Special Feature
2024年問題解決に挑む 建設、物流業界向けSaaS
2024/04/08 09:00
週刊BCN 2024年04月08日vol.2009掲載
2024年4月、建設業界と物流業界で時間外労働の上限規制など働き方改革関連法の施行がスタートした。構造的に長時間労働が常態化してきた両業界は、慢性的な人手不足にも悩まされており、社会機能を維持するためにも効率化は避けられない喫緊の課題だ。DXにより「2024年問題」の解決を目指し、業界特化型SaaSを提供する企業をまとめた。
(取材・文/堀 茜)
2024年問題とは
2024年4月1日、5年間の猶予期間が設けられていた建設、物流、医療の分野において働き方改革関連法が施行。長時間労働が常態化してきた業界で、時間外労働の上限が設定されることで発生する諸問題を指す。時間外労働は原則1カ月で45時間、年間で360時間以内に。物流業界では臨時的に超える場合でも、年間の時間外労働の上限が960時間に制限される。スパイダープラス
スパイダープラスは、建設DXサービスとして建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を提供している。工事の進捗管理、仕上がり検査など建築向けのほか、電気設備向け、空調衛生設備向けなど建設現場をトータルで効率化する多くの機能があり、建設業界の業種や規模を問わず利用できるのが特徴になっている。
スパイダープラス 伊藤謙自 社長CEO
伊藤謙自・代表取締役社長CEOは、職人として建設現場で働き、保温断熱工事の会社を起業して長く建設業界に従事。図面から必要な資材を一つ一つ集計して「Excel」に打ち込むなど、アナログで非効率な現場を何とかしたいと自社の業務改善ツールをつくったのをきっかけに、IT業界に進出したという経歴を持つ。2024年問題には「現場監督も職人も圧倒的に足りない中で、労働時間規制が始まった。建設業界全体にとって非常に大きな問題だ」と危機感をあらわにする。
SPIDERPLUSは導入企業が1800社、ユーザー数が6万9000人で、ユーザーアンケートの平均値では導入により1日の作業時間が1人当たり2.5時間削減されている。導入企業の7割はエンタープライズで、2024年問題をきっかけに中小企業からの関心も高まっているという。
伊藤社長CEOは、自身の経験から建設業界の実態を深く理解しているという自負と、何とか業界全体を改革していきたいとの思いを明かし「建設現場で働く人を少しでも楽にし、家族と過ごす幸せな時間を生み出したい」と願う。働き方改革は自社の事業にとっては大きな追い風だとして、国内での拡販を進めるほか、4月にベトナムに現地法人を開設、東南アジアへの展開も見据える。
販売は、直販が3割、取次店からの紹介が7割ほど。「業界特有の用語や使い方があり、当社システムをフルに活用してもらうには専任のサポートが必要」(伊藤社長CEO)との考えから、取次店から引き継いだ顧客に対し、導入支援などのサポートはすべて自社で行っている。取次店を経由しないと地方への販売は難しいため、取次店との連携を強めることで小規模な企業も含め全国各地の建設会社への拡販を目指している。あらゆる建設会社が何らかのDXに取り組むまで数年かかるとみており、丁寧な導入支援で業界のDXを後押しする考えだ。
アンドパッド
現場の効率化に加え、経営改善まで一元管理できるクラウド型の建築・建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供しているのがアンドパッドだ。営業から原価管理まで経営指標を可視化し、一元管理するほか、多くの人が関わる現場での情報伝達をスムーズにするなど、多数のアプリケーションを提供し、現場の省人化、効率化を実現している。
アンドパッド 藤井哲嗣 上級執行役員
藤井哲嗣・上級執行役員は、「建設業界は多重下請け構造になっており、当社のソリューションはセキュアな環境で現場情報をリアルタイムで社内外の方とシェアできる」と製品の特徴を説明する。また、徹底して使いやすさにもこだわり、現場の職人らITに不慣れな人でも、マニュアルなしで直感的に使えるUIでサービスを提供している。導入効果として、人手を増やさずに案件を2倍こなせたり、時間外労働を5割削減できたりと、大幅な効率化を実現した事例が多くあるという。
