Special Issue

<期待される企業像> 新しいことにチャレンジし続けるジョルダン 新しいコンセプトの商品で世の中に問いかけ続ける

2008/04/03 19:56

週刊BCN 2008年03月31日vol.1229掲載

 ジョルダンの前身は1979年に設立されたジョルダン情報サービスだ。同社は、コンピュータの魅力に未来を感じた佐藤俊和代表取締役社長が「新しいことをしよう」と起業し、現在に至っている。03年には大阪証券取引所「ヘラクレス」市場に上場。そのDNAは、ジョルダン情報サービスの時代から脈々と受け継がれている。同社の魅力を探った。

ヒット商品の影にジョルダンあり

 ジョルダンの佐藤社長は「常にコンシューマ市場に近いところにいます。自分で言うのもなんですが“勘”はいいほうだと思いますね。ミクロの視点でみると失敗はありますが、マクロ的な視点では成功を収めていると思います」と振り返る。

 同社は、受託開発を中心に業務を展開してきた歴史があり、ヒット商品を次々と手がけてきた。正誤によって、異なる返答をするインタラクティブな学習ソフトウェアを開発したり、ムーンクレスタやクレイジークライマーといったゲームなどで一世を風靡してきた。

 佐藤社長は、趣味の囲碁でも最終局面を想定しながら布石をおいていくという。「四隅を取られると布石が死んでしまうこともありますが」と笑顔で話す佐藤社長。ビジネスと囲碁はまったく別物ではあるが、佐藤社長の性格が垣間見えるエピソードといえよう。

自社ブランドで製品を提供開始

 「新しいコンセプトでありながら、誰もが使えるような商品を提供したいというコンセプトは一貫していますね」(佐藤社長)というのがジョルダンの姿である。同社は、精力的にビジネスを展開しており、ヒット商品を生み続けてきた。業務は軌道に乗っていたが、佐藤社長はあるとき「ヒット商品を生み出しても、ジョルダンの名前が出ないことは寂しい」と感じたそうだ。

 受託開発でビジネスを展開している以上、ブランドとしてジョルダンの名前が出ることはない。同社のかかわった製品は、数多く流通しているのにもかかわらず、陰の立役者に過ぎないのである。そこで、同社はジョルダンブランドで製品を開発・提供し始めた。企画・開発・販売のすべてが行える企業となるべく、歩み始めたのである。

 「こういうことが実現できればいいな、と思うことはかなりありますね。たとえば“名刺”です。名刺は印刷を頼んでからできるまで数日かかります。受託開発ではプロジェクトごとにチームを集め作業を行うため、名刺印刷を内製できれば作業効率も向上しますね。そういった発想からソフトを開発してきました」(佐藤社長)。

 ジョルダンは自ら領域は定めず、ニーズがある分野のソフトウェアを開発し続けてきた。新しい技術や知識をいち早く吸収し、製品へと反映させるのも早い。PCを思考の道具と捉え、名刺の整理を行うソフトや次世代のアイデアプロセッサともいうべきソフトウェアにも着手しようとしている。「具体化まで時間はかかるかもしれないが、便利な道具をたくさん作っていきたいと考えています」(佐藤社長)という。

移動を極める乗換案内

 乗換案内もそのような発想のなかから生まれたソフトウェアである。その構想はジョルダンを設立する前から温めていた。

 「私は、横着ですがせっかちでもあるんです。できれば、ギリギリの時刻まで駅に向かいたくないんですね。そんな自分が欲しいと思って作った道具が、乗換案内です」(佐藤社長)。これが、乗換案内の開発秘話である。

 確かに乗換案内は経路を検索するだけではなく、時刻表の表示や最も効率のいい移動の方法を提示する利便性の高いソフトウェアである。

 乗換案内の1stバージョンを発売した当時はパソコン通信全盛期で、インターネットの産声が聞こえ始めたころだ。その時代からネット時代の到来を信じ、ネットを活用する新しいソフトウェアを提供し始めていたのである。ネット上では乗り換え経路を表示させ、PCでは時刻表までサポートする乗換案内の誕生である。「すべてマウスで操作できる画期的なインターフェイスは、話題になりましたね。メディアでも多数取り上げられました。確かに経路検索のソフトウェアはいくつか出ていましたが、新しいコンセプトが受けたのだと思います。また、使いやすいという点では、他社に引けをとっていません」(佐藤社長)。

 現在では、乗換案内もWindows、Macintosh、iPod、PDAのほか、携帯電話といった端末でも利用できるようになった。また、鉄道だけではなくバスなどに対応し、「移動」に関すること全般に領域を広げつつある。

 旅費精算などでも活用され、官公庁向けのパッケージも堅調に売れている。経路検索を軸に移動前、移動中、移動後までのすべてで乗換案内が活用されている。「移動」という切り口において、生活に密着したツールとなっているのである。乗換案内は、あらゆる端末、あらゆる場面で利用できるようになっているのだ。最近ではiPod Touch対応の乗換案内を開発している。新しい技術へのあくなき欲求には脱帽するばかりだ。

人を惹きつける商品で世の中に問いたい

 同社が販売権を獲得した、仮想楽器が音楽を奏でる「アニミュージック」も新しいコンセプトを提示し続けるというビジョンと合致している。

 「“こだわり”は人に感動を与えると思います。“アニミュージック”をはじめてみたときは衝撃を感じましたね。“とんがった商品”は人を惹きつけます。日常に一石を投じるようなもので、世に問う形で進めていきたいと考えています」(佐藤社長)。

 常に新しいコンセプトの商品を市場に投入してきたジョルダン。その活動は今後も続くようだ。

 それは「勘」だけでは語れない、市場形成にも寄与するのだろう。現在はもちろん、今後も期待される企業であることは間違いない。(週刊BCN 2008年3月31日号掲載)
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外部リンク

ジョルダン=http://www.jorudan.co.jp/