Special Feature
富士通のモダナイゼーション戦略 レガシー脱却図るユーザーをどう支えるか
2024/11/28 09:00
週刊BCN 2024年11月25日vol.2038掲載
富士通はレガシーシステムのモダナイゼーション事業を加速させている。自社開発のメインフレームやUNIXサーバーからの撤退発表を受け、現在は顧客との移行プロジェクトが進行中であり、そのボリュームは今後さらに膨らむ見通しだ。合わせて、DXのアプローチや、オファリングを中核とした事業モデル「Fujitsu Uvance」との連動による需要の創出、アップセルも期待される。盛り上がるモダナイゼーションビジネスは、富士通に何をもたらし、レガシー脱却を図るユーザーをいかに支えていくのだろうか。
(取材・文/大河原克彦、編集/藤岡 堯)
富士通は2029年9月末にUNIXサーバー、30年度にメインフレームの販売をそれぞれ終了し、保守についても前者は34年11月末、後者は35年度に終えると発表している。両者はともに、大量高速処理や信頼性、オープンシステムとの連携など、顧客の需要に応じて発展を続け、国内トップシェアを占めるなど、同社のビジネスを支えてきた。
しかし、時田隆仁社長は「富士通のメインフレーム向けOSであるMSPの世界で、継続的に生きていく選択が考えにくくなっていたのも事実だ。すでに富士通がメインフレームを継続し続けることには違和感があり、私が決断しなくても、私の次の社長が決断しただろう」と撤退の意図を語る。金融分野において、メインフレームのシステムエンジニアの経験がある時田社長だからこそ、現状を理解し、その事業継続に対して違和感を持っていたのかもしれない。
24年7月時点で、同社のメインフレームユーザーは320社、UNIXサーバーは640社に上り26年度以降、国内大手企業を対象とする数百億円規模のプロジェクトが複数進行すると明かしている。
こうした動きに伴い、モダナイゼーション事業は勢いを増している。24年度のパイプラインは累計で3500件となり、売上収益は前期比67%増の2680億円を想定し、25年度には3000億円を目指す計画だ(いずれもUvanceやハードウェアソリューションとの重複分を含む)。加えて、25年度の見通し分のおよそ9割がバックログやパイプラインとして積み上がっており、見通しは上振れる可能性が高い。
島津めぐみ・副社長COOは、「ITサービス市場全体の伸び率は5~7%増だが、モダナイゼーション事業は、20年代後半まで20%増の伸びを見込んでいる」と強気の姿勢を見せる。すでに推進している製造業での移行プロジェクトでは、メインフレームの保守費用として年間2000万円を売り上げていたが、36カ月にわたる移行プロジェクトにより、約20億円のビジネスを創出したという。また、ある金融業では、年間8000万円の保守ビジネスが、48カ月間の移行プロジェクトにより、業務の8割をクラウド化し、60億円の売り上げを計上したとしている。メインフレームの移行によるモダナイゼーションは、同社の収益拡大に貢献しているのは明らかだ。
その上で、モダナイゼーションには、大きく三つのアプローチがあると説明する(図2参照)。
一つめは、インフラをメインフレームからクラウドやIAサーバーに刷新しながらも、アプリケーションはCOBOLのままとする「リホスト」である。言語やプログラム・ロジックは変えずに、プラットフォームを置き換えるだけであり、短期かつ安価な切り替えが可能だが、長期的には再びモダナイゼーションが必要になる可能性もある。
二つめはインフラを刷新し、アプリケーションをCOBOLからJavaに変換する「リライト」だ。移行における期間短縮や費用圧縮を実現し、効率的で高品質なアプリケーションの資産移行が可能であり、COBOL人材の減少やサブスクリプションの活用、AIサービスの利用などの状況を踏まえて、リライト方式でのモダナイゼーションが注目されているという。島津副社長も、「まずはメインフレームから脱却し、次の段階で、言語をJavaに移行することを考えている企業が多い」と補足する。
手法としては米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の「AWS Blu Age」を使ったCOBOLからJavaへのコンバージョンを積極的に提案する。これにより、リファクタリングしたアプリケーションを、AWS上のクラウドプラットフォームにデプロイし、モニタリングできるようになる。富士通自らも、社内で運用していた保守管理システムでAWS Blu Ageを活用したモダナイゼーションを実践。短期間に同等性能での稼働が可能になったという。