10人程度の小規模な会社から大手ゼネコンまで、導入企業の規模が幅広いのも特徴の一つ。大手が導入した場合、下請けは無料で機能を利用できるため、利便性を実感して自社でも契約するといったシャワー効果での販売拡大も多い。
建設業界の実態として、藤井上級執行役員は、人手不足が深刻で、受注が決まっても契約から着工まで2年かかるというケースも珍しくないと明かす。2024年問題に対して、法施行1年前ほどから業務効率化したいという企業が増えており、「意欲は強いが、どうすればいいかと試行錯誤している企業が多い」という。ワンストップですべて完結するという強みを訴求し、業務効率化したいというニーズに応えていきたいとしている。
現在、直販で販売しており、導入後のサポートもすべて自社で行っている。代理店などパートナーの経由は検討段階で「売り切りではなく、導入後に正しい使い方をしてもらうことで価値が生まれる。運用にコミットしないと建設DXは進まない」(藤井上級執行役員)として、代理店経由の場合の適切な販売方法を模索していく。
建設業界は、受注生産で同じものは二度とつくらないモデルのため、構造的な問題でDXが進まなかったが、同社では導入企業の現場からの細かい要望を開発に生かしサービスをブラッシュアップしており「顧客と一緒にDXを広げていきたい」(藤井上級執行役員)と展望する。Hacobu
物流業界の長時間労働の原因の一つとされるのが、物流拠点に荷物を搬入するトラックが同時間帯に集中し、待機時間が発生してしまう現状だ。企業間物流にフォーカスし物流DXを掲げるHacobuは、トラック予約受付システム「MOVO Berth」で荷待ち時間の把握・削減による物流拠点の生産性向上とドライバーの勤務時間削減を実現している。
同社によると、ドライバーの運転時間の平均6~7時間のうち、待機時間が1時間半を占めている。MOVO Berthは、同社サービスを契約している物流拠点であれば、ドライバーがアプリ経由で搬入時間を事前予約できる。トラックが入る時間をコントロールすることで、待機時間を平均63分削減している。
同社では「どこからどこへ何がどう運ばれているか」というデータを蓄積し、顧客に対しトラックとドライバーという物流の資産を有効活用する改善策も提案。サプライチェーンにおける依頼する側とされる側、企業間をつなぐという仕組みを提供している。
Hacobu 坂田 優 取締役COO
坂田優・取締役COOは、物流はコストと捉えられ、いかに工数を削減できるかという観点でしか評価されてこなかったとの現状を指摘した上で「物流というインフラを持続可能にするための、サステナビリティー投資という観点が必要になってくる」と話す。顧客である大企業の中には、企業全体の持続可能性の一部として、製品をきちんと届ける手段と捉え物流に投資を進める例も出てきているといい、「サステナビリティー投資という意識が高まれば、物流DXのスピード感はさらに高まるのではないか」とみる。
販売は直販を基本にしているが「これからは、われわれだけの力では足りなくなってくる」(坂田COO)として間接販売を視野に入れる。全国には2万カ所を超える物流拠点があるとされるが、同社のトラック予約システムの利用率は全体の8%にとどまる。「これを8割まで伸ばしていくことで、ドライバーの待機時間の削減という目に見える直接的な貢献ができる」と展望。より一層データ活用も推し進め、物流のサプライチェーン全体の効率化を推進する。X Mile
業界全体の変革にDXが必須だとして物流業界に特化した経営支援サービスを提供しているのがX Mile(クロスマイル)だ。「ロジポケ」は2024年問題解消を念頭に、顧客が導入しやすい勤怠管理や安全教育といったサービスを入り口として、物流に関わるあらゆる業務をデジタル化、効率化する多様な機能を提供。業界の現状として、ドライバーの勤務内容を可視化できていない点について、働き方の中身をデータ化し、生産性を上げている。ドライバーの働き方を可視化することで、トラックの待機時間を減らすべく、荷主に対しデータを基に交渉するよう運送会社にアドバイスするなど、コンサルティングも行っている。
X Mile 安藤雄真 マネージャー
