Special Issue

<Printer Maker Discussion2020>パートナー連携を強化して 業種・業務に向けた販売を拡大

2020/03/19 09:00

週刊BCN 2020年03月16日vol.1817掲載

業種・業務特化をさらに推進し
サービスを絡めて展開

――ここからは20年の市場についてお聞きしたいと思います。注力される製品、分野、市場の見通しを含めて教えてください。

豊田 昨年までと同様に、文教とヘルスケアに注力していきます。もう一つは環境も大きなテーマに据えており、お客様の関心も高い。これが世の中にさらに広がっていくことで、われわれが主導してフローをつくれると考えています。そこで、入力部分の「PaperLab」とアウトプットを含めて、良い提案ができると考えています。

 また、購買方法としてサブスクリプションについては、欧州で1月29日に個人向けサブスクリプション型新サービス「ReadyPrint」の提供を発表しました。国内においても展開の検討を進め、多様化するニーズに応えていきます。

古賀 昨年のテレワーク・デイズには約68万人が参加するなど盛り上がりを見せており、働く場への労働者の意識も変化しています。そこで増加するサードプレイスでの出力機会に対応し、狭い場所でも出力できる小型のプリンタ製品と、共有スペースでの安全・安心を担保するセキュリティを訴求していきたいと考えています。また、その出力コストを本社に付け替えできるようにしたいと思います。

 文教では先生方の働き方改革が大きなテーマで、特に採点に多くの時間をとられている状況があるので、複合機をベースにした自動採点の仕組みを提供していきます。流通では棚卸を含めたIT化が進む一方、中小では紙に出力して一覧でチェックするやり方が重宝されていることから、そこに向けたソリューションの提供を考えています。

伊藤 市場の見通しは厳しいと捉えています。そんな厳しい状況の中で、インクジェットの大容量タンクモデル「ファーストタンク」シリーズは前年に対して約150%の成長で、これをさらに伸ばしたいと思います。

 基本方針は業種・業態への深耕で、当社が得意とするライトなソリューションを提案することで、新規案件の開拓や既存ユーザーのリプレースにつなげていきます。具体的な取り組み例として、小口通販事業者が必要とするバーコードラベルの発行や、宅配送り状のプリント、さらに最近ではコンビニエンスストアでの返品ソリューションのラベル出力など、一つ一つの案件規模は小さくとも業界全体としては相当数になるニーズを拾っていきたいと思います。また、デパートやスーパーでニーズのある熨斗(のし)の印刷への対応など、お客様の小さなニーズをしっかり拾って実現する形でビジネスにつなげていきたいと思います。このような例は、各業種別ソリューションの紹介や具体的な導入事例情報を提供しているブラザーのウェブサイト内の「ビジネスNAVI」で紹介しています。

――エプソンの豊田さんにお聞きしますが、注力される文教・医療分野で、どのように取り組まれるお考えですか。

豊田 モノ(プロダクト)の価値にコト(サービス)の価値を加えることで、SIerとの協業が不可欠と考えています。そこで重要な点はパートナーの方々にいかに多くのメリットを提供できるかで、全体ではなくエリア、個社ごとの単位で進めていきます。医療では、電子カルテ向けに50万台あるとされるプリンタのうち、30万台は一般用途にも使用されていますが、何をどう使えばよいのか、その適切な配置などについて、事務局長が困っているという話をよく耳にします。そこで購入前のアセスメントから導入後のサポートまでを、パートナーと連携してしっかり取り組んでいきます。

――富士ゼロックスの古賀さんへの質問ですが、流通に向けてはどのようなアプローチを。

古賀 当社は製造業向けに強みを持っていましたが、流通・小売りは手薄でした。特に、そのフロント業務を支援していきたいと考えています。これまでフロント業務は人手に頼った力技で行われるケースが多かったと思いますが、ITを活用し、当社の強みであるドキュメントをうまくハンドリングする仕組みを使うことで、かなり効率化できる提案が可能になると考えています。

