Special Issue

【特別企画】新生TIE/ワンストップソリューション事業戦略

2008/04/28 19:56

週刊BCN 2008年04月28日vol.1233掲載

ビジネスパートナーと連携し、より強い「ワンストップソリューション企業」へ
Active 3iに磨きかけ、二〇〇八年度は年間売上一〇〇〇億円の大台を目指す

束になることで強くなるメリット
07年度は売上高約930億円を達成


 07年4月の東芝パソコンシステムのサーバー・PC販売部門とカスタマーサポート部門の統合は「単に足しただけでは強くならない」(末澤社長、以下同)ことから、東芝情報機器(TIE)の従来の東西のカスタマーサポートセンターで稼働していたシステムを一新し、東芝パソコンシステムが手薄だった関西拠点を強化した。「この強化で保守のターンアラウンドタイムを短縮化することにより、お客様から評価をいただいている」という。同年10月、東京の日本橋、小伝馬町、青物横丁、新宿の4か所に分散していた首都圏の拠点を東京江東区・豊洲に集約して新本社とした。これによってコミュニケーションが円滑になるなど、シナジー効果も生まれた。

 実はこの拠点集約は「旧東芝パソコンシステムのメンバーに、早くTIEになじんで欲しいという人心リフレッシュを図る」狙いもあったが、半年を経過してその効果は上々のようだ。

 こうした体制変更に加えて、Active 3iに基づくイノベーティブな営業活動も定着してきた。つまり行動量を上げ、ショートインターバルコントロール(SIC)を掲げて、顧客の要望やビジネスパートナーからの情報を基に、週単位で設定した目標を細分化し、掲げた行動指標を修正しながら営業活動を行っていくというスタイルである。

 「市場が厳しいなか、一連の強化策が効いて、07年度の年間売上は930億円近くまできた。とくに下期は売上500億円以上という好結果を得ることができた」。実は末澤社長は3年前、東芝から出向してTIEのPC企画部長に就いていた時期がある。「当時から比べると体力的に強い体質になったと感じる。その強さを、さらに強固なものにしていくのが私の使命」と末澤社長は語る。

“2つの三位一体”を強化し
08年度は売上1人1億円の実現へ


 “利益ある持続的成長”が東芝グループの方針であり、グループ会社の一員であるTIEもこの方針で臨むわけだが、08年度は「年間売上1000億円を達成したい。従業員が約1000人なので、1人1億円が目標」という節目の年になる。

 それには「ビジネスパートナー」との連携強化が不可欠だが、TIEでは販売店やソリューションベンダーだけでなく「顧客も重要なビジネスパートナー」と捉えている。こうした考え方を鮮明に打ち出したのは07年後半から。その意味するところは、こうである。

 顧客と直接接することにより、市場へのアプローチの仕方がわかり、顧客がいま何を考え、求めているかが、顧客の視点でわかる。いわゆるVOC(Voice of Customer)がわかるというわけだ。

 「そうしないと、VOCの“C”がときとして“Channel”になり、本当のお客様の声がどこにあるかわからないことがある。むろん、日々の営業活動ではチャネルパートナー様から教えられたり、貴重なアドバイスを受けることのほうが多いのは言うまでもない。だが、エンドユーザーとしてのお客様の声を聞かせていただいたり、サジェスチョンをいただくことも非常に重要。なぜなら、そうした市場のニーズを販売パートナー様に横展開したり、新たなソリューションの開発にも有効だからだ」と、末澤社長は説明する。

 そうした「顧客もビジネスパートナー」との前提に立って、いわゆる“Win-Win”の関係を築き、TIEの存在を強く打ち出すのが末澤体制の基本戦略で、そのためのポイントは大きく2つある。1つは、マーケティング・セールス、ソリューションエンジニアリング、カスタマーサポートの三位一体。もう1つは、商品力、品質力、販売力の三位一体だ。

 まず商品力だが、東芝が供給してくるサーバーやPC、さらにはTIEが自らつくるソリューションには市場優位性がある。次に、ハードウェアにしてもシステムにしても同様だが、品質も重要。言うまでもなく、品質に問題があれば長いダウンタイムを生じるなど顧客に迷惑がかかる。品質力についても定評がある。さらにこの1年間、地道に取り組んできた営業活動改革のActive 3iで培った販売力にも自信がある。そのことは07年度の好調な売上が証明していると言えよう。

 「これらの三位一体を合わせた“2つの三位一体”の力でTIEという企業をアピールし、引っ張っていきたい。強いTIEをより強固にしたい」と、末澤社長は自信をのぞかせる。

販社やベンダーとの連携を強め
“活力と情熱”で市場に臨む


 顧客もビジネスパートナーだが、やはりTIEにとっては販売チャネル、ソリューションベンダーとの連携は不可欠。そこで、「Tie Cube」に象徴されるように、パートナーとのアライアンスには力を入れている。

 08年度のビジネスパートナー戦略として注目したいのが、販売店とのアライアンス強化である。お互いの目標や目的、ターゲット市場やソリューションを認識したうえで、アライアンスを組んでもらえるような販売網のグループ化を計画しているが、エクスクルーシブな集まりにはしない。「我々のビジョンに共感していただき、一緒になってビジネス展開を行い、相互に魅力のあるアライアンス関係をパートナーと構築していきたい」。市場はアメーバのように変わり、ソリューションも変化する。「お客様にアプローチするには、お互いに本音を言えて、切磋琢磨できるような関係でないと意味がない」。

 パートナーとの連携強化によって新たなビジネスチャンスを創出していく考えだ。東芝にはさまざまなグループ会社があるが、マーケティング・セールス、ソリューションエンジニアリング、カスタマーサポートという3つの部門を持ち、それが三位一体で全国展開をしているグループ会社は他にない。「そういった意味で、お客様に製品やソリューションを提供してから、使用期間が終わり、システムなりハードウェアといった商品のライフサイクルの最後まで一貫して、導入からエンドオブライフまでトータル的にお客様にサポートできるのが強み。またお使いいただいている間に、お客様がお困りのことがあれば、さまざまなご提案をして、まさしく“One-Stop”で、ソリューションを提供する」。パートナーとのアライアンスは、そうしたTIEと自立して連携できる販売店やベンダーがお互いの強みを磨きあげていく集まりになる。

 TIEの新社長としては「販売会社なので、個々の従業員が“活力と情熱”を持ってマーケット(顧客を含めたビジネスパートナー)に対峙できるような企業に持っていきたい。それが結果として真のワンストップソリューションカンパニーになる」との考えだ。

 「1000名の従業員が同じ方向を向いて走り続ける企業を目指したい、そして社長としてその先頭を走りたい」と末澤社長は語る。少々インターナルな話として、末澤社長はこんな抱負も語っている。TIEが東芝の中でも世界のモデルになるような、ナンバーワンの「BtoBソリューションカンパニー」を目指したい――。

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