201804262041_3.jpg エレコムグループは、B2B市場の開拓を本格化している。この領域を成長に導くうえで、もっとも重要視しているのが先端技術の取り込みだ。その中核的な会社に位置づけられているのが、エンジニア集団のディー・クルー・テクノロジーズ(DCT)。高性能なアナログ回路や最先端のLSI開発、次世代の組込み技術などを手がけ、業界では知られた存在だ。最近ではIoT時代に向けた次世代センサや、新薬開発のための超高速プロセッサの開発などの実績がある。今後はグループ各社の製品やソリューションのコア技術開発も手がける。DCTの石川明彦代表取締役CEOに、グループ内での役割を聞いた。

IoT分野のセンシング技術担う

 ディー・クルー・テクノロジーズ(DCT)は、2003年6月に大手通信メーカーのエンジニアらが独立して設立。同社はアナログやRF(Radio Frequency=高周波)、デジアナ混載LSI(Mixed Signal)、システム基板、組込みファーム、そして人工知能(AI)に通じるアルゴリズムなどの分野で、最先端技術をもつエンジニア集団だ。エレコムグループに加わったのは17年6月。それからはエレコム本体やグループ会社のハギワラソリューションズと連携し、革新的な製品やソリューションの開発に取り組んでいる。今後は、ロジテックやDXアンテナも含め、グループ内の連携をさらに深めていく。
 
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ディー・クルー・テクノロジーズ
石川明彦
代表取締役CEO

 DCTの技術力の高さは、顧客や開発実績で一目瞭然だ。例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からは、次世代IoTセンサといわれる「トリリオンノード・エンジン」の開発を受託した。理化学研究所とは、新薬開発時の創薬シミュレーション時間を劇的に短縮するために、スーパーコンピュータ(スパコン)を凌駕する計算速度をもつ専用プロセッサを共同開発中である。石川代表取締役CEOは、「当社に依頼がくる案件の9割以上は、仕様書が存在しない。開発委託先に困った際の“駆け込み寺”として業界では知られた存在だ」と、これまでに大手半導体や電機メーカーなどの開発・研究部門で手に負えない案件に対し、同社の先端技術で解決策を導き出してきた。

 産業用途で同社がとくに注目を集めているのがメディカル分野だ。某医療機器メーカーの委託を受け「超音波診断装置」に使われるLSIを開発した。例えば、内視鏡の先端にこのLSIを付ければ、体内から臓器の鮮明な画像を観測できる。ここにはDCTが「インテリジェント・センシング・モジュール(ISM)」と呼び、開発を強化している最先端のセンサ技術が応用されている。「内視鏡の先端に取り付けるには、より小型化する必要がある。だが、小型化すると先端が高熱になる」(石川代表取締役CEO)と、困難な課題を解決した技術の特許を申請中だ。

グループの「テクノロジー・エンジン」に

 DCTが加わったことで、グループ全体の技術力は、質・量ともに高まった。石川代表取締役CEOは、造語で「合わせ味噌」と表現しているが、グループ会社の企画担当者とDCTのエンジニアが同じ席でアイデアを募り、その実現方法を議論することで、グループ各社のB2B、B2Cの製品や、ターゲット市場を見据えた新しい製品やソリューションの開発に加え、現行製品のインテリジェント化を開始している。

 例えば、グループ会社がもつ製品やサービスを活用したソリューションとして「工場見守りシステム」がある。工場内に切れない無線ネットワークを張り巡らせ、DCTが開発したモジュールで生産設備や人に付けたセンサから様々な情報を収集するシステムだ。「当社は、某メガネ会社のセンサ搭載メガネを開発してきた。この技術を応用して、人に小型センサを付け、工場の作業員の行動を解析してメンタルヘルスに役立てたり、適切な動線を導き出し、作業を効率化できる」(石川代表取締役CEO)と、DCTのセンシング(感じて)、アルゴリズム(処理して)、通信(つなぐ)技術を融合させたシステムの製品化に成功した。
 
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 このほかにも、DCTの技術を合わせた製品開発は多岐にわたる。そして、今後もグループ会社のDXアンテナが提供する同軸線モデムに、部屋内の様々なセンサ情報を収集できる機能を追加して付加価値を高めたり、ハギワラソリューションズのSSDなどの記憶装置を大容量化し、その記憶装置をロジテックのカスタムPCや堅牢PCに搭載するといった製品化が可能だ。

 石川代表取締役CEOは、「当社は、エレコムグループの『テクノロジー・エンジン』になる。そして、世界のエレコムにすることが最大のミッションだ」と、グループがもつ製品・ソリューション、販路などを最大化するため、貢献していく考えだ。とくに、B2B市場を切り拓くうえで、IoT需要の拡大に応える技術開発能力を備えるDCTの役割は重要だ。「5年後に一つのブレイク・ポイントをもっていく。当社が得意とするスパコンやAIなどを使った付加価値の高い製品が登場することになる」(同)と、将来に向けた技術力の研鑽と、技術者の採用を積極的に推進している。