Special Issue

<仮想化ソリューション特集>管理・運用、グリーンITといった観点からも注目

2008/05/19 19:56

週刊BCN 2008年05月19日vol.1235掲載

「サーバー集約」「仮想化」は、市場のトレンドに

物理的/仮想的な
統合がトレンドに


 サーバー統合を、管理の側面から考えてみよう。分散設置されているサーバーすべてを情報システム部門が一括管理しようとしても、あまりの数の多さにコントロールしきれないというのが正直なところだ。適切に管理するためには、システム管理部門への追加の投資が余儀なくされる。しかし、企業として、既存システムの運用・管理に膨大な投資を行うことは難しい。結果的には「打つ手なし」という状況になってしまう。これを打破する方法として、今、サーバー統合が注目されている。分散設置ではなく集約することで、シンプルに管理しようという考え方だ。

 運用コストの面から考えてみても、統合のメリットは高い。企業に導入されているサーバーを見ると、そのリソースを使い切っているケースはほとんどない。非常に無駄が多い状態だ。また障害が発生した場合、管理者がサーバー設置場所まで移動する時間や作業コストを考えると、相当のコストがかかっていることに気づくはずだ。そこで、複数のサーバーを統合し、シンプルにかつ一元的に管理しようという動きが活発化している。物理的な統合はもちろん、論理的な統合(仮想化)がトレンドになっているのだ。

こだわり抜いた
サーバーなどにも注目


 サーバー統合を行う場合、第一段階として物理的な統合が行われる。分散設置されているサーバーを1か所に集めることで、管理・運用面でのデメリットやセキュリティリスクを低減させるためだ。その最たる例が、NECの提供している「オフィスラックサーバ」である。「オフィスラックサーバ」は、日本のオフィス環境に適した設置性の高いサーバーだ。キャスタ付でレイアウトフリーなうえ、奥行きや高さなどがJIS規格に準拠している。つまり、デスクなどとの相性がよく、レイアウトしやすい筐体にサーバーが収まっているのだ。ブレードサーバー同様に、エンクロージャー(収納ラック)に収まるラックサーバーやNASを導入しなければならないため、ラックマウント型サーバーと比べると選択肢が少なくなるが、業務内容や規模など、市場を選べば非常に強力な武器となる。また、ブレードサーバーも同様に物理統合を行えるサーバーだ。これまでは、エンクロージャーやストレージなどの導入コストが高いことを理由に、SMB市場での導入は進んでこなかった。

 最近では、サーバーベンダーがキャンペーンを行い、エンクロージャーの価格を下げるなどの提案を行ってきた結果、中小規模企業での導入も進んでおり、ビジネスチャンスを生んでいる。また、日本ヒューレット・パッカードは8万円台で購入できる「HP BladeSystem c-Class」に対応したブレードサーバーを発表し、SMB市場への起爆剤として期待されている。なお、ブレードサーバーを活用することで、電源やファンなど共通部品を減らすことができ、消費電力の低減という側面でも寄与する。

photo

成功のカギは
サイジングが握る


 物理的なサーバー統合だけでは、サーバーのリソースの最適化などは行うことができず、まだ無駄の多い状態といえる。そこで、次のステップとしてはじめて仮想化が行われる。仮想化とは、1台のサーバー上で仮想的に複数台のサーバーを稼働させること。物理サーバーの利用率が向上し、サーバーリソースをこれまで以上に有効活用できることになる。もちろん、消費電力の低減にも寄与する。

 非常にメリットの高い仮想化だが、闇雲に導入すればいいというわけではない。現在、仮想化を実現するためにVMwareなど商用のソフトウェアのほか、「Xen」「OpenVZ」などオープンソース系のソフトウェアがある。導入コスト的にはオープンソース系に軍配が上がるが、導入支援ツールや管理ツールが充実しているのは商用のソフトウェアだ。また、商用ソフトウェアは、サポートが期待できるため、導入実績が非常に多い点も見逃せない。

 これまで、「サイジング」を適切に行わなかった仮想化は、後工程で手戻りが発生したり、要件を満たさないシステムとなるケースが多かった。仮想化の失敗は、見切り発車によるシステム構築にある。仮想化のハードルを高くしていたのは、システム全体を精査しなければ、仮想化に踏み切ることができなかったことにある。

国家プロジェクトでもある
グリーンITという視点からも有効


 しかし、その状況も変わりつつある。Windows Server 2008で利用できるHyper-Vは、既存環境と仮想環境を混在利用できるうえ、比較的低コストで導入できる。必要なければやめることができるし、追加の投資はいらない。「少しだけ試す」ことができるため、「サイジング」の追加投資が難しい企業でも仮想化を使いこなす素地ができあがる。

 さらに「仮想化」は、国をあげて後押しする動きもある。実は、仮想化はグリーンITという観点からも有効なのだ。洞爺湖サミットを契機に、今後グリーンITへの要求が高まると予想される。特にオフィスなど業務部門での温室効果ガスの排出量は、2006年の速報値で1990年比で約42%増の2万3300万トンとなり、大きな課題となっている。その対策の決定打として、サーバー統合、仮想化に注目が集まっている。

 

 実際、仮想化をテーマに掲げたイベントも多数行われている。例えば08年6月24-25日の2日間、東京国際フォーラムで「GridWorld 2008」「Next Generation Data Center 2008/Green IT World」が同時開催される。このイベントは、グリーンIT時代を迎えたデータセンターを中心とするソリューションや仮想化、グリッド技術などを用いた運用管理の合理化・省電力化など、幅広い内容になっている。

[次のページ]