物流プラットフォーム事業本部SaaS事業部の安藤雄真・マネージャー 物流DXコンサルタントは、「物流は経済を回すインフラ。2024年問題を乗り越えて、今こそ業界を変えていかないといけない」と指摘する。安藤マネージャーは、荷物が消費者に届くまでには多くの運送会社が関わり、多重下請け構造になっていることを説明。トラックが1000台未満の中堅企業が業界を支える一方、従業員30人以下の小規模事業者が全体の半数を超えており、下請けの運送会社は元受けの動きを静観している企業も多いとする。「大手元請けはDXの動きが活発になっているが、それを末端まで浸透させるには時間がかかる」とみる。
同社が重視しているのが、導入企業にカスタマーサクセス部隊が伴走し、それぞれの企業に合わせて自社ソリューションを活用してもらうサポートだ。ツールを使い倒して課題を見つけ、解決するというサイクルを実施しており、販売は直販で導入後の支援に注力。導入企業で活用が進めばさらに次のサービスを提案しアップセルを図っている。
同社は物流業界に特化した人材紹介サービス「ドライバーキャリア」も展開。ロジポケで人材を適正に管理、経営の効率化を進めることで物流業界の働き方改善につなげ、顧客が新たな働き手を獲得することも支援している。安藤マネージャーは「業界に情報を発信し、業界構造を変えることで市場のシェアを取っていきたい」として、運送業界向けのセミナーなども積極的に開催。2024年問題が注目されていることを前向きに捉え、物流改革に挑んでいく。
(取材・文/堀 茜)

2024年問題とは
2024年4月1日、5年間の猶予期間が設けられていた建設、物流、医療の分野において働き方改革関連法が施行。長時間労働が常態化してきた業界で、時間外労働の上限が設定されることで発生する諸問題を指す。時間外労働は原則1カ月で45時間、年間で360時間以内に。物流業界では臨時的に超える場合でも、年間の時間外労働の上限が960時間に制限される。
スパイダープラス
建設現場で働く人の幸せを目指す
スパイダープラスは、建設DXサービスとして建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を提供している。工事の進捗管理、仕上がり検査など建築向けのほか、電気設備向け、空調衛生設備向けなど建設現場をトータルで効率化する多くの機能があり、建設業界の業種や規模を問わず利用できるのが特徴になっている。
伊藤謙自・代表取締役社長CEOは、職人として建設現場で働き、保温断熱工事の会社を起業して長く建設業界に従事。図面から必要な資材を一つ一つ集計して「Excel」に打ち込むなど、アナログで非効率な現場を何とかしたいと自社の業務改善ツールをつくったのをきっかけに、IT業界に進出したという経歴を持つ。2024年問題には「現場監督も職人も圧倒的に足りない中で、労働時間規制が始まった。建設業界全体にとって非常に大きな問題だ」と危機感をあらわにする。
SPIDERPLUSは導入企業が1800社、ユーザー数が6万9000人で、ユーザーアンケートの平均値では導入により1日の作業時間が1人当たり2.5時間削減されている。導入企業の7割はエンタープライズで、2024年問題をきっかけに中小企業からの関心も高まっているという。
伊藤社長CEOは、自身の経験から建設業界の実態を深く理解しているという自負と、何とか業界全体を改革していきたいとの思いを明かし「建設現場で働く人を少しでも楽にし、家族と過ごす幸せな時間を生み出したい」と願う。働き方改革は自社の事業にとっては大きな追い風だとして、国内での拡販を進めるほか、4月にベトナムに現地法人を開設、東南アジアへの展開も見据える。
販売は、直販が3割、取次店からの紹介が7割ほど。「業界特有の用語や使い方があり、当社システムをフルに活用してもらうには専任のサポートが必要」(伊藤社長CEO)との考えから、取次店から引き継いだ顧客に対し、導入支援などのサポートはすべて自社で行っている。取次店を経由しないと地方への販売は難しいため、取次店との連携を強めることで小規模な企業も含め全国各地の建設会社への拡販を目指している。あらゆる建設会社が何らかのDXに取り組むまで数年かかるとみており、丁寧な導入支援で業界のDXを後押しする考えだ。
アンドパッド
下請けも含めワンストップで情報管理
