オンプレミスとクラウドの併用によってITインフラの複雑化が進むとともに、システムが蓄積するデータの価値が高まっている中、「セカンダリストレージ」「次世代バックアップ」と呼ばれる仕組みを通じて、従来とは異なる方法論でデータのバックアップやマネジメントに取り組むことの重要性が注目されつつある。ネットワールドが2018年12月18日に東京都千代田区の秋葉原UDXで開催した「次世代バックアップソリューションDay 2018 ~ガチンコ対決~」では、Actifio、Cohesity、Rubrikという次世代バックアップベンダー3社の代表者が参加し、自社の技術や製品の優位性についてアピールした。

似ているようで微妙に違う?「次世代バックアップ」とは

 ネットワールドのイベントで恒例の「ガチンコ対決」は、来場者によるLiveQAシステムへの投票で、ベンダーの優勢、劣勢が即座に可視化されてしまう緊迫感のあるスタイルで行われる。第1ラウンドとなる各社10分間の自社紹介は、投票で発表順が決定された。

 イベント開始前の段階で、最も来場者の関心が高かったのはCohesityだ。同社の創業者兼CEOは、ニュータニックスの創業に携わり「ハイパーコンバージド」の概念を提唱したことでも知られるモヒット・アロン氏。Cohesityは2013年の設立で、15年に初の製品を出荷した新興ベンダーだ。製品はアプライアンスと、各社のPCサーバー、仮想化環境で動作可能なソフトウェアの二つの形式で提供されている。
 
Cohesity Japan
シニアセールスエンジニア
岩本直幸氏

 Cohesity Japanでシニアセールスエンジニアを務める岩本直幸氏は、同社の特徴となる技術の一つとして「SpanFS」と呼ばれる独自の分散ファイルシステムを挙げる。Cohesityでは、これまで企業内でサイロ化された状態で蓄積されていたデータベース上のデータ、開発・テスト向けのデータ、オブジェクトデータといったあらゆるデータを「Cohesity DataPlatform」と呼ばれる単一のプラットフォームに統合する。SpanFSはCohesity DataPlatformのコアとなる技術であり、大量のデータを複数のストレージに分散して、仮想的な管理を可能にする。「グーグルのデータ管理手法を取り入れて構築された分散アーキテクチャーであり、高いスケーラビリティーと管理性を備える」(岩本氏)という。

 Cohesityでは、同社のソリューションを「統合セカンダリストレージ」と呼んでいる。運用中のアプリケーションや用途ごとのデータを個別に管理する「プライマリ」なストレージに対し、同期されたデータを統合して管理できる「セカンダリ」のストレージという意味合いだ。岩本氏は想定される用途として、バックアップソフトの形式に縛られない環境でのデータバックアップやデータ保護、ファイル共有、テスト・開発環境の構築を挙げ、「将来的にはアナリティクスのニーズにも対応していく」と語った。
 
Actifio Japan
CTO
高峰 康氏

 2番手で登壇したのは、Actifio JapanのCTOである高峰康氏。冒頭、高峰氏は「Actifioのソリューションはセカンダリストレージでもバックアップソリューションでもない」と強調した。同社が提唱するのは「コピーデータ仮想化」と呼ばれる方法論だという。企業には常に追加や更新が繰り返されている「本番」のデータと、「それ以外」のデータが存在する。それ以外のデータとは、バックアップであったり、開発環境向けであったりと、用途ごとに保存形式やストレージが異なっているのが一般的だ。ソフトウェアとして提供されるActifioでは、こうした「用途別のストレージや管理スキーム」を不要とし、それ以外の用途に利用するための複製データを「ゴールデンマスター」として統合するという。
 
今回の次世代バックアップソリューションのガチンコ対決には多くの参加者が集まり、
ステージ上のバトルに注目した

 高峰氏は「Actifioはストレージではなくデータを管理する新たな手法を提供する」と話す。サーバーとストレージの対応ではなく、保存しているデータとアプリケーションとの対応に着目することで、最新のデータを差分で更新し、復元する際には元となるアプリケーションからすぐに利用できる形で、必要な時点でのデータを取り出すことができる。創業が2009年と、他の2社と比べて早い同社は実績も多く、米国の某大手銀行では6000に及ぶ「Oracle Database」のインスタンスをActifioで管理しているほか、東北電力や生命保険会社など、国内での導入実績もあるという。データの取得元や復元先は、クラウドを含む多様な環境に対応。バックアップ、開発・テスト環境の構築、アナリティクスだけでなく、オンプレミスからクラウドへの環境移行など、さまざまな用途での活用が可能だと説明した。
 
