クラウド・ホスティングビジネスが力強く成長している。有力クラウド・ホスティングベンダーが次世代のクラウドサービスを相次いで増強。顧客のニーズを的確に捉えていることが原動力になっている。IT機器を自ら所有したり、自社内に設置することに負担を感じてきた多くのユーザーは、これまでもホスティングやハウジングを活用してきた。だが、ここにきて利便性のよいクラウド型のサービスが充実してきたことで、ユーザーの“所有から利用へ”の流れが、一段と加速している。
市場拡大の追い風を生かす
所有から利用への潮流は、ホスティングベンダーにとって力強い追い風になっている。ユーザーが所有するIT機器をホスティングベンダーのデータセンター(DC)に預けたり、ホスティングベンダーのITリソースをサービスとして利用するケースが増加。IT機器を所有しないクラウド方式は、ここ1~2年で急拡大しており、ホスティングベンダーの主戦場であるアウトソーシングやDCサービス市場の活性化につながっている。
ホスティングやハウジング関連のビジネスが売り上げの主要部分を占めるビットアイルの今年度(2011年7月期)連結売上高は、前年度比23.3%増の120億円、営業利益は同34.4%増の18億円の見通しと好調だ。同社は矢野経済研究所の調査をもとに、国内ITアウトソーシングサービス市場規模が2013年まで年平均4.5%伸びると分析。また、国内DCサービス市場規模は、IDCジャパンの調査をベースに13年まで年平均13%伸びるとみている。有力ホスティングベンダーのGMOホスティング&セキュリティやインターネットイニシアティブ(IIJ)の業績も、ともに増収の基調で推移するなど、市場拡大の波に乗るかたちでビジネスを伸ばす。

市場拡大の背景には、DC活用型アウトソーシングサービスの積極活用がある。ユーザーは、自社所有のIT機器で対応するのではなく、クラウドやホスティングサービスを使って対応するというかたちが増えているのだ。
クラウド新商材が目白押し
クラウド型のサービスは、既存のホスティングやハウジングに比べて拡張性や柔軟性にすぐれる。また、ITリソースの効率的な活用によってコストパフォーマンスも高い。ベンダー各社は、昨年から今年にかけて、相次いでクラウド型サービスの新規投入や、増強などを行い、この分野への投資を拡大させている。
ビットアイルは、2010年12月にクラウドサービス「サーバオンデマンドNEXT」を投入し、NTTPCコミュニケーションズは2010年10月から「WebARENA CLOUD9(ウェブアリーナ クラウドナイン)」をスタート。NTTコミュニケーションズはより規模の大きいユーザー企業向けのクラウド基盤「BizCITY(ビズシティ)」サービスを展開中だ。GMOホスティング&セキュリティは、エンタープライズ市場への本格参入と、海外進出するユーザー企業のITインフラ面でのサポートを掲げ、「GMOクラウド」を2011年2月に立ち上げた。向こう3年でクラウド市場におけるトップ企業の地位獲得を目指して、サービス増強に力を入れている。
クラウドやホスティングサービスを支えるDCの技術革新も目覚ましい。有力SIerの日本ラッドは、超省電力型DCの商用サービスを2010年10月から始めた。IT機器同様、大量の電力を消費する空調機を使わず、外気を発熱部に吹き付けることで除熱する技術を開発。DC全体の消費電力をIT機器で割った指標PUEで1.1を実現する。国内平均値はおよそPUE2とみられているが、限りなく1に近い数値を叩き出している。この方式で商用サービスを始めるのは、国内では日本ラッドが初めて。IIJは、外気冷却によるコンテナ型DCを島根県松江市に構築し、2011年4月の稼働開始を目指す。
ITリソースをサービスとして利用する顧客ニーズの高まりに、主要ホスティングベンダーは、クラウドやDCの技術革新で積極的に応えていくことで、ビジネス拡大につなげる流れが加速している。