現場の効率化に加え、経営改善まで一元管理できるクラウド型の建築・建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供しているのがアンドパッドだ。営業から原価管理まで経営指標を可視化し、一元管理するほか、多くの人が関わる現場での情報伝達をスムーズにするなど、多数のアプリケーションを提供し、現場の省人化、効率化を実現している。
藤井哲嗣・上級執行役員は、「建設業界は多重下請け構造になっており、当社のソリューションはセキュアな環境で現場情報をリアルタイムで社内外の方とシェアできる」と製品の特徴を説明する。また、徹底して使いやすさにもこだわり、現場の職人らITに不慣れな人でも、マニュアルなしで直感的に使えるUIでサービスを提供している。導入効果として、人手を増やさずに案件を2倍こなせたり、時間外労働を5割削減できたりと、大幅な効率化を実現した事例が多くあるという。
10人程度の小規模な会社から大手ゼネコンまで、導入企業の規模が幅広いのも特徴の一つ。大手が導入した場合、下請けは無料で機能を利用できるため、利便性を実感して自社でも契約するといったシャワー効果での販売拡大も多い。
建設業界の実態として、藤井上級執行役員は、人手不足が深刻で、受注が決まっても契約から着工まで2年かかるというケースも珍しくないと明かす。2024年問題に対して、法施行1年前ほどから業務効率化したいという企業が増えており、「意欲は強いが、どうすればいいかと試行錯誤している企業が多い」という。ワンストップですべて完結するという強みを訴求し、業務効率化したいというニーズに応えていきたいとしている。
現在、直販で販売しており、導入後のサポートもすべて自社で行っている。代理店などパートナーの経由は検討段階で「売り切りではなく、導入後に正しい使い方をしてもらうことで価値が生まれる。運用にコミットしないと建設DXは進まない」(藤井上級執行役員)として、代理店経由の場合の適切な販売方法を模索していく。
建設業界は、受注生産で同じものは二度とつくらないモデルのため、構造的な問題でDXが進まなかったが、同社では導入企業の現場からの細かい要望を開発に生かしサービスをブラッシュアップしており「顧客と一緒にDXを広げていきたい」(藤井上級執行役員)と展望する。
Hacobu
トラックの待機時間解消で効率化
物流業界の長時間労働の原因の一つとされるのが、物流拠点に荷物を搬入するトラックが同時間帯に集中し、待機時間が発生してしまう現状だ。企業間物流にフォーカスし物流DXを掲げるHacobuは、トラック予約受付システム「MOVO Berth」で荷待ち時間の把握・削減による物流拠点の生産性向上とドライバーの勤務時間削減を実現している。同社によると、ドライバーの運転時間の平均6~7時間のうち、待機時間が1時間半を占めている。MOVO Berthは、同社サービスを契約している物流拠点であれば、ドライバーがアプリ経由で搬入時間を事前予約できる。トラックが入る時間をコントロールすることで、待機時間を平均63分削減している。
同社では「どこからどこへ何がどう運ばれているか」というデータを蓄積し、顧客に対しトラックとドライバーという物流の資産を有効活用する改善策も提案。サプライチェーンにおける依頼する側とされる側、企業間をつなぐという仕組みを提供している。
坂田優・取締役COOは、物流はコストと捉えられ、いかに工数を削減できるかという観点でしか評価されてこなかったとの現状を指摘した上で「物流というインフラを持続可能にするための、サステナビリティー投資という観点が必要になってくる」と話す。顧客である大企業の中には、企業全体の持続可能性の一部として、製品をきちんと届ける手段と捉え物流に投資を進める例も出てきているといい、「サステナビリティー投資という意識が高まれば、物流DXのスピード感はさらに高まるのではないか」とみる。
販売は直販を基本にしているが「これからは、われわれだけの力では足りなくなってくる」(坂田COO)として間接販売を視野に入れる。全国には2万カ所を超える物流拠点があるとされるが、同社のトラック予約システムの利用率は全体の8%にとどまる。「これを8割まで伸ばしていくことで、ドライバーの待機時間の削減という目に見える直接的な貢献ができる」と展望。より一層データ活用も推し進め、物流のサプライチェーン全体の効率化を推進する。