さらに、富士通とAWSは、「Modernization Acceleration Joint Initiative」と呼ぶ戦略的協業を発表している。AWS Blu Ageの活用を中心に、29年度までに国内30社、海外10社のメインフレームユーザーのモダナイゼーションを推進するという。富士通製メインフレームだけでなく、他社製メインフレームを利用している企業にも同サービスを提供するとしている。
三つめが「リビルド」である。インフラやミドルウェア、アプリケーションのすべてを一気に再構築する手法であり、富士通のモダナイゼーション案件のうち、約5割を占めているという。既存アプリケーションをSaaSなどで置き換え、最適な機能配置を実現できる。大規模な移行コストが発生する課題はあるものの、全面的な刷新により、本格的なDXを推進しやすい面もある。富士通はこの側面から移行プロジェクトを訴求し、Uvanceを絡めた提案も絡め、新市場の創出や波及売り上げの伸長を目指す構えだ。
ただ、コンサルティングのあり方としては、別の視点もある。大西俊介・副社長COO兼CROは「モダナイゼーションは一言でいえば、引っ越しである。だが、全てを引っ越せばいいというものでもない。成長事業に関するシステムはリビルドがいい。一方で、規模が小さくあまり利用していないもの、事業を縮小していくものはリホストやリライトでもいい」とし、企業のポートフォリオ戦略と照らし合わせたモダナイゼーションの重要性を指摘する。
大西副社長は商機開拓に向けて「リビルドしたシステムを活用して、データを活用することが大切となる。そのためには、システムだけでなく、行動様式や物事の見方も変える必要がある。そこにはコンサルが関わる必要があり、ビジネス機会が生まれることになる」との見解を示す。同社は「攻めのモダナイゼーション」として、最新のツールを使い、モダナイゼーションの先にある経営改革や業務変革に取り組むことを提案している。レガシーからの脱却だけにとどまらず、経営にまで踏み込んだコンサルティングというわけだ。モダナイゼーション事業の進展は、コンサルビジネスの拡大にも直結することになる。
「サービス」では、富士通が20年にわたり、600社への導入実績を持つ資産分析サービスにより、ソフトウェア地図やシステム相関分析、稼働資産分析などを可能にしているほか、海外で実績を持つ自動変換サービス「PROGRESSION」を、24年5月から国内でも展開し、COBOL言語からJavaやC#などへの変換を効率化している。AWS Blu Ageによるレガシープログラム言語のJavaへの自動変換の提案とともに、モダナイゼーション期間とコストの削減に貢献するという。生成AIを活用し、要件分析や設計、開発、テストまでの全工程でのモダナイズも進めている。
「ナレッジ」では、モダナイゼーションナレッジセンターを通じて、モダナイゼーションの推進メソッドや、プロジェクトの成功事例、テンプレート化したツールなどを活用できる仕組みを構築。全社での事例共有やテンプレートの用意、レガシー稼働顧客のデータベース化も行っている。ベストプラクティスの適用や失敗事例からのリスク回避などが可能になり、高品質、高信頼な移行プロジェクトの実行につなげることができる。
そして、「エンジニアリング」では、25年度までに1万人のコンサルティング人材と、4万人のデリバリー人材を育成するほか、レガシー領域における技術スキルと実践経験を持った「モダナイゼーションマイスター」を、26年までに500人の専任体制として確立する計画を打ち出している。社外からの登用やOB、シニア人材の活用も進めており、24年度から、定年後の再雇用者に特別な処遇制度を実施しているという。また、国内200社のパートナーとの連携も図ることで、ビジネスを加速する考えも示している。
富士通のメインフレーム、UNIXサーバービジネスの終結は、結果として、ユーザーにも痛みを伴う変革を迫っている面は否めない。その変革が安全な移行によって実現されるのか。さらに、その先においても、ユーザーにこれまで以上の新たな価値を提供できるのか。モダナイゼーションによって、国内IT産業は、これから5年以上にわたり、台風の季節を迎えると言っていいだろう。激しい雨風が過ぎ去ったのち、晴々とした空は広がるだろうか。富士通、ユーザー双方にとって挑戦の時期は続く。
(取材・文/大河原克彦、編集/藤岡 堯)

富士通は2029年9月末にUNIXサーバー、30年度にメインフレームの販売をそれぞれ終了し、保守についても前者は34年11月末、後者は35年度に終えると発表している。両者はともに、大量高速処理や信頼性、オープンシステムとの連携など、顧客の需要に応じて発展を続け、国内トップシェアを占めるなど、同社のビジネスを支えてきた。
しかし、時田隆仁社長は「富士通のメインフレーム向けOSであるMSPの世界で、継続的に生きていく選択が考えにくくなっていたのも事実だ。すでに富士通がメインフレームを継続し続けることには違和感があり、私が決断しなくても、私の次の社長が決断しただろう」と撤退の意図を語る。金融分野において、メインフレームのシステムエンジニアの経験がある時田社長だからこそ、現状を理解し、その事業継続に対して違和感を持っていたのかもしれない。
