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<マイクロソフト特集> ソフトウェア開発の見える化で収益力をアップ 「ユーザーエクスペリエンス」「ALM」2つのコンセプトを持つMicrosoft Visual Studio 2008

2008/04/02 19:56

週刊BCN 2008年03月31日vol.1229掲載

 ビジネス効率の改善、顧客関係の強化、的確な情報を元にした意思決定などを可能にするアプリケーション環境の実現-。マイクロソフトが掲げるダイナミックIT戦略の中核を担う「Microsoft Application Platform」のひとつ「Microsoft Visual Studio 2008(以下Visual Studio 2008)」日本語版が2008年2月にリリースされた。開発需要の高まりに応える新たな開発環境は、発売から好調な滑り出しを見せ、その勢いは工事進行基準という追い風を受け、さらに加速している。そこで、登場以来10年、常に革新的な開発環境を提供してきた「Visual Studio」の最新版の特長、ビジネス戦略について、デベロッパービジネス本部 業務執行役員 本部長・市橋暢哉氏に話を伺った。

過去最大規模のビジネスへ快進撃をみせるVisual Studio 2008

 2008年2月、マイクロソフトは、Visual Studio 2008のボリュームライセンス、パッケージ製品を相次いで発売した。過去最大規模のビジネスを目指し、投入された新たな開発環境は、最高の出足を記録。その勢いはとどまることなく、現在も堅調に成長を続けている。

 市橋本部長は、「エンタープライズ開発向けのVisual Studio Team Systemが市場を牽引し、価格据置きとなったProfessional Editionが、量販店を中心に高いバリューを評価され、予想を上回る売れ行きを見せています」と、好調の要因を分析する。さらに、2009年4月からは、「工事契約に関する会計基準」が施行となり、長期請負工事の収益計上に対して「工事進行基準」が適用されるようになることも追い風になっているという。

2つのコンセプトを掲げるブランドに成長

 登場から10年が経ち、常に革新的な開発環境を提供し続けるVisual Studio。その最新版であるVisual Studio 2008では、「アプリケーションライフサイクルマネジメント(ALM)」と「ユーザーエクスペリエンス」のコンセプトを掲げている。

 「マイクロソフトのBASICから始まる開発ツールの歴史の中で、Visual Studio 2008は非常に明確なコンセプトとともにリリースされました。これまでの“パッケージ”という概念ではなく“ブランド”という位置付けでそれぞれの役割を備えた製品群が用意されています」と、市橋本部長は従来との大きな違いを強調する。

 コンセプトのひとつ「ALM」は、2005年、Visual Studio Team System登場時のキーメッセージだった。しかし、アーキテクチャ設計やテスト、データベース開発、プロジェクト管理を含むアプリケーションライフサイクル全体を管理する重要性が再認識されており、Visual Studio 2008では、アプリケーションの寿命まで、ロングレンジでアプリケーション開発を支える機能を強化して、開発の生産性向上、ソフトウェアの品質向上を強力にアシストしている。

 また、「ユーザーエクスペリエンス」も、これまで“ユーザー体験”として紹介されてきたが、Visual Studio 2008発売を機に、そのままの名称でコンセプトに加わった。ユーザーエクスペリエンスは、表面的なユーザーインタフェースだけではなく、信頼感、レスポンスの早さなど、ユーザーがコンピュータを通じて得るあらゆる経験という、高度な意味合いを含んでいる。

 まさに、ビジネスの要件やユーザーのニーズにベストソリューションを提供する、ソフトウェア開発の楽しさ、面白さを指し示すキーワードといえるだろう。

 「コンピュータ発展の歴史は、ベンダーとユーザーが市場を牽引する周期で何年か置きに交互にやってくるともいわれています。マイクロソフトは、Windows Vistaや新しい開発環境などの提供により、ユーザーがコンピュータを発展させるフェーズに貢献していると自負しています。開発とアプリケーションの寿命まで永続的に管理する、それを実現するためのユーザーエクスペリエンスとALMは、重要な鍵となります」(市橋本部長)。

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時代の変化に応え、高収益力で開発現場の課題を解決

 現在、多くのソフト開発の現場で、ソフトウェア開発の高収益性が求められている。

 マイクロソフトでは、開発ツールの提供以外にも、ソフトウェアの再利用やノウハウの文書化、見える化など、開発者の生産性向上を支援する活動に取り組んでいる。

 「当社の根幹には、開発、テクノロジーを追求するスピリットが脈々と流れています。開発者やIT技術者と近い位置にいたいという強烈な想い。何もないところから世の中を動かす醍醐味。これからも、開発という視点から、開発に携わる企業、人に向けて、有用な製品、関連する情報をどんどん提供していきたいと思います」(市橋本部長)。

 こうしたITエンジニア向けの支援を充実させる一方、早急の課題解決が迫られるコンプライアンスについても、マイクロソフトは着々と対応を進めている。そのひとつが、Visual Studio 2008にも大きく関わる「工事進行基準」への対応だ。

 従来、ソフトウェア開発は、長期請負工事の場合「工事完成基準」との選択ができた。しかし、2009年度からは、総受注額、費用総額、進捗状況の把握ができない場合を除いて、「工事進行基準」の適用となる。対象範囲は、受託ソフトウェア開発も含まれ、規模や上場を問わず、正確な見積り、計上が必要になるのだ。

 「大手ソフトウェア開発企業でも、売上計上が違うだけと認識しているところが大半です。しかし、プロジェクト管理とアカウント管理を同時にやらなければなりません。Visual Studio Team Foundation Serverは、チーム ポータル、バージョン管理、作業項目トラッキング、ビルド管理、プロセス ガイダンス、およびビジネス インテリジェンスを1台のサーバーで提供し、Visual Studio Team Foundation ServerとMicrosoft Projectを組み合わせることで、工事進行基準で求められる元データをそろえることができます」。

 会計制度変更に伴うシステム強化だけでなく、Visual Studio Team Foundation Serverを活用することで、ナレッジの蓄積が進み、そこから新たな発見、新たな可能性へのチャレンジが始まる。また、経営者が求めるソフトウェア開発の高収益化にも一歩近づくことができるだろう。

 今後も、ソフトウェア開発をより先進的なステージに導くVisual Studio 2008のダイナミックな展開から目が離せない。

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