X Mile
物流業界全体を変革する契機に
業界全体の変革にDXが必須だとして物流業界に特化した経営支援サービスを提供しているのがX Mile(クロスマイル)だ。「ロジポケ」は2024年問題解消を念頭に、顧客が導入しやすい勤怠管理や安全教育といったサービスを入り口として、物流に関わるあらゆる業務をデジタル化、効率化する多様な機能を提供。業界の現状として、ドライバーの勤務内容を可視化できていない点について、働き方の中身をデータ化し、生産性を上げている。ドライバーの働き方を可視化することで、トラックの待機時間を減らすべく、荷主に対しデータを基に交渉するよう運送会社にアドバイスするなど、コンサルティングも行っている。
物流プラットフォーム事業本部SaaS事業部の安藤雄真・マネージャー 物流DXコンサルタントは、「物流は経済を回すインフラ。2024年問題を乗り越えて、今こそ業界を変えていかないといけない」と指摘する。安藤マネージャーは、荷物が消費者に届くまでには多くの運送会社が関わり、多重下請け構造になっていることを説明。トラックが1000台未満の中堅企業が業界を支える一方、従業員30人以下の小規模事業者が全体の半数を超えており、下請けの運送会社は元受けの動きを静観している企業も多いとする。「大手元請けはDXの動きが活発になっているが、それを末端まで浸透させるには時間がかかる」とみる。
同社が重視しているのが、導入企業にカスタマーサクセス部隊が伴走し、それぞれの企業に合わせて自社ソリューションを活用してもらうサポートだ。ツールを使い倒して課題を見つけ、解決するというサイクルを実施しており、販売は直販で導入後の支援に注力。導入企業で活用が進めばさらに次のサービスを提案しアップセルを図っている。
同社は物流業界に特化した人材紹介サービス「ドライバーキャリア」も展開。ロジポケで人材を適正に管理、経営の効率化を進めることで物流業界の働き方改善につなげ、顧客が新たな働き手を獲得することも支援している。安藤マネージャーは「業界に情報を発信し、業界構造を変えることで市場のシェアを取っていきたい」として、運送業界向けのセミナーなども積極的に開催。2024年問題が注目されていることを前向きに捉え、物流改革に挑んでいく。
2024年4月、建設業界と物流業界で時間外労働の上限規制など働き方改革関連法の施行がスタートした。構造的に長時間労働が常態化してきた両業界は、慢性的な人手不足にも悩まされており、社会機能を維持するためにも効率化は避けられない喫緊の課題だ。DXにより「2024年問題」の解決を目指し、業界特化型SaaSを提供する企業をまとめた。
(取材・文/堀 茜)
2024年問題とは
2024年4月1日、5年間の猶予期間が設けられていた建設、物流、医療の分野において働き方改革関連法が施行。長時間労働が常態化してきた業界で、時間外労働の上限が設定されることで発生する諸問題を指す。時間外労働は原則1カ月で45時間、年間で360時間以内に。物流業界では臨時的に超える場合でも、年間の時間外労働の上限が960時間に制限される。スパイダープラス
スパイダープラスは、建設DXサービスとして建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を提供している。工事の進捗管理、仕上がり検査など建築向けのほか、電気設備向け、空調衛生設備向けなど建設現場をトータルで効率化する多くの機能があり、建設業界の業種や規模を問わず利用できるのが特徴になっている。
スパイダープラス 伊藤謙自 社長CEO
伊藤謙自・代表取締役社長CEOは、職人として建設現場で働き、保温断熱工事の会社を起業して長く建設業界に従事。図面から必要な資材を一つ一つ集計して「Excel」に打ち込むなど、アナログで非効率な現場を何とかしたいと自社の業務改善ツールをつくったのをきっかけに、IT業界に進出したという経歴を持つ。2024年問題には「現場監督も職人も圧倒的に足りない中で、労働時間規制が始まった。建設業界全体にとって非常に大きな問題だ」と危機感をあらわにする。