25年度以降に9000億円超の規模へ
富士通は、メインフレームやUNIXサーバー、オフコンのほか、EOSを迎えたミドルウェア、COBOLやPL/1によるアプリケーションをレガシー資産と位置付け、「レガシーからの脱却を戦略軸に、市場や顧客にアプローチする事業」を、モダナイゼーションとしている(図1参照)。同社はモダナイゼーションの国内市場規模を23年度で8000億円、25年度には9000億円へと伸長し、その後も拡大すると予測しており、28、29年ごろにピークを迎えるとみる。
24年7月時点で、同社のメインフレームユーザーは320社、UNIXサーバーは640社に上り26年度以降、国内大手企業を対象とする数百億円規模のプロジェクトが複数進行すると明かしている。
こうした動きに伴い、モダナイゼーション事業は勢いを増している。24年度のパイプラインは累計で3500件となり、売上収益は前期比67%増の2680億円を想定し、25年度には3000億円を目指す計画だ(いずれもUvanceやハードウェアソリューションとの重複分を含む)。加えて、25年度の見通し分のおよそ9割がバックログやパイプラインとして積み上がっており、見通しは上振れる可能性が高い。
島津めぐみ・副社長COOは、「ITサービス市場全体の伸び率は5~7%増だが、モダナイゼーション事業は、20年代後半まで20%増の伸びを見込んでいる」と強気の姿勢を見せる。すでに推進している製造業での移行プロジェクトでは、メインフレームの保守費用として年間2000万円を売り上げていたが、36カ月にわたる移行プロジェクトにより、約20億円のビジネスを創出したという。また、ある金融業では、年間8000万円の保守ビジネスが、48カ月間の移行プロジェクトにより、業務の8割をクラウド化し、60億円の売り上げを計上したとしている。メインフレームの移行によるモダナイゼーションは、同社の収益拡大に貢献しているのは明らかだ。
三つのアプローチから最適な方法を
同社はモダナイゼーションを「システムやアプリケーションを最新の状態に更新し、現行システム構造を変革した上で、蓄積された情報資産を活用すること」と定義。マイグレーションは「現行システム構造を変えずに、利用環境の変化に対応するため、データやシステムを新たな環境へ移行すること」とする。モダナイゼーションとマイグレーションは目的も方法も異なるため、システム更改の際には、両者の違いを理解した上で、最適な方法を選択することが重要であるという。その上で、モダナイゼーションには、大きく三つのアプローチがあると説明する(図2参照)。

一つめは、インフラをメインフレームからクラウドやIAサーバーに刷新しながらも、アプリケーションはCOBOLのままとする「リホスト」である。言語やプログラム・ロジックは変えずに、プラットフォームを置き換えるだけであり、短期かつ安価な切り替えが可能だが、長期的には再びモダナイゼーションが必要になる可能性もある。
二つめはインフラを刷新し、アプリケーションをCOBOLからJavaに変換する「リライト」だ。移行における期間短縮や費用圧縮を実現し、効率的で高品質なアプリケーションの資産移行が可能であり、COBOL人材の減少やサブスクリプションの活用、AIサービスの利用などの状況を踏まえて、リライト方式でのモダナイゼーションが注目されているという。島津副社長も、「まずはメインフレームから脱却し、次の段階で、言語をJavaに移行することを考えている企業が多い」と補足する。
手法としては米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の「AWS Blu Age」を使ったCOBOLからJavaへのコンバージョンを積極的に提案する。これにより、リファクタリングしたアプリケーションを、AWS上のクラウドプラットフォームにデプロイし、モニタリングできるようになる。富士通自らも、社内で運用していた保守管理システムでAWS Blu Ageを活用したモダナイゼーションを実践。短期間に同等性能での稼働が可能になったという。
さらに、富士通とAWSは、「Modernization Acceleration Joint Initiative」と呼ぶ戦略的協業を発表している。AWS Blu Ageの活用を中心に、29年度までに国内30社、海外10社のメインフレームユーザーのモダナイゼーションを推進するという。富士通製メインフレームだけでなく、他社製メインフレームを利用している企業にも同サービスを提供するとしている。
