Special Issue

ディーリンクジャパン 日本での成功を目指す

2008/07/14 19:55

週刊BCN 2008年07月14日vol.1243掲載

 ディーリンクは、日本市場への上陸を実現し、ディーリンクブランドも認知され始めている。官公庁や文教市場、企業において同社製品の導入も進んでおり、市場からも注目されている企業の1つである。その日本法人、ディーリンクジャパンの新社長にMarty Liao氏が就任した。その意気込みやディーリンクグループの日本への取り組みを聞いた。

日本のニーズをグループの強みに成功事例を世界に横展開


次のステップはブランド力の強化

 「ディーリンクジャパンは2005年に設立しました。この3年間で企業としての基盤作りはできたと自負しています。今後のステップとしては、日本市場でのさらなるブランド認知、信頼の獲得を目指そうと考えています」と、ディーリンクジャパンのMarty Liao代表取締役社長は語る。

 Marty Liao社長はネットワーク製品のOEM供給に10年以上携わっており、日本の商習慣や企業構造、ニーズなども熟知している人物だ。ディーリンクグループとディーリンクジャパンを橋渡しするのに、これほど適した人材はいないだろう。

 「日本のお客様は、品質を非常に重視されています。そのため品質・技術を見直し、必要な検証も行ってきました。これらの情報をディーリンクグループにフィードバックすることで、グループ全体が成長していけるような活動も続けています」(Marty Liao社長)。日本で認められた製品は、世界で通用する。日本の要求・ニーズを吸い上げ、ブランド力の強化にもつなげているのがディーリンクグループである。

 外資系企業の場合、欧米での成功事例をそのまま日本市場で展開しようとする風潮がある。しかし、それらの多くは風土・環境・商習慣の異なる日本のニーズと合致せず、導入に至らないことも多い。

 しかしディーリンクは、そうではない。各国のニーズを吸い上げ、それらに応えた製品作りを行い、ディーリンクグループとしてワールドワイドで横展開することで、グループ全体の付加価値を向上させている。各国のニーズに応えることで製品力を強化し、自社の強みに変えているのだ。実際に、日本での成功事例も、ワールドワイドで展開している。

 例えば、ネットワークの出入り口である「エンドポイント」で強固なセキュリティを実施し、ネットワーク全体のセキュリティをLAN内部から高めるL2+コンパクト セキュア ギガスイッチ『DGS-3200-10』は、「Interop Tokyo 2007」で『Best of Show Award』を獲得するほどの製品だが、実はこれは日本発の企画である。現在、この製品は日本国内ばかりではなくワールドワイドでも非常に好調に推移しており、ディーリンクグループの伸長を牽引している。

 従来、市場にはコアスイッチ以外のセキュリティスイッチが提供されていないため、不正通信を制御するのが難しく、ウイルスなどが蔓延しやすいという課題があった。しかし、ディーリンクジャパンの提案によって、島ハブと言われるエンドポイントでセキュリティスイッチが導入できるようになり、エンドポイントでの認証・検疫を実現した。これにより、不正ユーザーのアクセスなども効果的に防止し、安価にセキュリティレベルが向上できる。

グリーンITを実現した製品力に注目

 ディーリンクジャパンは「Interop Tokyo 2008」において「Best of Show Award」を3年連続受賞した。今年は「省エネルギーギガビットスイッチ:Green Ethernet DGS-1000/GEシリーズ」が「プロダクト部門:ホームネットワーキング関連製品」の特別賞を受賞している。

 「Green Ethernet」スイッチは、ポートが使用されている/いないを自動的に判別し、ポートが使用されていない場合には、自動的にポートをスリープ状態にしたり、接続されているケーブル長に応じて、信号出力を調整するなど、各種省エネ技術を活用することで最大約80%(ディーリンクジャパン計測値)もの省エネを実現する。ネットワーク運用に必要なエネルギーコストを削減するとともに、地球への環境負荷の削減にも貢献するとして「Best of Show Award」の受賞に至ったのである。

