バリューアディッドディストリビュータとして、グローバル大手6社のストレージを取り扱うネットワールド。各社には競合する製品もあるが、特性をしっかり把握することで、最適なストレージを提案できる体制を整えている。“ストレージといえばネットワールド”といわれるのは、そのためだ。ではなぜ、ネットワールドはストレージに注力するのか。ストレージ事業の礎を築いた森田晶一代表取締役社長に聞いた。

一つの成功が次の成功を生む

――ネットワールドではグローバル大手6社のストレージを取り扱っていることは、前回の予告編でうかがいました。それ以外にも、国内ではオンリーワンの商品も数多く取り揃えています。そのような独自のスタンスは、どのような戦略のもとに進められているのでしょうか。
 
森田 必ずしもオンリーワンにこだわってはいません。オンリーワンになるかどうかは、事実上、メーカー側のフェーズで変わってきます。起業後間もない時点では、日本市場で複数のディストリビュータと契約する体力がないので、結果的にオンリーワンになるということです。

 海外のメーカーは、IPOやM&Aを意識していますので、独占の代理店契約をほとんどしません。出資して独占契約というケースはありますが、それは例外です。そのため、当社はライバル企業がきても、あまりインパクトを感じないビジネスモデルにしているんですよ。

――どういうことですか。

森田 ライバルが増えれば、基本的には市場も拡大しますので、先行者利益を生かしてシェアを伸ばせばいいのです。ライバルが増えても、当社の価値を提供できます。逆にライバル企業が増えるということは、市場がかなり伸びている証拠でもあります。自分たちには、その市場に対する見る目があったんだなと。もちろん、ライバル企業が増えると当社の営業担当者は大変でしょうけど。

――先行者メリットを取りにいくところには、こだわりがあるわけですね。ただ、そのような商材は簡単にはみつからないと思います。どのようにアンテナを立てているのですか。

森田 1990年代の後半くらいから、世界的にVAD(バリューアディッドディストリビュータ)が認められるようになってきました。とくに、米国では存在感を高めています。そのおかげで、米国のITベンダーが日本に上陸するときに、日本のVADを探すわけです。

 当社は、シリコンバレーに拠点をもっていませんし、現地の情報を収集する体力もありません。シトリックス・システムズとの取引から仮想化への取り組みが始まって、ヴイエムウェアとの縁もあり、それらが蓄積されて今の状況があります。

――当初は、どのようなことがきっかけで、シトリックス・システムズ、そしてヴイエムウェア、EMCと広がっていったのですか。

森田 犬も歩けばという感じで、ほとんど偶然です。シトリックス・システムズは、コンサルティング会社の紹介。セミナーに呼ばれて行ってみたら、「これはおもしろい」と思い、すぐに企画書をつくって交渉し、パートナーにしていただきました。ヴイエムウェアは当社のパートナー企業から、おもしろい技術があると教えていただいたんです。その翌日に電話したのですが、まだ、ヴイエムウェアの社員数が80人くらいのときでした。99年です。電話をしたら、グローバル担当がいない。何とか営業担当者につないでもらったのですが、カリフォルニア州担当だと(笑)。

――そこから始まるのですね。

森田 出会い頭でしたが、結果的に大成功でした。VADに大切なのは、最初は出会い頭でもいいから、取り扱った商品を絶対に成功させるということ。成功させなければだめなんですよ。成功させると次がくる。成功させられないと次がこない。

 だから、私が社員にいうのは「取り扱う商品を成功させることが、次の出会いを生む」ということ。例えば、転職した人が「あのときはネットワールドが支えてくれた。今度も一緒にビジネスをしよう」となりますから。

仮想化からストレージへ

――ストレージへの取り組みには、どのようなきっかけがあったのですか。

森田 たまたま縁のあったヴイエムウェアが仮想化で大成功します。そのヴイエムウェアの人にいわれたのが、「ネットワールドはストレージに弱い」ということです。

――ヴイエムウェアがきっかけだったのですね。

森田 仮想サーバーは、ストレージ上にあるわけですよ、いろいろな意味で。データもストレージ上にある。その仮想サーバーとストレージの関係は、ものすごく深いのです。そのため、ストレージのソリューションをきっちり把握しておかないとダメだというわけです。ちょうどその頃、EMCがヴイエムウェアを買収したので、その縁でEMCとのおつき合いが始まりました。

――EMCとはヴイエムウェア買収後でしたか。

森田 当社は、ヴイエムウェアのトップディストリビュータですから、ぜひということに。EMCが軌道に乗ると、次はネットアップから、米本社がディストリビュータモデルを採り入れるということで取り扱いました。当時の日本のディストリビュータは、一次店や二次店に卸す一方で、エンドユーザーへの直売もするというディストリビュータモデルでした。ところが、ネットアップは当社のように直販をしない本当のディストリビュータを求めていたわけです。しかも、当社はヴイエムウェア製品を取り扱っていて仮想化を熟知しているということで、とんとん拍子で進みました。苦労もありましたが、半年後には確実にビジネスになるという感覚はありましたね。