三つめが「リビルド」である。インフラやミドルウェア、アプリケーションのすべてを一気に再構築する手法であり、富士通のモダナイゼーション案件のうち、約5割を占めているという。既存アプリケーションをSaaSなどで置き換え、最適な機能配置を実現できる。大規模な移行コストが発生する課題はあるものの、全面的な刷新により、本格的なDXを推進しやすい面もある。富士通はこの側面から移行プロジェクトを訴求し、Uvanceを絡めた提案も絡め、新市場の創出や波及売り上げの伸長を目指す構えだ。
ただ、コンサルティングのあり方としては、別の視点もある。大西俊介・副社長COO兼CROは「モダナイゼーションは一言でいえば、引っ越しである。だが、全てを引っ越せばいいというものでもない。成長事業に関するシステムはリビルドがいい。一方で、規模が小さくあまり利用していないもの、事業を縮小していくものはリホストやリライトでもいい」とし、企業のポートフォリオ戦略と照らし合わせたモダナイゼーションの重要性を指摘する。
大西副社長は商機開拓に向けて「リビルドしたシステムを活用して、データを活用することが大切となる。そのためには、システムだけでなく、行動様式や物事の見方も変える必要がある。そこにはコンサルが関わる必要があり、ビジネス機会が生まれることになる」との見解を示す。同社は「攻めのモダナイゼーション」として、最新のツールを使い、モダナイゼーションの先にある経営改革や業務変革に取り組むことを提案している。レガシーからの脱却だけにとどまらず、経営にまで踏み込んだコンサルティングというわけだ。モダナイゼーション事業の進展は、コンサルビジネスの拡大にも直結することになる。
「サービス」「ナレッジ」「エンジニアリング」を強みに
富士通のモダナイゼーションの強みは、「サービス」「ナレッジ」「エンジニアリング」の3点にあるという。「サービス」では、富士通が20年にわたり、600社への導入実績を持つ資産分析サービスにより、ソフトウェア地図やシステム相関分析、稼働資産分析などを可能にしているほか、海外で実績を持つ自動変換サービス「PROGRESSION」を、24年5月から国内でも展開し、COBOL言語からJavaやC#などへの変換を効率化している。AWS Blu Ageによるレガシープログラム言語のJavaへの自動変換の提案とともに、モダナイゼーション期間とコストの削減に貢献するという。生成AIを活用し、要件分析や設計、開発、テストまでの全工程でのモダナイズも進めている。
「ナレッジ」では、モダナイゼーションナレッジセンターを通じて、モダナイゼーションの推進メソッドや、プロジェクトの成功事例、テンプレート化したツールなどを活用できる仕組みを構築。全社での事例共有やテンプレートの用意、レガシー稼働顧客のデータベース化も行っている。ベストプラクティスの適用や失敗事例からのリスク回避などが可能になり、高品質、高信頼な移行プロジェクトの実行につなげることができる。
そして、「エンジニアリング」では、25年度までに1万人のコンサルティング人材と、4万人のデリバリー人材を育成するほか、レガシー領域における技術スキルと実践経験を持った「モダナイゼーションマイスター」を、26年までに500人の専任体制として確立する計画を打ち出している。社外からの登用やOB、シニア人材の活用も進めており、24年度から、定年後の再雇用者に特別な処遇制度を実施しているという。また、国内200社のパートナーとの連携も図ることで、ビジネスを加速する考えも示している。
富士通のメインフレーム、UNIXサーバービジネスの終結は、結果として、ユーザーにも痛みを伴う変革を迫っている面は否めない。その変革が安全な移行によって実現されるのか。さらに、その先においても、ユーザーにこれまで以上の新たな価値を提供できるのか。モダナイゼーションによって、国内IT産業は、これから5年以上にわたり、台風の季節を迎えると言っていいだろう。激しい雨風が過ぎ去ったのち、晴々とした空は広がるだろうか。富士通、ユーザー双方にとって挑戦の時期は続く。
富士通はレガシーシステムのモダナイゼーション事業を加速させている。自社開発のメインフレームやUNIXサーバーからの撤退発表を受け、現在は顧客との移行プロジェクトが進行中であり、そのボリュームは今後さらに膨らむ見通しだ。合わせて、DXのアプローチや、オファリングを中核とした事業モデル「Fujitsu Uvance」との連動による需要の創出、アップセルも期待される。盛り上がるモダナイゼーションビジネスは、富士通に何をもたらし、レガシー脱却を図るユーザーをいかに支えていくのだろうか。
(取材・文/大河原克彦、編集/藤岡 堯)
富士通は2029年9月末にUNIXサーバー、30年度にメインフレームの販売をそれぞれ終了し、保守についても前者は34年11月末、後者は35年度に終えると発表している。両者はともに、大量高速処理や信頼性、オープンシステムとの連携など、顧客の需要に応じて発展を続け、国内トップシェアを占めるなど、同社のビジネスを支えてきた。