――ブラザー販売の伊藤さんも、同じく流通・小売りに向けての注力を訴求されていますが、将来性のある市場だとお考えですか。

伊藤 通常の紙のプリントニーズだけでなく、流通・小売りにおけるラベルのプリント需要は、大容量かつ高速出力用途から個人事業主の簡易的な業務用途まで幅広くあるため、当社としては国内市場でもまだ成長が見込める分野だと捉えています。

今後の市場開拓、拡販には
パートナーシップが不可欠

――東京五輪・パラリンピック後は景気の減速が予想されていますが、今年後半以降のビジネスについては、どうなると思いますか。

伊藤 ある程度の減速は想定しています。当社の3カ年計画の初年度である19年度から、注力分野におけるビジネスプリンタの拡大と産業用領域の拡大を掲げています。ビジネスプリンタに関しては、ラベルやモバイルプリンタでのさらなる伸長を期待しています。

 産業用領域では、Tシャツなどにプリントできるガーメントプリンタが大手アパレル企業に採用していただくなど実績も出ています。さらに、オーダーグッズ需要を取り込んで産業用ビジネスの拡大を図ることで、景気減速による既存領域の落ち込みをある程度カバーできるようになればと考えています。

古賀 ネガティブな面だけではないと思いますが、プリント市場は、既存市場の取り合いになるでしょう。一方、中小企業のIT基盤の8割がこれからクラウドサービスに移行していくことから、そこにビジネスチャンスがあると考えています。Windowsのほか、iOS、AndroidなどマルチOSへの確実な対応と、社外からのセキュアなプリンティングを可能にする安心を訴求していきます。

豊田 イニシャルは当然、減少するでしょう。一方でエコの流れは世界的にも続くことから、インクジェットをはじめ環境をテーマにさまざまな協業ができると考えています。また、5年前にスタートしたスマートチャージもリプレース時期に差し掛かっていますが、継続されるお客様がとても多く、今後とも伸びるビジネスと考えています。一通りのラインアップも揃い、今後もさらなる拡大を見込んでいます。

――最後に、パートナーに向けた販売支援策と今後の取り組みについて教えてください。

伊藤 最近は当社営業が直接、エンドのお客様のニーズやお困りごとを聞く活動を進めています。その結果、幅広い製品群を持つ当社にとってクロスセルにつながる機会が出てきました。業種カットでの新しい提案も見えてきたことから、パートナーの皆様と一緒になって新しいニーズの開拓につなげていきたいと思います。これらの活動をサポートする手段の一つして、デジタルマーケティングを推進していますが、リードの獲得からナーチャリング、プレセールス活動を通じて成約に結びつけ、チャネルパートナーの皆様と協業していきたいと考えています。

古賀 31の国内販社と直販営業のネットワークを活かし、お客様のお困りごとを聞き、問題解決につなげていく姿勢は今後も変わりません。また、環境面では低温定着ができるSuper EA-Ecoトナーは当社独自の強みで、それを特約店の方々にしっかり説明して、当社製品の優位性を理解して販売に役立ててもらう取り組みを進めていきます。加えて、21年4月には社名が富士フイルム ビジネス イノベーションに変更になります。新社名の浸透がスムーズに運ぶよう説明をしていきたいと思います。

豊田 パートナーとの連携強化は常に大きなテーマとして継続します。大きく事務系とSI系というチャネルがありますが、事務系ではエコをテーマにラインアップの強化を進めていきます。SI系ではコピー機との垣根が低くなっていることもあり、お客様の環境を良く知っているSIerの方々とコストではない切り口での提案を訴求していきます。

――本日はありがとうございました。

 
プリンタメーカー座談会2020に関するアンケート
https://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_printer_rt2020

外部リンク

EPSON=http://www.epson.jp/

FUJI XEROX=https://www.fujixerox.co.jp/

BROTHER=https://www.brother.co.jp/