データセンター(DC)サービスの多様化が進んでいる。サービスレベルの選択自由度の拡大や、必要なときに必要なだけITリソースを割り当てるオンデマンド方式の増加など、ITベンダーはユーザーニーズの引き出しに余念がない。新型DCを支える仮想化技術の普及や、クラウドコンピューティングの導入などの変化も多様化を後押しする。さらに、DCサービスに対しては2008年9月のリーマン・ショック以降も根強い需要がある。数少ない有望市場に優先的に投資をするITベンダーの戦略もうかがえる。

不況下でも需要根強く、クラウドが変化後押し

数少ない有望ビジネス

 NECは全国53か所あるDCのうち、向こう2~3年内に10か所を仮想化対応の新型DCに改装する。ライバルの富士通も、館林システムセンター(群馬県)に約6000ラックを設置可能な最新鋭の新棟を建設し、今年11月からサービスを開始する。富士通は既存のDC設備も一部改修し、本格的なクラウドコンピューティングサービスを立ち上げる計画だ。日立製作所も、大規模なクラウドサービスのメニューを体系化した「Harmonious Cloud(ハーモニアスクラウド)」を7月末から始める。

 ITベンダーが強気の投資を行う背景には、ユーザー企業の外部DCサービス活用への根強い需要がある。調査会社のIDC Japanの調べによれば、2008年の国内DCサービス市場は、前年比13.3%増の7669億円に拡大。リーマン・ショック以降の不況の影響は少ないと分析し、2012年までの年間平均成長率は12.7%、12年の市場規模は1兆2000億円を超えると予測する。景気後退によるIT投資の抑制で、厳しい事業環境に直面するIT業界だが、「数少ない有望ビジネス」(大手ITベンダー幹部)とみる。

 “所有から利用へ”の流れのなかで、ユーザー企業がITベンダー所有のDCにシステムを預ける動きが拡大するのは必至。ベンダーは、他社との差別化やシェア獲得を狙い、ユーザーの細かなニーズへの対応を積極的に進める。

 DCのサービス形態や特性は“多様化”の様相をみせている。例えば、DCの場所だけ借りるハウジング方式は、価格は安いもののサポートが手薄になりがちだ。一方、手厚いサポートが得られるホスティング方式は、規模が大きくなればコストがかさむ傾向にある。国内最大級の専用ホスティングサービスを手がけるリンクは、両方式のメリットを生かしたコロケーションサービスの拡充に乗り出すなど、ベンダー間の競争は激しさを増している。

“富山の置き薬”方式も

 従来のDCサービスは、基本的には顧客のハードやソフトをDCで預かる形態だ。しかし、クラウド型サービスでは、ハード・ソフトなどのIT資産は原則としてベンダー側がもつことになる。ユーザーはDCの設備どころか、サーバーすら所有しない。利用した分だけ費用を支払う完全なオンデマンド型のサービスモデルである。

 この形態は、ハード販売を収益の柱とするハードベンダーにとって、サーバー販売台数の減少というリスクを伴う。ユーザーからみても、どういう仕組みで動いているのか分からないクラウドに基幹業務システムを委ねるのは勇気が必要だ。

 両者の思惑を折衷したのが、ユーザーがサーバー資産を保有する“ユーザー所有型のクラウド”である。

 これはユーザー企業の電算室にミニクラウドを構築するもので、ハードメーカーにとってはサーバーが売れ、ユーザーからみればクラウドのすぐれた点を生かしながら、自らシステムを管理できるというメリットがある。

 さらに、ユーザー企業の電算室にベンダーが所有するハード・ソフトなどのIT資産を使ってミニクラウドを構築する“富山の置き薬方式”も登場。日立ソフトウェアエンジニアリングは、今年9月からこの方式のクラウドサービス「SecureOnline(セキュアオンライン)出前クラウドサービス」を始める。ユーザーはサーバーは所有しないが、設置する場所はユーザー企業の電算室。使った分だけベンダーに支払うもので、“置き薬クラウド”とも呼ばれる。

 根強いユーザー需要に支えられているDCサービスは、ITベンダーにとって「最優先の投資対象」(別の大手ITベンダー幹部)だ。市場の拡大に伴うサービス形態やメニューの多様化が、さらに多くのユーザーニーズを掴むという好循環をITベンダーがつくり出せるか。これが、今後のDCサービスビジネスの行方を大きく左右する。

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