ソフトバンクBBのコマース&サービス事業統括では、「IT」と「通信」を融合し、法人顧客に新しいビジネススタイルを提供する「Advanced ICT」を推進している。急速に普及するスマートデバイスを中核に、通信回線や企業に必要な商品・サービスを提供しているが、ここへきて実需が出てきたことから本格的に事業の推進を加速する。昨秋には、通信とITエンジニア部門を統合した「スマートソリューション推進室」を新設するなど、付加価値サービスやサポート体制なども順次拡充しているところだ。ソフトバンクBBが提供する商品を販売するパートナーと共同で顧客を開拓し、スマートデバイス時代を切り開く。

<第1章 スマートデバイスビジネスの方向性>

ソリューション関連のチームを新設

溝口泰雄
取締役常務執行役員
 コンシューマ市場で普及したスマートデバイスは、法人向けにも急速に需要が高まった。ビジネス端末として、可搬性や高速起動などで優位なスマートデバイスが、外出機会の多いビジネスパーソンを中心に普及した。

 ソフトバンクBBは、「Advanced ICT」の推進と並行して、パソコンやスマートデバイスを使って、自社で社内外のどこでもITシステムを利用できるシンクライアント環境を整備した。自らの活用実践を踏まえて、法人向けに展開している。

 溝口泰雄・取締役常務執行役員は、「この事業を推進してきたが、ここへきて実需が拡大した。当社の取引先である販売パートナーにとっては、新しいシステム案件になる」と、その有望性を語る。そして、単なる端末導入にとどまらず、企業システムの全体を俯瞰する提案が可能になってきたと強調する。

 2010年12月には、スマートデバイスとソリューションの開発・導入をワンストップで支援する「モバイルインターネットソリューションインフォメーションセンター」(MISIC)をオープンした。企業向けに導入相談や最新ニュース、ソリューション情報の提供、セミナー開催情報案内、導入事例紹介などを行っているほか、今後は販売パートナーに案件の紹介も積極的に行っていく予定だ。

 これに加えて2011年末には、事業全体を加速するため、スマートデバイスを中核として、通信・ネットワーク・クラウドサービスなどの複合案件の提案・支援を行う事を目的に「スマートソリューション推進室」も新設している。

企業システムは「ハイブリッド型」へ

 企業システムは数年前から、SaaS/クラウドの普及が加速してきている。オンプレミス(企業内)領域は「仮想化」へと進んでいる。溝口・取締役常務執行役員は「この先は、仮想化されたDaaSによるデスクトップ環境と、SaaS/クラウドが融合した『ハイブリッド型』がユーザーの利用環境として主流になる」とみており、「ハイブリッド型」が普及する市場展開に対応できるかが重要と判断している。

 こうしたシステム環境の変化にあわせて、今度は従来のデスクトップ環境だけでなく、スマートデバイスをはじめとしたマルチクライアント環境での付加価値サービスを提供することが求められているのだ。

 これに対応するために、同社はスマートデバイスの複数のOS向けに100製品以上の付加価値サービスを揃えた。スマートデバイス普及の原動力となったモバイルデバイス管理(MDM)やフィルタリングなどミドルウェアをはじめ、グループウェアやSFA(営業支援)/CRM(顧客情報管理)など、多彩なサービスを選択することができる。スマートデバイスの導入初期段階でこれらのサービスを使い、将来的には、それらと基幹システムとの連携・連動に関するシステム構築のニーズが一般化してくることは間違いない。


<第2章 ソフトバンクBB内のワークスタイル改革>

もう戻れない

 ソフトバンクBBは2年前、スマートデバイスをいち早く全社に導入した。また、東京の天王洲から現在のオフィスである汐留に移転する際、ソフトバンクグループが法人顧客向けに提唱する「ホワイトワークスタイル」を自社でも実践し、労働生産性向上を果たした。溝口・取締役常務執行役員は「キーワードは『クラウド、仮想化、ペーパーレス』の三点だった」という。同社が提供する付加価値サービスを社内で実際に利用することで労働生産性を高めることと働き方の変革に力点を置いていたと明かす。

 それまでは営業担当者が外出する際、提案書などを印刷し持ち歩いていた。机の上にはそれらの資料が山積みになっていた。この印刷物をつかった営業活動を見直し、営業スタイルの改善を試みた。

