オービックビジネスコンサルタント(OBC、和田成史社長)は、いよいよ基幹業務ソフト製品群「奉行シリーズ」の本格的なクラウド化に踏み出した。先行してSaaS化を進めてきた小規模事業向け基幹業務ソフト「奉行J」に加え、今年2月、主力の中堅・中小企業向け「奉行シリーズ」の勘定奉行・給与奉行も、ついにSaaS版をリリース。これを契機に、SaaS版奉行シリーズ製品の統一ブランドとして「奉行クラウド」を市場に打ち出し、その傘の下、奉行シリーズ製品全般のクラウドシフトを進めていく。

chapter 1  加速する基幹業務システムのクラウド化
奉行クラウドでパラダイムシフトの波に乗る

段階的に進めてきた
クラウド化


 まずは、OBCのクラウド戦略の歴史を振り返ってみよう。同社は、クラウドの市場への浸透度合いや、奉行シリーズをユーザーにデリバリするパートナーのビジネス状況などを慎重に見極め、段階的なクラウドシフトを進めてきた。
 

和田成史
社長

 最初にクラウド化への一歩を踏み出したのは、2014年のことだ。まずは、奉行10シリーズを主要なクラウドベンダーのIaaS上で動かすことができるようにした。和田社長は、「同一製品をクラウドとオンプレミスの二つの環境で利用することができる、両モード対応製品として打ち出した」と振り返る。対応パブリッククラウドも徐々に拡充し、今では「Microsoft Azure」、「IBM Cloud」、「BIGLOBEクラウドホスティング」、「クラウド・エヌ」、「ニフクラ」、「FUJITSU Cloud Service K5 NC」、「Amazon Web Services」、「NEC Cloud IaaS」と8種類まで増やしている。

 奉行シリーズのIaaS対応にあたっては、パートナーが対応パブリッククラウド上で運用管理を手がけるモデルと、OBC自身が「Microsoft Azure」上で環境を構築、運用、サポートまでを手がけるモデルを用意したが、ビジネスの中心となったのは前者だ。パートナーにとっては、物理サーバーではなく、パブリッククラウドの仮想サーバー上に運用環境を構築するという点が異なるだけで、オンプレミスと同じプロセスで提案できるというハードルの低さが魅力となった。一方、ユーザーに対しては、IaaSの利用によりサーバーの運用管理の負担から解放するというメリットを提供した。

 続いて、OBCがクラウド戦略の第2ステージと位置づけているのが、15年の「業務サービス」の市場投入だ。業務サービスは、基幹業務ソフト市場を主戦場としてきた同社が、従来の基幹業務ソフト(=奉行シリーズ)ではカバーしきれない業務を支援するアプリケーションをSaaSとして提供するものだ。マイナンバーの収集から運用までを包括的に支援する「OBCマイナンバーサービス」、ストレスチェック制度対応を網羅的にカバーする「ストレスチェックサービス」、さらには「勤怠管理サービス」や「労務管理サービス」、「年末調整申告書サービス」、タレントマネジメント手法を取り入れた「人材育成サービス」などもラインアップしている。奉行シリーズと同様、パートナー経由で販売しているが、例えばマイナンバーサービスは、1万5000社、400万人のユーザーが利用している。パートナーにとっては、基幹業務ソフトである奉行シリーズを補完する製品であり、奉行シリーズとは異なる顧客接点を得ることにもつながり、ビジネスの機会を広げた商材群といえそうだ。

クラウド業務ソフト市場が
爆発する時


 そして今年2月、「奉行クラウド」がいよいよ登場したが、これは、OBCのクラウド戦略の第3ステージの幕開けを告げる動きだ。同社は、奉行クラウドをクラウド基幹業務ソフトの統一ブランドとして打ち出し、奉行シリーズ製品のSaaS化を本格的に推進していく方針を明らかにした。奉行クラウドの第一弾としては、先行してSaaS形態で提供していた小規模向けの「奉行J」と合わせ、会計の「勘定奉行クラウドi」「勘定奉行クラウドJ」、給与計算の「給与奉行クラウドi」「給与奉行クラウドJ」をラインアップしたかたちだ。

 このタイミングで奉行クラウドを打ち出した理由について、和田社長は、「今がまさに中堅・中小企業向け基幹業務ソフトのクラウド化が一気に進むタイミングだと判断した。これまでの経験上、新しい技術の普及は10%を超えると加速度的に広がっていく。この機を逃すことはできない」と説明する。和田社長の判断には、明確な根拠がある。まず、OBCは昨年、全国主要都市で開催したプライベートイベント「奉行フォーラム」で、1万人の参加者にアンケートをとった。その結果、基幹業務システムをクラウドで使いたいというユーザーが初めて半数を超えた。「一昨年までは、クラウド化しようとは思わないというお客様が7割ほどだった」(和田社長)ことを考えれば、この1年で市場のニーズが大きく変わったことがわかる。さらに、パートナーについても、商談の7割がクラウド製品に関するものになっているという結果も出た。

 さらに和田社長は、小規模事業向けの基幹業務ソフト市場でクラウド化の動きが先行したことも、中堅・中小企業向け基幹業務ソフト市場に影響を与えているとの見解を示す。freeeやマネーフォワードといった新興ベンダーが小規模事業向けのクラウド業務ソフト市場を切り開いたが、この市場の圧倒的なトップベンダーである弥生もクラウド化に動いている。「彼らの案件がアップサイジングしていて、従業員数100人程度までの企業に、クラウド基幹業務ソフトが急速に広がっている。また、中小零細企業がビジネスパートナーとして頼る会計士・税理士も、クラウドでの顧問先とのリアルタイムな情報共有をベースにしたビジネスの改革を進めている」(和田社長)とみているのだ。

 奉行クラウドは、まさにこうしたニーズを捉え、中堅・中小企業のバックオフィス業務のさらなる価値、生産性の向上を支援していくための製品だという。和田社長は、「ITインフラの運用・メンテナンスの負担からの解放や、常に最新のソフトウェアを使うことができるといったクラウド特有のメリットを享受できるのはもちろん大きい。それに加えて、企業ネットワークを超えたコミュニケーション、コラボレーションの実現や、業務処理のさらなる自動化、強固なセキュリティなど、奉行クラウドは多くの付加価値を提供できると自負している。第5世代通信システム(5G)が実用化されれば、より多くのデータをクラウド上でスムーズに扱えるようになり、基幹業務ソフトもほぼ完全にクラウドで運用する市場になっていくだろう」と話す。奉行クラウドは、そうした近未来の環境変化も見据えたロードマップにもとづき、世に出た。
 
5G時代を見据え、マイクロソフトの
最新テクノロジーにフォーカスしたSaaSモデル
「奉行クラウド」

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