Special Issue

<1200号記念特集> 『週刊BCN』の創刊は、1981年10月15日 07年8月27日発行号で、創刊1200号を数えるに至った

2007/09/01 19:56

富士通グループのシステム開発の中核に
SaaSを視野に入れた展開も予定

富士通グループとしての役割と期待も高まる

 富士通システムソリューションズ(以下、Fsol)の親会社である富士通は、子会社の再編をすすめている。2006年12月には、富士通グループの中でも高い技術力を有するソリューションプロバイダーであるFsolを100%出資の子会社としている。富士通グループとしての役割や期待も高まっているFsolの泰 聖五代表取締役社長に話を聞いた。

ストックビジネスにも注目 年率10%の成長を期待

 Fsolは、1979年の創業以来、5000社超という幅広い業種の顧客を有し「製造、流通、公共、医療などのお客様をサポートしております」(泰社長)ということだ。同社は業種に特化したシステムエンジニアが2000名超、営業70名という体制で売上高469億円(2007年3月期)という実績を残している。

 Fsolでは、開発・販売のほか、保守・運用系なども請け負い、ストックビジネスも拡大している。同社のアウトソーシングセンターなどで、およそ900台ものサーバーを預かっており、顧客企業からの評価も高い。

 「ストックビジネスを年率10%程度はコンスタントに伸ばし、経営の質も高めていきたいと考えています」と、泰社長。「親会社の富士通は“フィールド・イノベーション(現場の革新)”を掲げています。“お客様の現場”はもとより、“お客様のお客様”に対してもサポートしていくという流れです。当社は、以前から同様の展開をしており、そういった意味でも富士通との親和性を増しています」(泰社長)。

 Fsolでは、イージーオーダー型のインターネット統合ソリューションサービス「WebSERVE」や、SOA(サービス指向アーキテクチャ)といった技術を採用し、中小企業が導入しやすい「WebSERVE smartソリューション」を開発・提供している。

 これらのソリューションの中には数多くのサービスがあり、顧客ニーズに的確に応えることができるよう、「WebSERVE」が150サービス、「WebSERVE smartソリューション」が42サービスという幅広い商品ラインアップが揃えられている。

 この豊富な品揃えを可能にしているのが、「WebSERVE smartソリューション」の開発基盤である「QuiQpro」だ。「QuiQpro」は、Fsolが独自開発した高い生産性と高品質を実現する開発支援ツールの名称だ。このフレームワークを活用することで、サービスの標準化が図られている。富士通が提供している「GLOVIA smart」にも、Fsolが培ってきた技術・ノウハウが凝縮されている。「WebSERVE」、「WebSERVE smart ソリューション」は、進化・成長を続け、インターネット経由のサービスとしてソフトウェアを提供するSaaS(Software as a Service)などへの対応も視野に入れた展開を予定している。Fsolは、豊富な業種ノウハウにもとづいた数多くのサービス・ソリューションを有しており、その価値は今も向上し続けている。

現場の声を蓄積し、顧客との意思疎通をすすめる

 さらにFsolでは、ソリューションを開発・販売するだけでなく、自社のソリューションを社内にも展開し、活用事例として提供している。同社では、顧客企業からの質問や要望、トラブルに迅速に対応するために「WebSERVE smart e-CRM」を導入し、組織的な対応を可能としている。そのため、顧客からの問い合わせ受け付けから解決策の回答・実施に至るまでの時間を短縮、データを蓄積し、ナレッジとして共有することで、サポート品質の向上とともに製品開発へのフィードバックを可能としている。現場の声を聞き、それを組織的に対応する体制が整えられているのである。

 このように、顧客ニーズに応え続ける展開を行い、独自のノウハウと高い技術力を蓄積してきたFsolは、富士通本体からの評価も高い。これまで、富士通グループ全体としては、技術者が不足しているという懸念があったが、富士通は7月から流通向けシステム開発事業を強化するため、本体の「流通ビジネス本部」に所属している技術者200名をFsolに出向させ、Fsolの流通向け技術者400人と合わせ600人体制とした。

 「当社のエンジニアが評価された結果だと考えています。今後、本体のエンジニアとの融合が進めば、効率もスキルも向上すると考えています」(泰社長)。これが、同社の顧客企業にとっても大きなメッセージとなっている。

東日本ブロックのグループ長として、富士通グループの期待に応える

 富士通グループの連携はさらに進化し、今年の6月から、全国に点在しているSE企業を「東日本」「関西・北陸・東海」「中国・四国」「九州」という4つのブロックに分け、グループごとにマネジメントを行うようになっている。「東日本」ブロックのグループ長を任命されたのが、ほかでもないFsolだ。「これまで縦割りの組織体制でしたが、これが大きく変わります。東日本のエンジニアを合わせると4200名ほどになりますが、このリソースをマネジメントし、経営の体質を高めようという狙いがあります」(泰社長)とのことだ。Fsolが担う責任も重いが、富士通本体から大きく期待されている証でもある。

 「エンジニアという仕事はたいへんきつく厳しいというイメージがあるようですが、“イノベータ”の先端をいき、高い評価を受けられていれば、そのようなイメージはぬぐい去ることができると考えています」(泰社長)と言うコメントからも、人を育てる同社の風土が感じられる。

 Fsolは、これまで一SE企業として活動してきたが、富士通グループの中でも中核を担う企業として期待されているのだ。融合をすすめる富士通グループのカギを握る同社の展開に注目したい。

富士通システムソリューションズ=http://jp.fujitsu.com/fsol/

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