生活家電の販売を手がける上海藍極風商貿(PUREWIND、盛明総経理)は、店舗数の拡大や扱う商品の種類と量の増加につれて、従来、手作業で行っていた在庫や受発注の管理体制に限界がみえてきた。そこで、恩梯梯数据英特瑪軟件系統(上海)(大利秀幸総経理)が提供するシステム共通基盤「intra-mart」を活用し、情報管理をシステム化。さらに、中国のメッセンジャーアプリ「微信(WeChat)」上で、顧客の受注受付や販促情報のプッシュ通知ができる連携システムを構築した。社内の管理体制を強化する「守り」と、売上拡大につながる「攻め」のIT環境の両立を実現したのだ。
「守る」だけでは割に合わない

盛明総経理 上海藍極風商貿は、空気清浄機やアイロンといった生活家電の販売を手がけている。上海と蘇州のショッピングモール内に、約20の実店舗を構えているほか、アマゾンや京東といったECモール上でも商品を販売している。主なターゲットは、一般消費者の富裕層で、とくにスウェーデン製の空気清浄機「Blueair」は、同社を代表する売れ筋商材だ。空気清浄機は、安定して清浄な空気を保つために、定期的にフィルタを交換する必要がある。交換用フィルタの販売は、ストックビジネスとして上海藍極風商貿の大きな収入源となっている。
会社は2007年に設立し、これまで順調に事業を拡大してきた。しかし、規模が拡大するにつれて、管理体制には懸念も。上海藍極風商貿では、店舗ごとに異なる種類の商品を販売しているが、扱う商品の種類や量が増加したことで、受発注や在庫の情報を、従来のようにすべて人手で管理することが難しくなってきたのだ。このままでは、生産性の低下は避けられないうえ、最悪の場合は作業ミスの恐れもある。経営側の視点からみても、現在の状況を把握するのに時間がかかるようでは、事業計画を立てにくい。社内の管理体制を強化するためには、システム化が求められた。
また、盛総経理は、「ただ管理強化を目的にシステムを導入するのでなく、せっかく投資を行うならば、売上拡大につなげたいと考えた」と当時を振り返る。IT投資には多額の資金がかかるが、経営者の立場からすれば、ただ「守り」を固めるだけでは割に合わないというわけだ。導入するシステムには、売上拡大につながる「攻め」の要素も求められた。
その後、盛総経理は、いくつかのITベンダーを検討。最終的に、恩梯梯数据英特瑪軟件系統(上海)が提供するシステム共通基盤のintra-martを活用して、受発注や在庫管理のシステムを構築することに決定した。
売上拡大への提案が決定打に
盛総経理がintra-martを選択した理由は、主に二つある。一つは、豊富な導入実績に裏付けされた高い信頼性をもつシステムであること。今年9月時点で、intra-martのグローバルでの導入実績は4000件を超えた。ウェブベースのシステム共通基盤で、拡張性と柔軟性に富んでいることが高く評価されて、中国での実績も125社と急拡大している。

「微信」上の「微商場」で交換フィルタを手軽に購入できる もう一つは、提案の内容だ。盛総経理は、「他社ベンダーは、自社商品を紹介することに終始していたが、intra-martのパートナー企業は、売上拡大につなげたいという当社の要望に沿った提案をしてくれた」と語る。具体的には、中国のメッセンジャーアプリである微信の活用だ。微信上に、上海藍極風商貿の公式アカウントを作成し、会員登録した顧客が微信を通して商品を注文したり、在庫状況を確認したりすることができるintra-martの連携システムを構築するというもの。キャンペーン情報などをプッシュ通知を送信する機能なども盛り込んだ。盛総経理は、「実店舗とECモールだけでなく、新たな販売チャネルがつくれることを提案してくれた」と語る。
システムは、15年に順次稼働を開始し、すでに成果が出始めている。例えば、在庫や受発注の情報をリアルタイムに把握して、店舗で顧客に状況を伝達できるようになったことで、顧客からの電話での問い合わせ件数が減った。盛総経理は、「以前は社内に電話の専任者を置いていたが、これが不要となり、有効に人員配置ができるようになった」と説明する。また、すべての商品にシリアル番号を割り当て、入荷から出荷までの状態を管理することで、販売した商品に故障があった際にも、すぐにトレーサビリティを確保して確認をとることができる。
微信との連携システムは、10月に運用を開始し、わずか1か月で登録会員数が1000を超えた。今後は、空気清浄機を購入後、一定の期間がたった顧客に対して、交換フィルタの購入を促すプッシュ通知を送信するなどして、売上につなげる考えだ。盛総経理は、「将来は、交換品の売上の50%を微信経由で賄いたい」と意欲を示している。