアイ)を始め、今後1年でオラクルが支援するカナダのCohere(コヒア)やその他のベンダーが新しい大規模言語モデルを構築し、言語だけでなく画像や音楽、プログラムのコードなどを生成するだろう。新しい生成AI技術が、米Tesla(テスラ)など完全自動運転のクルマの完成を早めるかもしれない。そしてエリソン会長が最近高い関心を示す医薬分野でも、AIによる新薬開発などが加速している。
急激に生成AIが関心を集める状況は、オラクルのビジネスにどう影響するのか。エリソン会長は、同社にとっては良い影響になるという。オラクルでは、クラウド上のコンピューターでデータベースの処理を高速に行うために、コンピューター同士を高速に接続するRemote Data Memory Access(RDMA)というネットワーク技術を利用している。これは別のコンピューターのメモリに直接アクセスできるもので、従来のネットワークの何倍も速くメモリ間でデータを移動できる。
RDMAは大規模言語モデルをトレーニングするためのコンピューターや、ネイティブGPUで構成されたコンピューターでも有効だ。「GPUを相互接続することで、われわれのクラウドはほかのクラウドよりもはるかに速く動作する。クラウドでは時は金なりで、2倍速いことはコストが半分になること。3倍速ければコストは3分の1になる」とエリソン会長。AIモデルのトレーニングでは他のクラウドよりも圧倒的に速く、何倍も安い。だから米NVIDIA(エヌビディア)やコヒア、イーロン・マスク氏が率いる米xAI(エックスエーアイ)などが、AIトレーニングにオラクルのクラウドを選んでいると指摘する。既に1万6000台の「NVIDIA H100」のスーパークラスターが、RDMAネットワークを使って構成されており、これは世界最速のものだという。
既に何年にもわたり、オラクルではデータベースの自動化などさまざまな領域でAIを活用してきた。「とはいえ生成AIはこれまでのAIとは違い、革命的なものだ。画期的でわれわれのビジネスに変革をもたらす。これは、オラクルの状況を根本的に変えようとしている」とエリソン会長は力を込めた。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)

OCIはAI開発で圧倒的に速く コストも数分の1の安さ
エリソン会長による基調講演は、生成AIがITと社会にいかに大きな影響を与えるかが主題だった。エリソン会長は、「1年ほど前に生成AIが登場し、それが世の中の全てを変え、オラクルの全ても変える」と話す。これまで新しい技術に関心を示さなかった国の代表や政府首脳なども生成AIに関心を示している。一方でAI専門家などはこの新しい技術のリスクを懸念し、利用の規制を議論している。エリソン会長は、新しい技術への懸念もあるが「生成AIとそのための大規模言語モデル構築では、数十億ドル規模の投資が数え切れないほどある。この技術が最も重要なコンピューター技術であるかどうかを、みんなが知りたがっている」と指摘する。
ラリー・エリソン会長兼CTO
「ChatGPT」を提供する米OpenAI(オープンエーアイ)を始め、今後1年でオラクルが支援するカナダのCohere(コヒア)やその他のベンダーが新しい大規模言語モデルを構築し、言語だけでなく画像や音楽、プログラムのコードなどを生成するだろう。新しい生成AI技術が、米Tesla(テスラ)など完全自動運転のクルマの完成を早めるかもしれない。そしてエリソン会長が最近高い関心を示す医薬分野でも、AIによる新薬開発などが加速している。
急激に生成AIが関心を集める状況は、オラクルのビジネスにどう影響するのか。エリソン会長は、同社にとっては良い影響になるという。オラクルでは、クラウド上のコンピューターでデータベースの処理を高速に行うために、コンピューター同士を高速に接続するRemote Data Memory Access(RDMA)というネットワーク技術を利用している。これは別のコンピューターのメモリに直接アクセスできるもので、従来のネットワークの何倍も速くメモリ間でデータを移動できる。
RDMAは大規模言語モデルをトレーニングするためのコンピューターや、ネイティブGPUで構成されたコンピューターでも有効だ。「GPUを相互接続することで、われわれのクラウドはほかのクラウドよりもはるかに速く動作する。クラウドでは時は金なりで、2倍速いことはコストが半分になること。3倍速ければコストは3分の1になる」とエリソン会長。AIモデルのトレーニングでは他のクラウドよりも圧倒的に速く、何倍も安い。だから米NVIDIA(エヌビディア)やコヒア、イーロン・マスク氏が率いる米xAI(エックスエーアイ)などが、AIトレーニングにオラクルのクラウドを選んでいると指摘する。既に1万6000台の「NVIDIA H100」のスーパークラスターが、RDMAネットワークを使って構成されており、これは世界最速のものだという。
既に何年にもわたり、オラクルではデータベースの自動化などさまざまな領域でAIを活用してきた。「とはいえ生成AIはこれまでのAIとは違い、革命的なものだ。画期的でわれわれのビジネスに変革をもたらす。これは、オラクルの状況を根本的に変えようとしている」とエリソン会長は力を込めた。
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