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<サーバーメーカー座談会2015>クラウド時代に対応した ビジネスモデルの確立を目指す 次のテーマを見据えてパートナーとの連携強化へ

2015/12/24 19:56

週刊BCN 2015年12月21日vol.1609掲載

●SMBや地方で需要の掘り起こしを パートナー施策の強化が課題

──この業界では他社に負けない、また力を注いでいる業界や分野などはありますか。

渡辺 当社の「Express5800」シリーズは、販売パートナー様を経由した販売比率が高く、販売パートナー様のお客様の大半はSMBとなります。「スリム型」「静音」などお客様の需要を反映した製品・企画・提案には強みがあると考えています。また、官公庁・自治体からも多くの案件を獲得しています。

浜田 BTOを中心に小口で購入できるという直販モデルを長く続けてきたため、当社もSMBのお客様のニーズは十分理解しています。一方、これからは販売パートナーの方々を通じた拡販を本格的に進めていきます。業界としてNFV(Network Functions Virtualization)ソリューションで通信キャリアに強みがあったり、SDSなどの「Software-Defined」で強みをもっております。

木村 当社も通信事業者、それと業界を問わずHPCとして使っていただくというのが比較的強いですね。サービスプロバイダについては、クラウド化でISPなどにサーバーが集約していくことで購買力が高まっています。反面、今後は価格への要求がさらにシビアになってくる。

阿部 クラウド化が進むなかで、当社もビジネスの強化を進めています。とくに力を入れているのは、テレビCMのなかで紹介しているようなICTを活用した農業クラウドやヘルスケア分野などの新規領域におけるビジネスです。これらを起点に多くの課題を抱える地方などで、ICTの新しい活用をご提案し、新規のサーバー需要を掘り起こしたいと考えています。

──逆に今後の課題とされていることはありますか。

浜田 パートナー様とのビジネス強化です。今年8月の新社長就任に伴ってパートナー様への支援体制を強化し、施策や人員も増やしています。米本社もその活動を後押ししています。パートナー様と新しい市場を開拓して、必ず成果に結びつけていきます。

木村 販売パートナー様を経由したビジネスが7~8割を占めていますが、分社化によって販売パートナーの方々にとっては顔がみえづらくなっているかもしれません。そのため、販売パートナーの方々としっかり顔をつなぐための施策に取り組んでいきます。セミナーなど、コミュニケーションイベント、コラボレーションについては継続して取り組んでいきます。

阿部 当社は、パートナービジネスに強みがあると自負していますが、一方で課題なのは、それぞれ得意分野をもった販売パートナー様にとって当社サーバーを含めたソリューション提案を存分に行っていただくための環境づくりです。販売パートナー様の商材を含めて当社工場での設定・キッティングサービスを実施するなど連携を深めることで、当社がこれまでアプローチできなかった顧客をもつ販売パートナー様の開拓にもつなげていきたいと考えています。

渡辺 当社も富士通さんに近いでしょうか。いわゆる箱売りからソリューション提供へ転換していくための施策に力を入れています。現在、お客様のマイナンバー対応に向け、「マイナンバー安心セット」のようにサーバー単体ではなくソリューション提供のアプローチをしています。さらに、4月に新設した「パートナーズISVビジネスセンター」を活用し、販売パートナー様と連携した共同商品企画、動作検証、共同プロモーションなどを実施しています。

●クラウド時代だからこそサーバーは必要 ハイブリッド環境の整備がカギ

──クラウド時代におけるサーバーの必要性を考えたいと思います。クラウドビジネスとサーバービジネス、二つの違いをどのようにお考えですか。

木村 オンプレミスからクラウドになっても、購入者が変わったというだけで、サーバー事業としては変わりはないと捉えています。一般企業100社の方々に販売していたサーバーが、1社のクラウド事業者に集約しただけですから。ただし、海外にサーバーを置かれると販売に影響しますし、ホワイトボックスの流行という影響もあります。一方、販売パートナー様にとっては、ビジネスモデルや売り先を変えるなど構造の転換も必要になるでしょう。そのなかで存在感を高めるのは、特徴的なソリューションや特定業界に強みをもつ企業だと考えています。

渡辺 クラウド化が進むと、データセンターへのサーバー導入は加速しますが、その一方で、販売パートナーの方々にとっては「何で儲けるのか」ということが問われることになります。本当は、オンプレミスのほうがビジネスとして旨みがある。ところが、お客様はシステムの導入にあたって、必ずクラウドを検討材料に入れるようになっています。そこで、われわれメーカーも、販売パートナー様やお客様にどのような提案ができるかが問われることになります。これまでのオンプレミスをベースにしたビジネスモデルから、クラウドも活用した新たに儲けるためのビジネスモデルを確立していかなければなりません。具体的には、「システム運用監視代行」などサービスの提供は一つの手だと考えています。メーカーとして、そうした新たなサービスやモデルを提案できないと、この先、業界としても成り立たなくなるのではないか、という危機感があります。

 NECでは、昨年、こうしたビジネスモデルの変換に向け、従来のオンプレサーバーと同様の形態で売り切る新しいカテゴリ製品、クラウドをパッケージ化した「Express5800/CloudModel」の販売を開始しました。

阿部 サーバーとクラウド、オンプレミスとクラウドというより、ハイブリッドを含めてお客様のニーズにあわせた使い分けにどのように対応するかがポイントと考えています。この場合、(NECの)渡辺さんがおっしゃっていた「システム運用監視代行や、LCM(Life Cycle Management)が一つのポイントになるのではないでしょうか。ハイブリッド環境でシステムが分散すると、運用管理の負担は増すため、システム部門には管理業務の効率化が求められます。また別の課題として、この環境変化のなかで、われわれメーカーの販売量が変わらないとしても、販売パートナー様がビジネスを維持できるかという点へのケアも必要と考えています。

デル
浜田裕之
エンタープライズ・ソリューションズ事業本部
製品マーケティング本部長


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外部リンク

NEC=http://www.nec.co.jp/

デル=http://www.dell.co.jp/

日本ヒューレット・パッカード=http://www.hpe.com/

富士通=http://jp.fujitsu.com