しかし、時田隆仁社長は「富士通のメインフレーム向けOSであるMSPの世界で、継続的に生きていく選択が考えにくくなっていたのも事実だ。すでに富士通がメインフレームを継続し続けることには違和感があり、私が決断しなくても、私の次の社長が決断しただろう」と撤退の意図を語る。金融分野において、メインフレームのシステムエンジニアの経験がある時田社長だからこそ、現状を理解し、その事業継続に対して違和感を持っていたのかもしれない。
24年7月時点で、同社のメインフレームユーザーは320社、UNIXサーバーは640社に上り26年度以降、国内大手企業を対象とする数百億円規模のプロジェクトが複数進行すると明かしている。
こうした動きに伴い、モダナイゼーション事業は勢いを増している。24年度のパイプラインは累計で3500件となり、売上収益は前期比67%増の2680億円を想定し、25年度には3000億円を目指す計画だ(いずれもUvanceやハードウェアソリューションとの重複分を含む)。加えて、25年度の見通し分のおよそ9割がバックログやパイプラインとして積み上がっており、見通しは上振れる可能性が高い。
島津めぐみ・副社長COOは、「ITサービス市場全体の伸び率は5~7%増だが、モダナイゼーション事業は、20年代後半まで20%増の伸びを見込んでいる」と強気の姿勢を見せる。すでに推進している製造業での移行プロジェクトでは、メインフレームの保守費用として年間2000万円を売り上げていたが、36カ月にわたる移行プロジェクトにより、約20億円のビジネスを創出したという。また、ある金融業では、年間8000万円の保守ビジネスが、48カ月間の移行プロジェクトにより、業務の8割をクラウド化し、60億円の売り上げを計上したとしている。メインフレームの移行によるモダナイゼーションは、同社の収益拡大に貢献しているのは明らかだ。
(取材・文/大河原克彦、編集/藤岡 堯)

富士通は2029年9月末にUNIXサーバー、30年度にメインフレームの販売をそれぞれ終了し、保守についても前者は34年11月末、後者は35年度に終えると発表している。両者はともに、大量高速処理や信頼性、オープンシステムとの連携など、顧客の需要に応じて発展を続け、国内トップシェアを占めるなど、同社のビジネスを支えてきた。
しかし、時田隆仁社長は「富士通のメインフレーム向けOSであるMSPの世界で、継続的に生きていく選択が考えにくくなっていたのも事実だ。すでに富士通がメインフレームを継続し続けることには違和感があり、私が決断しなくても、私の次の社長が決断しただろう」と撤退の意図を語る。金融分野において、メインフレームのシステムエンジニアの経験がある時田社長だからこそ、現状を理解し、その事業継続に対して違和感を持っていたのかもしれない。
25年度以降に9000億円超の規模へ
富士通は、メインフレームやUNIXサーバー、オフコンのほか、EOSを迎えたミドルウェア、COBOLやPL/1によるアプリケーションをレガシー資産と位置付け、「レガシーからの脱却を戦略軸に、市場や顧客にアプローチする事業」を、モダナイゼーションとしている(図1参照)。同社はモダナイゼーションの国内市場規模を23年度で8000億円、25年度には9000億円へと伸長し、その後も拡大すると予測しており、28、29年ごろにピークを迎えるとみる。
24年7月時点で、同社のメインフレームユーザーは320社、UNIXサーバーは640社に上り26年度以降、国内大手企業を対象とする数百億円規模のプロジェクトが複数進行すると明かしている。
こうした動きに伴い、モダナイゼーション事業は勢いを増している。24年度のパイプラインは累計で3500件となり、売上収益は前期比67%増の2680億円を想定し、25年度には3000億円を目指す計画だ(いずれもUvanceやハードウェアソリューションとの重複分を含む)。加えて、25年度の見通し分のおよそ9割がバックログやパイプラインとして積み上がっており、見通しは上振れる可能性が高い。
島津めぐみ・副社長COOは、「ITサービス市場全体の伸び率は5~7%増だが、モダナイゼーション事業は、20年代後半まで20%増の伸びを見込んでいる」と強気の姿勢を見せる。すでに推進している製造業での移行プロジェクトでは、メインフレームの保守費用として年間2000万円を売り上げていたが、36カ月にわたる移行プロジェクトにより、約20億円のビジネスを創出したという。また、ある金融業では、年間8000万円の保守ビジネスが、48カ月間の移行プロジェクトにより、業務の8割をクラウド化し、60億円の売り上げを計上したとしている。メインフレームの移行によるモダナイゼーションは、同社の収益拡大に貢献しているのは明らかだ。
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