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日立製作所 「JP1」の中堅・中小規模版が登場

2009/09/15 19:55

週刊BCN 2009年09月14日vol.1300掲載

 統合システム運用管理ソフト「JP1」で、トップシェアを維持し続ける日立製作所が、その「JP1」の姉妹版として、従業員数1000人以下の中堅・中小規模の企業を主なターゲットとする「JP1 Ready Series」をリリースする。その第1弾となるのが、PC運用管理ツール「JP1/Desktop Navigation」だ。

「使いやすく、しかも売りやすい」

 大規模ユーザーでも高い評価を受ける「JP1」の機能を継承しながら、PCの運用管理業務に詳しくないユーザー企業・団体でも容易に導入・運用できるように、使いやすさ、わかりやすさを徹底的に追求した。販売施策では、「パートナーとの連携が不可欠」とし、多種多様な支援内容を用意し、販社が売りやすい環境を整えた。構想から約2年かけて開発したツールが、いよいよ市場に登場する。

トップシェアツールの姉妹ブランド

 統合システム運用管理ツールのデファクトともいえる「JP1」。製造・流通など、業種を問わず導入が進んでいる。今回、日立が投入した「JP1 Ready Series」は、そのデファクトツールの姉妹ブランド。第1弾となる「JP1/Desktop Navigation」は、従業員数1000人以下の中堅・中小企業に特化したPC運用管理ツールだ。

 開発責任者である大坂弘江・ソフトウェア事業部第2JP1設計部 部長は、「これまで『JP1』は主に大規模システムで使われるシーンが多く、大企業向けのイメージが強かった。ただ、運用管理ツールに対する需要は中堅・中小規模の事業者まで広がってきたため、『JP1』の良さを活かしながら、中堅・中小ユーザー独特の要望に応えられる製品を開発する必要があった」と、開発した理由を説明する。

 また、中堅・中小ユーザーの状況について「ツールそのものを導入していない、またはツールを導入しているもののうまく使いこなせていない状況」と分析。ビジネスポテンシャルが高いことを実感している。


リーズナブルでしかも使いやすさ追求


 「JP1/Desktop Navigation」のコンセプトは明確だ。「リーズナブルな価格で手軽に導入でき、そして使いやすい」(関芳治・ソフトウェア事業部JP1マーケティング部 主任技師)。PCの運用管理に適した機能を「JP1」から移植しながら、運用管理ツールに精通していないユーザーでも容易に導入できるように、使いやすさを追求したうえで、価格競争力も高めたわけだ。

 「JP1/Desktop Navigation」は、大きく2つの管理機能を備える。1つは、企業における“見えないムダ”を排除するためのハード/ソフト情報の管理やPCの省電力設定の管理といった環境に優しく、コスト削減に役立つIT資産管理機能。もう1つは、企業における“見えないキケン”への対策として、セキュリティ対策状況のチェックなどのセキュリティ管理機能だ。同製品では、エージェントレスでこれらの基本的な監視をすばやく開始することができる。また、監視を開始する際には、「初期診断機能」で現状の問題点や対策をチェックできる。さらに、どのようなセキュリティルールを決めればよいか分からないユーザーのために、一般的なセキュリティ対策のルールをまとめたセキュリティポリシーを搭載している。自社の運用方法に沿って、ポリシーをカスタマイズできる機能も用意するなど、柔軟さも兼ね備えた。

トップ画面では、PCの総数や接続端末数、安全状況、どのPCでどのようなイベントが発生したかなど、必要な情報をひと目で確認できる

 一方操作性では、日立ならではの工夫が盛り込まれている。家電などのさまざまなデザインを手掛けるデザイン本部との連携で、徹底的に顧客視点での使いやすさや操作性を追求したのだ。グラフや図を多用したGUIは、マニュアルを見なくても操作できるよう、画面遷移の方法にもこだわっている。


 価格も競争力がある。ライセンスは2種類で初期導入ライセンスと追加ライセンスだけ。税込価格は初期導入ライセンスが50ライセンスで42万円、追加ライセンスは10ライセンスで5万7750円。また、サポートメニューもシンプル・低価格を実現。PC台数に限らず一律年額12万6000円で展開する。いずれも、ユーザーが購入しやすく、販社が売りやすくするための工夫だ。

パートナーが売りやすい環境整備

 では、日立はこの戦略商品をどう売ろうとしているのか。「中堅・中小規模ユーザー市場にアプローチするには、パートナーの力が必須」とみて、販社との協業を中心に考えている。

 販社となるパートナー企業が売りやすい環境をつくるために、「JP1」でパートナー約100社に提供して評価が高かった支援制度を適用し、(1)マーケティング(2)セールス(3)技術(4)情報提供(5)トレーニング(6)インセンティブの6メニューを用意。10月からは北海道から九州まで全国6か所でプロモーションセミナ―を開催し、商品のPR活動を本格化させる。

 JP1/Desktop Navigationはシンプルなライセンス体系なため売りやすく、また、導入には専任SEを用意する必要がないため手離れもよいというのがパートナーのメリットだという。

 日立によると、IT資産管理ツールの導入を検討している企業は約14万社、市場規模は約740億円とみられる。「JP1」の実績とブランド、使いやすさ、そしてシンプルなライセンス体系と価格競争力という複数の強みを武器にして、パートナーとともに新市場を開拓していく考えだ。
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