Special Issue

今必要なDX提案がITベンダーの務め 中小企業の現状と課題を知る

2022/09/01 09:00

週刊BCN 2022年08月29日vol.1936掲載


 初日の基調講演では、ITジャーナリストの久原健司氏が登壇し、「中小企業のDX推進における現状と課題~ITベンダーに求められること~」をテーマに講演を行った。

ITジャーナリスト 久原健司氏

 久原氏は、まずデジタルでビジネスを変革するDXを推進する企業は年々増加しているとの認識を表明。「大企業では取り組みが進むものの、社数で99.7%を占める中小企業での実施率はあまり高くない」と指摘した。中小企業でDXが進まない最大の理由は「DX推進に関わる人材の不足」。さらに、「何をすればよいか分からない」や「予算がない」も課題だという。

 では、課題を抱える中小企業がDXを推進するためにはどうすればいいのか。人材不足については“DX人材=IT人材”との誤解を解消することが重要だと久原氏は説く。DX推進に必要なのは、ビジネス系プロデューサー、テクノロジー系プロデューサー、テクノロジスト(エンジニア)、デザイナー、チェンジリーダーの6種類の人材。全てが狭義のIT人材(エンジニア)でなくて良いと分かれば“人材不足感”も低下するという。

 次に、今行うべきDXを明確にすること。DXには守りのDXと攻めのDXがあって、狙いも難易度もそれぞれに異なる。業務処理の効率化や業務プロセスの見直しなどを目的とする守りのDXは、達成が比較的容易。それに対して、顧客接点やビジネスモデルの根本的改革を目指す攻めのDXは難易度が高い。

 したがって、中小企業でDXをうまく進めていくには、その企業が目指しているのはどちらのDXであるか従業員によく説明・教育することが必要。その上で、小さな改善や失敗を繰り返しながら、たゆまず進めていけば着実な成果が得られるとのことだ。

 さらに、中小企業に製品やサービスを提供するITベンダーの役割も重要だ。最初にしなければならないのは、その顧客企業がDX推進のどの段階にあるかを把握すること。守りのDXか攻めのDXか、それぞれについてどこまでできているかが分からなければ、その企業が必要としているDXを提案することはできないからだ。

 その把握をもとに、各企業のDX推進状況に見合った製品やサービスをITベンダーが提案。不足している属性の人材をどう充足するかの相談に乗ることも大切という。

 さらに重要なのは、「“売っておしまい”ではなく、導入後も長くお付き合いすること」(久原氏)。顧客の困り事に耳を傾けるITベンダーにはDXの次期ステップへの提案を依頼したくなるもの、と説いた。
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