Special Issue

EDI移行を促進する商材を手厚く既存システムの手直しを最小限に抑える――キヤノンITS

2019/06/27 09:00

週刊BCN 2019年06月24日vol.1781掲載

 EDIパッケージで多くの実績を持つキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は、NTTのIP網切り替えで使用期限が迫る古いEDI(電子データ交換)システムの移行促進に力を入れている。新方式に移行する方法の一つとして、インターネットで一般的に使われているSSL/TLS暗号化の部分を切り出して商品化。既存システムに手を加えることなく、情報セキュリティ強度の高いEDI通信が可能になる商材ラインアップを強化した。EDI移行を巡って、システム改修を最小限に抑えつつ、スムーズに新方式へと移行する手立てが求められており、キヤノンITSではこうしたニーズに的確に応えていく方針だ。

「TLS-Accelerator」と「BANK TCP/IP-Client」を組み合わせ

時間とコストを抑えて
インターネットEDIへ移行


 EDIの多くは、これまでISDNを含む従来型の電話回線網を使っていたが、NTT東西地域会社が2024年1月にIP網へ切り替えるのに伴い、従来方式のEDIが実質的に使えなくなる。全国20万~30万の事業所の受発注やファームバンキング(銀行とのオンライン取引)といった用途でEDIが使われており、業種も流通小売・卸や製造、化学、医薬、金融など多岐にわたる。

 従来の電話回線を使っている割合は全体のおよそ半分と見られており、遅くても通信遅延の発生する23年までにインターネットを使ったEDIに切り替えていかなければならない。ユーザー企業から、「時間とコストを節約するため、できる限り既存のEDIシステムに手を加えずにインターネットへ移行したいというニーズが根強くある」(津田智・プロダクトソリューション営業本部EDIソリューション営業部部長)ことから、キヤノンITSでは既存システムに手を加えることなく移行が可能な「EDI-Master B2B TLS-Accelerator」を開発した。
 
津田智
プロダクトソリューション営業本部
EDIソリューション営業部部長

 TLS-Acceleratorは、全国銀行協会(全銀協)が97年に定めた「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順)」(全銀TCP/IP手順)をインターネット回線で安全にやりとりできるための暗号化部分を担う。EDIセンター側となっている大手製造業、卸売業、金融業、VAN事業者を主な販売ターゲットとしている。受注者(サプライヤー)側に多いクライアント端末向けに、「EDI-Master B2B for BANK TCP/IP-Client」をV9で暗号化対応。TLS-AcceleratorとBANK TCP/IP-Clientを使うことで、既存システムの改修を最小限に抑えつつ、インターネットEDIへの移行が可能になる。
 

既存EDIでも
「全銀・広域IP網」対応が可能に


 インターネットが本格的に普及し始めた時期に制定された全銀TCP/IP手順は当時、まだ主流だった電話回線を使った通信を前提としていた。いわゆるモデムやISDNを使った通信だ。電話交換機を通じて1対1でつながるため情報セキュリティ上の懸念はほぼない状態だったが、交換機をやめてIP網(インターネットを使ったEDI)へ移行する際には、暗号化が必須となる。

 全銀協は、インターネットやVPNに対応した「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)」(全銀TCP手順・広域IP網)プロトコルを17年に制定。IP網切り替えへの準備が整いつつあるものの、新方式に対応するためにEDIシステムを更新するコストや時間の確保も課題となっている。
 
花澤健二
プロダクトソリューション営業本部企画部企画課課長

 そこで、キヤノンITSは既存の全銀TCP/IP手順に準拠したEDIシステムから全銀TCP/IP手順のデータを引き出し、これを暗号化した上で、全銀TCP/IP手順・広域IP網プロトコルに変換。「インターネットを経由して、センターと端末を安全につなぐ仕組み」(花澤健二・プロダクトソリューション営業本部企画部企画課課長)を実現している。全銀TCP/IP手順のEDIシステムを残したまま、TLS-Acceleratorを組み合わせることで全銀TCP/IP手順・広域IP網に対応した。また、端側にはBANK TCP/IP-Clientを導入することで、電話回線とインターネットのいずれも対応できる。

センター側企業/VAN事業者から
強い引き合い


 キヤノンITSによるTLS-AcceleratorとBANK TCP/IP-Clientの組み合わせでは、暗号化方式としてインターネットで最も使われているSSL/TLSを搭載している。拠点間の暗号化でVPNが使われるケースもあるが、EDIは複数の取引先とデータ交換を行うため、「VPNよりもSSL/TLSのほうが互換性が確保しやすく、EDIに適している暗号化方式」と花澤課長は話す。しかも、取引先が増えても柔軟に対応しやすい特性がある。

 18年6月に製品化して以降、まずは比較的規模の大きい発注企業やVAN事業者から、TLS-Acceleratorに対して強い引き合いがきている。キヤノンITSでは、EDIサービスを提供しているVAN事業者やセンター側企業から順にSSL/TLS暗号化の対応を行ってもらい、その後、クライアント側の受注者や小規模事業者にBANK TCP/IP-Clientを導入してもらうことで、スムーズなEDI移行を促進していく。暗号化の部分だけ切り出した製品であるため、必ずしもキヤノンITS製のEDIシステムでなくてもよく、マルチベンダーで対応できる点も評価されている。

 NTTによるIP網切り替えまでの時間は限られている。キヤノンITSは、TLS-AcceleratorとBANK TCP/IP-ClientによってEDIユーザーのスムーズなインターネット移行を強力に推進していく構えだ。
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外部リンク

キヤノンITソリューションズ=https://www.canon-its.co.jp/