 さらに、消費電力を少なくすることで発熱が抑制されるため、結果として製品寿命を延ばし、運用コストの削減も期待できる。つまり「Green Ethernet」スイッチは、あらゆる面でメリットのある製品なのだ。

 「グリーンITへの取り組みは、昨年から行っており、9月にはアメリカで製品をリリースしています。エンタープライズでの取り組みは非常に活発ですが、エントリーまで展開しているベンダーはまだ少ないのが現実です。そういった意味からも注目を集めたのだと思います」と、ディーリンクジャパン・営業本部の東堂園俊治本部長は、振り返る。

 06年、ディーリンクは、ワールドワイドで約300万ポートのSOHO/SMBギガビットスイッチを出荷した。これらのスイッチを「Green Ethernet」に変えるだけでも、地球環境への負荷を大幅に軽減できるだろう。最も多く導入されているエントリー向け製品こそ、総合的な効果が現れやすい。「Green Ethernet」スイッチは、現在アンマネジメントスイッチだけではなく、L2マネジメントスイッチへ展開されている。今後、グリーンITをキーワードにした製品は、数多く提供されることだろう。市場のトレンドとなっていることからも、大きく期待できる製品群と言える。

マーケティング的にも重要な拠点に

 日本はディーリンクグループにとっても重要な拠点となっている。08年7月1日にはD-Link CorporationのCEOに就任し、北米、ヨーロッパ、中国・台湾、それ以外と計4つのグループを統括しているD-Link International Pte Ltd・Presidentを兼務しているTony Tsao氏によると「日本は世界で2番目に大きな市場で、日本のお客様のニーズは世界でも通用するものだと考えています。セキュリティやIPv6なども、日本市場で注目され実装してきました。それらの製品は、ワールドワイドで非常に高い評価を得ています」とのことだ。

 ディーリンクグループは、日本が求める品質、ニーズに柔軟に応える体制を整えるだけではなく、それらをフィードバックし、グループ全体の成長へとつなげている。日本市場はディーリンクグループにとって、セールスだけではなく、マーケティング的にも重要な拠点であるというのだ。

 D-Link International Pte Ltdはインフラに強く、テレコム系などでの存在感は大きい。さらに、発展途上国でもWiMAXなどの展開を行っており、非常に高い成長を遂げている。それらの国々に対して、日本での成功事例が生かされているのだ。

 「ディーリンクグループは、ワールドワイドで100超の拠点があります。その中でもロシア、ブラジル、インドは急成長しています」(Tony Tsao 氏)。

 ロシアの01年の売り上げは100万ドルだったが、昨年は2億ドルを超えている。営業拠点も30拠点に増やしているとのことだ。特に伸びているのがテレコム関連。インフラ系のビジネスが中心となっている。ブラジルは、およそ1億ドルの売り上げがある。180%超の伸張をしており、ADSLなどが好調とのことだ。これらの国でも「セキュリティ」への要求は高く、『DGS-3200-10』を活用したエンドポイントなど、日本での成功事例を生かしている。

連携を強化しソリューションとして提案

 「これまでは、製品を“単品”として展開するケースが多かったのですが、製品での連携を密にし、ソリューションとしてお客様の課題を解決できるようにしていこうと考えています。SMBはもちろん、エンタープライズのお客様にとって、ソリューションでの提案は非常に重要です」(Tony Tsao 氏)。

 ディーリンクグループは、ローエンドからエンタープライズの製品まで揃えており、ワールドワイドのシェアもトップクラスである。それだけではなく、製品間連携も実現し、ソリューションとして提供できる商材として訴求力を強めている。

 例えば、D-Linkファイアウォールとスイッチを連携させた通信検疫やIPv4/IPv6混在環境下における統合セキュリティモデルなど、さまざまなニーズに応えるソリューションも用意している。さらに、ほかのメーカー/ベンダーのソリューションとの連携も模索し始めている。

