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<オフィスプリンタ特集>プリンタ市場にも広がる、環境負荷の低減という課題

2008/06/16 19:56

週刊BCN 2008年06月16日vol.1239掲載

 ビジネスにおいて、「紙」は重要な役割を果たしている。オフィスのペーパーレス化が推進されているとはいえ、稟議や決裁、申請などは、やはり「紙」を使っているという企業が多い。外部とのやり取りも、発注書・請求書などの帳票はもちろん、提案書やPOP、チラシなど、「紙」を使うケースが多い。今もなお、ビジネスを支えている「紙」。その印刷を行うツールとして、オフィスプリンタへのニーズが高まっている。

プリンタの最適配置を含めエントリー市場が活性化

プリンタの最適配置がトレンドに

 「紙」への印刷を受け持つプリンタは、ビジネスにおいて重要な位置を占める。「紙」の印刷品質・印刷速度といった基本機能の向上は、企業の生産性にも直結しているだけに、より速く・よりきれいに印刷できるプリンタのニーズは高い。しかし、ユーザーは基本性能だけを求めているわけではない。最近注目されているのは「設置のしやすさ」という部分である。

 これまでプリンタは、生産性の向上を実現すべく進化してきた。基本性能の向上が何よりも求められてきたのだ。そのため、多くの企業では、高速な電子写真式のプリンタやMFPなどがセンタープリンタとして配置されてきた。

 しかし、集約化は管理性を高めたものの、出力が集中した場合、印刷されるまでの待ち時間がかかるうえ、センターへ取りに行くまでの時間や手間も無視できないことが明確になった。また、重要な書類がほかの印刷物に混じってしまったり、それを置き忘れてしまった場合の情報漏えいリスクという課題もある。最近では、管理性を高めながらも、運用性やリスクを低減させるため、高速なセンタープリンタと低速なプリンタを組み合わせた「最適配置」を行うケースも増えている。その中で、どこにでも設置できる「設置のしやすい」プリンタが求められるのは当然のことと言えよう。

企業向けのインクジェットが台頭

 さらに最近では、SOHOや中小企業などを中心とした、エントリーカラープリンタ市場が創出され始めている。これまでSOHOや中小企業などは、コンシューマ用のインクジェットプリンタなどを設置し運用してきた。より速く・よりきれいに印刷できるプリンタのニーズは高いものの、コンシューマ用のインクジェットプリンタを使い続けるほかなかったのである。「設置するスペースがとれない」「導入コストが高い」ということが課題になり、導入に至らないケースが続いていた。

 しかし、その市場に一石を投じるメーカーが現れ、企業向けのインクジェットプリンタが台頭してきた。この詳しい内容は、2008年6月2日発行の本紙Vol.1237の第一面に「プリンタ市場に新たな風・企業向けインクジェット台頭」と題する記事が掲載されているので、そちらを参考にしていただきたい。セイコーエプソンや日本ヒューレット・パッカード、キヤノン、リコーなど、インクジェットプリンタ市場に対する各社の取り組みや意気込みが伝わるはずだ。

エントリー市場に求められる設置環境性

 それだけではない。企業向けインクジェット台頭に加え、エントリー市場向けの電子写真式のプリンタやMFPなどが投入され始めている。製品のサイズ・重量などを抑え、製品価格を低く設定することで、この市場でも電子写真式のプリンタがユーザーの選択肢に入るようになったのである。もちろん、従来から小型の電子写真式プリンタもあった。しかし、モノクロプリンタがほとんどで、基幹業務の出力機器として利用されるまでにとどまり、オフィス用途での活用は進んでいなかった。

 エントリー市場向けプリンタやMFPなどの提案により、モノクロプリンタがあった場所にカラープリンタを設置するということも可能となり、ビジネスチャンスを広げた。また、こういった機種は設置面積が小さく、窓口業務や店舗のバックヤードなどにも配置できることから、さらに市場を広げている。

 モノクロプリンタはもちろん、コンシューマ用インクジェットの置き換えとしても十分活用できるカラーページプリンタの登場は、新しい市場を創出する。それだけに、メーカー各社の期待も大きい。

環境負荷の低減も大きな課題

 プリンタにも、地球温暖化対策の波が来ている。プリンタ業界もまた、「グリーンIT」という潮流の影響を受けているのだ。電子写真式のプリンタは、その構造上どうしても熱を発生させることから、それ自体が熱源になる。また、無駄な印刷は「紙」の浪費を生み出してしまうため、これを防ぐことが課題となっている。本体の消費電力の低減はもちろん、集約印刷、両面印刷などを併用し、無駄な印刷を削減するように工夫されている。

 循環型社会を実現すべく、リサイクルシステムを提供するメーカーも登場し始めた。その好例がトナーカートリッジやドラムカートリッジなどの使用後の回収・再資源化の実施だ。具体的には、ユーザーが使ったカートリッジを回収し、分解後、再使用可能な部品を選別する。その後、新しいカートリッジへ生まれ変わり、再びユーザーが活用する。再使用できない部品については、原料化などのリサイクルを実施し、ゼロエミッション(埋め立てゼロ)を実現するリサイクルシステムを構築しているメーカーもある。

 こうしてリサイクルされたカートリッジはメーカーの保証が有効であるため、印刷精度が落ちず、本来の性能を発揮する。また、メーカー保証がついているため、万が一のトラブル時でも安心だ。カーボンオフセットなども利用しながら、温室効果ガスへの削減を実現しているケースもある。つまり、これまで通りに製品を活用しながら地球環境に配慮することになる。

 現在の状況を考えると、企業がリプレース時に「グリーンIT」という要素を含めて製品選定を行うだろうということは容易に想像できる。今後、製品力に加え、「グリーンIT」にどのように取り組んでいるのか、導入することで環境負荷はどれくらい低減できるのかといったことが重要になるだろう。

 企業情報の流通の要となる「紙」。その印刷を担うプリンタへのニーズは、日々高まっている。それらのニーズに応え、新しい市場が広がってきている。今後、どのようにビジネスプリンタ市場は進化していくのだろうか。目が離せない。

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