SPIDERPLUSは導入企業が1800社、ユーザー数が6万9000人で、ユーザーアンケートの平均値では導入により1日の作業時間が1人当たり2.5時間削減されている。導入企業の7割はエンタープライズで、2024年問題をきっかけに中小企業からの関心も高まっているという。
伊藤社長CEOは、自身の経験から建設業界の実態を深く理解しているという自負と、何とか業界全体を改革していきたいとの思いを明かし「建設現場で働く人を少しでも楽にし、家族と過ごす幸せな時間を生み出したい」と願う。働き方改革は自社の事業にとっては大きな追い風だとして、国内での拡販を進めるほか、4月にベトナムに現地法人を開設、東南アジアへの展開も見据える。
販売は、直販が3割、取次店からの紹介が7割ほど。「業界特有の用語や使い方があり、当社システムをフルに活用してもらうには専任のサポートが必要」(伊藤社長CEO)との考えから、取次店から引き継いだ顧客に対し、導入支援などのサポートはすべて自社で行っている。取次店を経由しないと地方への販売は難しいため、取次店との連携を強めることで小規模な企業も含め全国各地の建設会社への拡販を目指している。あらゆる建設会社が何らかのDXに取り組むまで数年かかるとみており、丁寧な導入支援で業界のDXを後押しする考えだ。
(取材・文/堀 茜)

2024年問題とは
2024年4月1日、5年間の猶予期間が設けられていた建設、物流、医療の分野において働き方改革関連法が施行。長時間労働が常態化してきた業界で、時間外労働の上限が設定されることで発生する諸問題を指す。時間外労働は原則1カ月で45時間、年間で360時間以内に。物流業界では臨時的に超える場合でも、年間の時間外労働の上限が960時間に制限される。
スパイダープラス
建設現場で働く人の幸せを目指す
スパイダープラスは、建設DXサービスとして建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を提供している。工事の進捗管理、仕上がり検査など建築向けのほか、電気設備向け、空調衛生設備向けなど建設現場をトータルで効率化する多くの機能があり、建設業界の業種や規模を問わず利用できるのが特徴になっている。
伊藤謙自・代表取締役社長CEOは、職人として建設現場で働き、保温断熱工事の会社を起業して長く建設業界に従事。図面から必要な資材を一つ一つ集計して「Excel」に打ち込むなど、アナログで非効率な現場を何とかしたいと自社の業務改善ツールをつくったのをきっかけに、IT業界に進出したという経歴を持つ。2024年問題には「現場監督も職人も圧倒的に足りない中で、労働時間規制が始まった。建設業界全体にとって非常に大きな問題だ」と危機感をあらわにする。
SPIDERPLUSは導入企業が1800社、ユーザー数が6万9000人で、ユーザーアンケートの平均値では導入により1日の作業時間が1人当たり2.5時間削減されている。導入企業の7割はエンタープライズで、2024年問題をきっかけに中小企業からの関心も高まっているという。
伊藤社長CEOは、自身の経験から建設業界の実態を深く理解しているという自負と、何とか業界全体を改革していきたいとの思いを明かし「建設現場で働く人を少しでも楽にし、家族と過ごす幸せな時間を生み出したい」と願う。働き方改革は自社の事業にとっては大きな追い風だとして、国内での拡販を進めるほか、4月にベトナムに現地法人を開設、東南アジアへの展開も見据える。
販売は、直販が3割、取次店からの紹介が7割ほど。「業界特有の用語や使い方があり、当社システムをフルに活用してもらうには専任のサポートが必要」(伊藤社長CEO)との考えから、取次店から引き継いだ顧客に対し、導入支援などのサポートはすべて自社で行っている。取次店を経由しないと地方への販売は難しいため、取次店との連携を強めることで小規模な企業も含め全国各地の建設会社への拡販を目指している。あらゆる建設会社が何らかのDXに取り組むまで数年かかるとみており、丁寧な導入支援で業界のDXを後押しする考えだ。
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- Hacobu トラックの待機時間解消で効率化
- X Mile 物流業界全体を変革する契機に
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