 「ベンチャー企業などの持つ技術にも注目しています。例えば、IPカメラの制御ユーティリティと当社が連携すれば、非常におもしろい企画になると思います。“Interop Tokyo 2008”の会場でも、興味深いブースがいくつもありましたね」(Tony Tsao 氏)。

 「Interop Tokyo 2008」のディーリンクジャパンブースでは、横河電機とのコラボレーションで実現したIPv6/IPv4トランスレーターや山武とのコラボレーションであるIPを活用した入退出管理ソリューションなどが展示されていた。IPv4の枯渇が問題視されるなか、IPv6への移行は必須だ。その中で、同社が提案するソリューションが活用されるケースは多いだろう。

検証ラボの設置など販売しやすい体制を整える

 「さまざまな展開を行ってきたことで、パートナー様からの認知も向上していると思います。官公庁などでも導入が進んでおり、特にエンタープライズでの認知が進んでいると実感しています。入札仕様でもセキュリティやグリーンITの要件が入っているので、販売しやすい環境も整ってきていると感じています」(東堂園本部長)。

 最近では、ネットワーク機器のリプレース需要も顕著となっている。すべてのネットワークを変更するのではなく、一部導入などが進んでおり、ディーリンク製品が浸透し始めているというのだ。フロアスイッチやエンドポイントなどのスイッチのリプレースでは、特に特徴的な製品を揃えていることもあり、高い評価を得ている。製品の品揃え、機能・品質の高さ、付加価値のバランスのよさがパートナー/エンドユーザーに理解されている証しといえよう。

 「パートナー様から、要望や情報をいただいて、それらの声に応えるよう努力しています。それが市場ニーズに応えることになり、グループ全体の価値を向上させることにつながっているのです。さらにプラスアルファできるように、マーケティングにも力を入れていきたいと考えています。パートナー様には、1つでも多くのご意見をいただきたいと思います」(Marty Liao氏)。

 今夏、ディーリンクジャパンではパートナー会の実施を予定している。ディーリンクの大きな改革をしている中、パートナー企業とのパートナーシップを強固にしていく狙いがある。

 ディーリンクジャパンは、今秋に本社事業所を移転する予定だ。そこでは、検証ラボなどを増設し、導入に際して事前検証する場を作るという。販売パートナーにとって、さらに売りやすい環境が整うことは間違いない。

 最後に、新社長のMarty Liao氏に意気込みを聞いた。

 「アジアのハードウェアメーカーが日本で成功した事例はまだないと思います。ぜひとも、ディーリンクジャパンを日本で成功させたいと考えています。ディーリンクグループは、計画・設計・開発・販売を兼ね備えており、サポートや対応力にも自信があります。今後は、本社との連携もより強化していき、日本市場にさらに適したソリューションを提供していきたいと考えています」(Marty Liao氏)。

  「Interop Tokyo 2008」で盛況のブース
 「Interop Tokyo 2008」(08年6月11日-13日:幕張メッセ)では、14万人を超える来場者を記録した。ディーリンクジャパンのブースにも多くの来場者が足を止めていた。「セキュリティ」「グリーンIT」など時勢に応えた展示は、多くの目をひいていたようだ。また、「Interop Tokyo 2008 Best of Show Award」は、「省エネルギーギガビットスイッチ:Green Ethernet DGS-1000/GEシリーズ」、「省エネルギーギガビットスマートスイッチ: Green Ethernet DGS-1200T/GEシリーズ」、「10GSFP+ボックススイッチDXS-3200シリーズ」(第4四半期発売予定・未発表)がノミネートされ、「Green Ethernet DGS-1000/GEシリーズ」が「プロダクト部門:ホームネットワーキング関連製品」において特別賞を受賞した。

 


 
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外部リンク

ディーリンクジャパン=http://www.dlink-jp.com/