Rubrik Japan
SEマネージャ
飯野昌紀氏

 「次世代バックアップソリューション」を掲げ、「設計や構築、運用が面倒なバックアップの概念をアップデートしたい」と語ったのは、Rubrik JapanのSEマネージャの飯野昌紀氏だ。同社の「Rubrik」が提供するのは「徹底した自動化による、バックアップ/リストアの省力化」であるという。システムの存在する場所や用途によって分散しているバックアップデータを統合管理するというコンセプトは、他の2社とも共通する一方で、Rubrikではデータを利用するアプリケーションやユーザーアカウントなどの情報から、バックアップが必要となるデータと頻度を、求められるサービスレベルに応じて自動的に判断する。この自動化の仕組みにより「バックアップの担当者はSLAと管理対象にのみフォーカスできるようになる」(飯野氏)という。

 Rubrikはアプライアンス形式で提供されているが、データ管理のエンジンとストレージ部分は独立して動作する。つまり、管理するバックアップデータの置き場所は選ばない。クラウドアプリケーションのデータをRubrikでクラウドストレージにバックアップしておくことで、物理的なストレージの容量を必要以上に増やさないといった運用も可能というわけだ。同社が目指すのは「ユーザーにバックアップを行っていることを意識させない環境」の実現だという。飯野氏は「バックアップ環境の構築や運用のために必要だった時間を削減し、その時間をデータを活用するための活動にあてることができる。デジタルトランスフォーメーションの時代に向けた、バックアップとデータ管理の進化を提案したい」とした。

「クラウド」へのニーズに対応できるかがカギ

 イベントの後半は、3者にネットワールドの営業本部ストラテジック・プロダクツ営業部の宮本隆史氏を交えたパネルディスカッションと、来場者からの質問を受け付けるQ&Aコーナーなどが展開された。
 
ネットワールド
営業本部
ストラテジック・
プロダクツ営業部
宮本隆史氏

 マルチベンダー対応のインテグレーターとして多くのユーザーと接するネットワールドの宮本氏は、近年高まっているニーズとして「バックアップデータの置き場所とディザスタリカバリー環境としてのクラウド活用」や「クラウドに蓄積されたデータのオンプレミスへの移動」などがあることを指摘した。

 こうしたニーズについては、Actifioが物理から仮想環境への変換機能や、アプリケーションと対応付けたデータ管理の仕組みなどによってすでに対応している点を強調。CohesityとRubrikは、今後のロードマップとして、クラウドからオンプレミスを含むより柔軟なデータコントロールの実現を目指していると説明した。その一方で、Rubrikの飯野氏からは、今後のユーザーにおけるクラウドの活用スタイルの変化を視野に入れつつ「一度クラウドに上げてしまったデータを、オンプレミスに戻したいというニーズが今後も多いままかという点については検討の余地もある。クラウドの仮想環境上で、より早いスパンでインスタンスの生成や廃棄を行いながらシステムを作り、クラウドにあるデータをそのまま活用していくという使い方が増える可能性も高い。そうした環境では、より一層バックアップやデータ保護を自動化していくことの重要性が高まっていくのではないか」といった意見も出された。

従来の「バックアップ」の概念を変えていく

 今回のイベントに登壇した3社のソリューションは、クラウドが企業のシステム構築に不可欠な「手段」となっていることを前提に、旧来の複雑で手間のかかるバックアップの概念を変えていくことを促すものであるという点で共通している。また、増え続けるデータのバックアップやリカバリーを効率化するだけにとどまらず、より高度なデータ保護、データ管理、データ活用のスキームを取り入れていくことをユーザーに提案している点でも、ある意味「競合」だと言えるだろう。一方で、それを実現するための技術的なアプローチや、最も効果を発揮しやすいユースケースの違いなどが、各社の個性となっており、そこがユーザーにおける選択のポイントとなってくるだろう。

 全てのセッションが終わった後の投票において、「最も来場者の関心を集めたベンダー」として勝者に輝いたのはActifioだった。高峰氏は「正直なところ、Actifioは今回のイベントのタイトルになっているストレージやバックアップとは異なるソリューションだと考えているので、来場者の反応が心配だった。この結果は、イベントを通じて皆さんに『コピーデータ仮想化』の思想が伝わった証だと受け止めている。今後、さらに新たな市場を盛り上げていきたい」と述べ、イベントを締めくくった。
 

編集長の眼

 「次世代バックアップソリューションDay」と銘打たれたイベントで複数の新興ベンダーがプレゼン・ディスカッション対決を行い、最終的に勝者の座についたActifioが自社の製品を「セカンダリストレージでもバックアップソリューションでもない」と表現していたのは興味深い。バックアップを含む広義のデータマネジメントに対するニーズが高度化し、必ずしも従来のバックアップやストレージの概念にとどまらないソリューションが求められるようになってきていることの象徴と言えそうだ。多くの参加者が3社のスピーカーの発言に真剣に耳を傾けていたが、彼らにとっても、マーケット、つまりはユーザー企業側にそうした動きが顕在化している実感があるということなのだろう。その結果と言うべきか、それ故にと言うべきか、特長や強みが異なる新たなソリューションをいかにユーザーの課題に合わせて適切に提案できるのか、リセラーパートナーが果たすべき役割もますます大きくなっている。ネットワールドはその役割を果たそうという志を持つリセラーを全面的にサポートし、新しい市場を開拓していこうとしている。