――EMC、ネットアップに加えて、なぜティントリも開始したのでしょうか。

森田 仮想化の流れが、それまでのブロックストレージのみの状況から、NASも対象になっていました。EMCもNASをもっていましたが、ネットアップにはEMCとは違った強みがある。その後に取り扱うようになるティントリも、第三のストレージとよばれる仮想化環境向け製品をもつユニークな会社です。だから、EMCやネットアップにも、ご理解をいただけました。

――それが今では6社のストレージ製品を扱っている由縁でしょうか。

森田 ある時、当社のイベントで、私からVADは一つの転換期にあるというお話をさせていただきました。どういうことかというと、ITに関連する環境がものすごく多様化していて、SIerやリセラーが悩んでいるんです。SIerやリセラーは、ITインフラだけでもカバーする範囲が広い。PCやサーバー、ネットワーク、プリンタ、そしてストレージがある。その上に、ミドルウェアのようなインフラが必要で、場合によっては、アプリケーションも必要になります。インフラだけでも多様化しているので、この深いスタックを横に広げていくのは、ものすごく大変だと思うんです。

 だから当社は積極的に、いい選択肢を増やしていきます。当社のお客様であるSIerやリセラーのメリットになるからです。何が最適な選択肢となるかの情報は、当社が提供します。スマートチョイスといいますが、個別ニーズに最もフィットするスマートな選択肢をご提案します。

――確かに、ストレージの検証は手軽にはできないため、最適な提案をするための情報があると、SIerやリセラーはありがたいですね。

森田 もちろん、メーカーをないがしろにはしません。「すべてのメーカーの売り上げを伸ばす」。これをコミットしています。少なくとも、そこは評価していただいています。

 昨年の8月にストレージベンダー6社にご参加いただき、パネルディスカッションを実施しました。立ち見が出るほどの人気で、そのときに思ったのは、やはり各社とも特徴があるんです。こういうときにはここという感じで。

――6社のストレージを扱っているが、ただ集めたわけじゃないということですね。

森田 並べて比較することで理解が深まります。だから、スマートな選択肢をもつことには、意味があると思うのです。

 EMCとネットアップと、ティントリ。IBMのストレージ製品はもともと扱っていましたし、オールフラッシュでピュア・ストレージ。そして、最も特徴のあるハイブリッドストレージ製品をもつニンブルストレージ。お客様のニーズも多様化していて、こうした個性的なソリューションも必要とされています。

VADには技術力が不可欠

――VADでありながら、ネットワールドではSE(システムエンジニア)を多く抱えています。そこには、どのような意図があるのでしょうか。

森田 米国のVADには多くのSEが活躍していて、そこを見習いました。IT業界では大手メーカーのほとんどが米国企業ですが、同じ国内にVADも存在するわけです。日本なら、米国のメーカーと距離や言葉の壁があるのでVADの必要性がわかりやすい。でも、米国内で成り立っている。それが不思議だったのです。

 その答えは、マルチベンダーなVADであるということ。多くのメーカーの製品を扱うわけですから、メーカーにはまねができない。そして、マルチベンダーであるには、技術力が必要とされます。ポイントは、やはり技術なんですよ。だから、VADにはSEが必要ですし、それが現在ではうまく機能していると実感しています。

――SIerやリセラーが利用できる施設を無料で提供していますが、その狙いを教えてください。

森田 プリインテグレーションセンターという施設をつくりました。出荷前の検証や、出荷するシステムの組み立てなどに活用していただいています。SIerやリセラーで組み立ての場所がなかったりするため、とても人気で常に満員御礼の状態です。

――貸出検証機にも力を入れておられるそうですね。

森田 基本的にはさまざまな選択肢を提案しているので、たいがい気に入っていただけるんです。ただ、お客様も真剣に評価されるので、貸出検証機を用意しているのですが、技術的にキャッチアップできていないため、当社のSEがお手伝いをするというサイクルになっています。こういったことは、今後も拡大していきたいと思っています。

――さまざまなメーカーの商品を扱っていますが、扱うにあたっての基準はあるのですか。

森田 人、メーカーの本社の人です。トップの方とお会いしたときに、話をよく聞くようにしています。そこに哲学があるかどうか、ロマンがあるかどうか。哲学がないと、おもしろさがない。仮に成功しなくても、哲学をもっているメーカーの製品を扱うと楽しい。その楽しさを味わえるメーカーさんとつき合いたいですね。

――ネットワールドが開拓者精神を失わないのは、そういうところにあるのでしょうね。

森田 われわれは、同じ思いをSIerやリセラーとシェアしたいと思っているんです。哲学を感じて、楽しさをシェアできれば、仕事が楽しい。社員も楽しいと思うんです。
 

編集長の眼 開拓者精神を忘れないネットワールド

 出会い頭で始まったとする、ネットワールドのストレージ事業。出会い頭とはいえ、ストレージ事業で成功し、それが次の成功を呼んでいる。
 

 今では、ストレージといえば、ネットワールドである。しかも、すべての製品を比較検証できる環境と、技術面でサポートできるSEを抱えている。実に社員の25%がSEだという。ディストリビュータとしては、それだけでも十分にSEが多いと感じるが、営業部門とマーケティング部門にも技術に強い社員を置いている。ネットワールドの強さの理由が、そこにある。では、製品を比較検証できる環境は、どのようになっているのか。次の回でリポートする。