 具体的には、営業活動を展開するにあたって、iPadを使った法人向け営業支援サービス「Visuamall スマートカタログ」の利用を開始した。クラウド上で共有した提案書をiPadでプレゼンテーションするシステムにより営業効率を上げた。また、製品担当部門で作成し、適時アップデートする提案書により営業全体の質の底上げにも成功した。本システムでの提案書は単なる紙を電子化しただけではなく動画コンテンツと組み合わせており、すでに100本以上の動画付提案書をすべての営業担当者が活用している。

 次にノートパソコンやスマートデバイス、社内用のデスクトップパソコンなどの全端末をシンクライアント化するDaaS(Desktop as a Service)をオンプレミスのシステムに導入し、場所を選ばず、いつでもどこでも業務をこなせる環境を整備した。

 さらには、業務上において紙が介在していた受発注業務をSaaSの有効活用によって電子化し、ペーパーレスを実現したことにより、受発注の窓口はこれまで通り汐留オフィス(東京)で行い、入力作業は沖縄や大連(中国)のオペレーションセンターで集中的に行うことができるようになり、労働生産性を高めることができた。結果的には、大量にあった紙の書類も移転後は1人平均15cmまで減り、全体のオフィス面積を減らすことができたことで大幅な経費削減につながった。

 また、今後はウェブ会議システムや企業内SNSをさらに有効活用していく事で、社員の情報共有を進め、ユーザーへのサービスの質の向上に役立てていく。

 「これまで、様々なソリューションの社内導入にあたって、多くの課題もあったが、実践・改善を繰り返しながら進めてきた。またその経験の中で多くのノウハウを蓄積することもできた。ソリューションの導入により社員の働き方や意識も少しずつ変わってきたと感じている。今となってはもう以前の働き方には戻れない」(溝口・取締役常務執行役員)。

汐留オフィス(東京)には、DaaS環境でシンクライアント端末を使えるフリースペースがある。ソフトバンクBB社員は、これと同じ環境下で、社外にいてもスマートデバイスを使っても、社内と同じ業務システム環境が使える

<第3章 販売パートナーと推進するソリューション>

トータルソリューションで生産性を向上

 ソフトバンクBBのコマース&サービス事業統括では、創業以来30年にわたるIT商材流通の経験とノウハウを生かし、ユーザーに最適なICTソリューションを提案している。「スマートデバイスを中心としたトータルソリューションを販売パートナーと推進することにより、ユーザーの生産性の向上を支援していく」(溝口・取締役常務執行役員)ことができるのが最大の強みだ。

 ここ数年は、スマートデバイス関連商材がビジネス上のキーデバイスになってきている。そのなかでも、現在、ソフトバンクBBの商品・サービスで売れ筋になっているのは、セキュリティ関係商材だ。例えば、メール暗号化サービスの「Zenlok」(ゼンロック)をはじめ、MDM製品の「MobileIron」(モバイルアイアン)や、国内MDM市場シェアで半数を獲得するアイキューブドシステムの「CLOMO」(クロモ)など、スマートデバイスの初期導入段階で搭載すべきものだ。

 さらには、サーバー及びクライアント環境の仮想化や、スマートデバイス環境に必要なサービスのSaaS提供、通信事業者としてのセキュアな回線提供などをトータルに提案できるのはソフトバンクBBだけだ。

 販売パートナーは、同社からの商品・サービスの提供はもちろん、インフラ提供、サポート体制、自社導入によるノウハウなどすべてを活用することができるわけだ。

 ここにきてソフトバンクBBから商材を仕入れスマートデバイス関連のビジネスを展開する販売パートナーが急激に増えてきた。販売パートナーにとって収益性の高いビジネスにするには、次のステップが重要になる。それは付加価値ソリューションを提供する過程での、アプリ開発や運用保守、あるいは同社で導入した仮想環境やDaaSといった基幹システムに直結するビジネスを生み出すことだ。「オンプレミス(企業内)システムからクラウドを使ったモバイル端末利用まで、一貫したソリューションを提供する」という方針を貫く。商品・サービスに加え、システム全体の構築に対応できる支援体制を順次整備し、今後も販売パートナーとともにユーザーのビジネスの成功を支援していく。