BCNランキング2010年上期(1~6月)のメモリカード部門では、サンディスクが販売数量シェア1位に輝いた。規格・容量・スピードで、ユーザーのあらゆるニーズに応えるフルラインアップを揃えていること、また、キャンペーンなどを積極的に展開して、No.1メーカーとして、買う側、売る側ともに満足する環境づくりに注力していることが要因だ。
HD動画の普及で
大容量カードが支持を集める
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マネージング・ディレクター 青柳マテウ 氏 |
メモリカード市場は、2009年末から2010年初めにかけて、販売数量・金額とも前年割れと低迷。しかし2010年5月、6月は前年を上回り、回復基調にある。
そんな今年上期の市場の一番大きな変化を、サンディスクの青柳マテウ・マネージング・ディレクターは「SDカードへの集中だった」と語る。コンパクトデジタルカメラからエントリー一眼まで、主要モデルのほとんどがSDカードに対応。SDがメモリカードのデファクトスタンダードになったことで、「ユーザーがメモリカードを選ぶときの混乱が減り、販売する側も売りやすくなった」という。
また、デジタルカメラでハイビジョン(HD)動画を当たり前に撮影できるようになったことや、SDカードスロットを備えるHDテレビで写真や動画を楽しむスタイルが広がっていることなどが、メモリカードの大容量化を促進した。これが、「上期にメモリカードのマーケットが回復した要因だ」という。
そんななか、大容量でハイスピードに強く、規格・容量・スピードごとに製品を揃えるサンディスクの特性が強みを発揮し、多くのユーザーから支持された。
ハードに見合った
カードを選べる環境を整える
サンディスクは、2007年から昨年まで、3年連続で販売数量メーカーシェアNo.1に輝き、「BCN AWARD」メモリカード部門を受賞している。
同社が継続してトップを走っているのは、豊富なラインアップだけが理由ではない。単に自社製品をアピールするのではなく、メモリカードのリーディングカンパニーとして、常に市場全体を盛り上げることを考え、行動している。これが結果的に、ユーザーや販売店からの支持につながっているのだ。
例えば同社は、これまで「ハードにふさわしいカードを選んで欲しい」というメッセージを、継続して発信してきた。その理由は、「メモリカードは、ハードの機能を十分に発揮させる存在でなければいけない」と考えるからだ。安易に安いカードを選んだことで、ハードのもつ機能を十分に発揮させられなければ、投資がムダになるだけでなく、ユーザーの「使う喜び」も半減する。それは、次のハードへの投資に影響し、販売店にとってもマイナスだ。
同社は、「大切な写真や動画を記録するメモリカードは、慎重に選んでほしい」というメッセージをより広く伝えるため、2009年後半から、高機能メモリカードの利用促進キャンペーン「地球を記録に残したい。」を展開。2010年4月からは、その第2弾として、「大きく、残そう。」キャンペーンを実施した。「大きく、残そう。」では、動物写真家の前川貴行氏による高画質な動物たちの写真を、同社のウェブサイト、新聞・雑誌・交通広告、店頭展示のほか、大きなビジュアル広告を載せたトラックを都内に走らせて大々的に展開。高精細な写真や動画を撮ることのワクワク感を伝えることで、消費者に大容量メモリカードを使うメリットを訴えた。青柳氏は、「半年間キャンペーンを展開しただけでは、当社の伝えたいメッセージは根づかない。今後も徹底的にやっていく」と力強く語る。
サンディスクは、メモリカードの販売数量で世界No.1※のシェアを誇る。世界の主要なデジタル機器メーカーは、同社のメモリカードを使って互換性をテストする。そのため、機器との互換性は非常に高く、ユーザーの安心感は大きい。しかし青柳氏は、「これをストレートに消費者に伝えても、心に響かない」と考える。今後も、写真・映像を撮ることの素晴らしさを伝えながら、ハードに合ったメモリカードを販売店がすすめ、ユーザーが選ぶことができる環境づくりに注力していく。
※2009年Gartner調べ 
(左から)エクストリーム・プロ コンパクトフラッシュ、エクストリーム SDHC、ウルトラ・メモリースティック PRO-HGデュオ、microSDHC
アナリストコメントデジタルカメラ市場の復調に歩調を合わせて、5月以降、メモリカードも販売数量・金額ともに前年を上回るまで回復してきた。主流規格はSDやSDHCなどのSDカード。microSDなどの派生規格も含めると、すでに販売数量の89.0%を占める。こうしたわかりやすさも市況の好転を後押しした。また、近年増加している動画対応のデジタル一眼も、新たな需要を喚起している。
(BCNエグゼクティブアナリスト・道越一郎)