ニッチといわれながら、需要の裾野が広がっているのがクリップアートソフト市場だ。データクラフトは、デジタル素材ソフト「素材辞典」を核として、企業向けソリューションを提供する案件が増えてきた。しかし、同社の主戦場はあくまで量販店ビジネス。コンシューマ向けパッケージソフトの販売が厳しいといわれるなかにあっても、高橋昭憲社長は「ハードウェアとソフトウェアの連携を強化させることで需要を創出していく」と意気軒高だ。
デジタル素材は需要の裾野広がる、他社と切磋琢磨して市場を活性化
──主力ソフトウェアの「素材辞典」を核に、2003年にコンシューマ向けクリップアートソフト市場で30%以上の圧倒的なシェアを獲得しました。今後はどこに需要があるとみていますか。
高橋 デジタル素材の市場は、ニッチな市場といわれていますが、年を追うごとに需要の裾野が広がっている市場でもあります。最近では、デザイン、印刷などの分野だけでなく、一般のビジネス現場でも活用されているケースが増えています。カラーレーザープリンタの低価格化やネットワーク化により、社内文書やプレゼンテーション資料などをビジュアル化しようという動きが出ています。視覚的な文書により、営業の仕方も変わってくるといえるでしょう。広告会社や出版社では、DTPにより作成したデジタルデータを製版工程を経ずに直接印刷する「プリンティング・オンデマンド」が普及しつつあります。こうした動きもデジタル素材の拡大につながります。
素材辞典は94年の発売以来、デザインの現場で活躍するデザイナーに支持されてきました。その理由は、プロフェッショナルなクリエーターを対象にニーズを捉え、その創造力を喚起するバラエティに富んだラインアップを100タイトル以上発売したことに加え、写真をデリバリーする時間やポジ管理の手間が要らないハイクオリティな写真素材を、手軽に低コストで提供したからではないでしょうか。30%以上のシェアを獲得できたのは、社員が一丸となって良いソフトを開発することに力を注いだ賜物と自負しております。デジタル素材の市場は競争が激しくなりつつありますが、競合他社と切磋琢磨して市場を活性化することが重要だと考えています。
──グラフィックコンテンツ需要の増大とともに、具体的に新しいビジネスモデルは構築できたのですか。
高橋 実は、あるベンダーと協力して、まずは印刷会社向けですが、写真データと素材コンテンツをスムーズに連携させるシステムをソリューションとして提供しました。素材バリエーションは、グラフィックデザインや広告、編集、ウェブデザイン、CG(コンピュータグラフィックス)コンテンツ制作など、多くの制作現場でクリエイティブの可能性を広げ、印刷原稿やイメージラフ、企画書、プレゼンテーション資料、CGアニメーションなどさまざまな用途で活用されています。視覚的に訴えるようなコンテンツへの需要が拡大しているため、今後は一般企業にも普及していくことは間違いありません。とはいえ、当社では量販店ビジネスが主戦場です。ダウンロード販売なども普及してきてはいますが、消費者に視覚的に訴えていくには店頭での用途提案が重要になってきています。04年は違う分野でも少し攻めますが、あくまでも量販店ビジネスを主軸に置きます。
──しかし、主軸の量販店ビジネスは、パッケージソフトの販売が厳しい状況だといわれます。ソフトメーカーとしては、どのような見解をお持ちですか。
高橋 相対的には、流通の再編事情とソフトウェアのデリバリーという2つの局面で問題が浮上しているとみています。メーカーは、量販店さんのビジネスのなかでソフトの販売がどのような位置付けにあるのか、非常に気になります。正直、できるだけ多く売ってもらいたいという気持ちを持っています。ですが、単に売ってくれというだけではいけない。市場は踊り場にきているといえますので、ソフトウェアの魅力をどう量販店にアピールしていくかを考えていかなければなりません。そのためには、ハードメーカーとソフトメーカーの協力関係をさらに深めていくことが重要になってきます。
ハードとソフトでマーケットをどう広げていけるのか、どのような新しいマーケットを創出できるのか──などを改めて検討する時期にきているといえます。最近では、パソコンをもっと活用したいというユーザーが増えています。マーケットが揺れるなか、量販店さんも各商品をどのように拡販していくかを考えています。消費者に対し、ハードとソフトで実現できることをソリューションとして提供できるかが、市場を拡大するカギになってくるといえるでしょう。
「ソフト主体でハードありき」、IT化にはパソコンが必需品
──量販店ではソフト販売が落ち込んでいることから、そのコーナーを縮小するというケースも出ています。
高橋 確かに、「では、どのようなソリューションを提案すべきなのか」と問われた場合の答えについては、現時点では持っていないと言うしかありません。それがソフトコーナーの縮小につながっているのです。しかし、これまでの「ハードが主体でソフトがありき」という認識を、「ソフト主体でハードありき」という概念に変えることも、ソフトメーカーとしては1つの市場創出だと考えています。また、ソフトだけに限ったことではありませんが、パソコンや関連機器は実売単価が落ちている状況です。そのマーケット状況をよく把握し、いかに利益を確保できるかを追求した企業が勝ち残るといえるでしょう。
──年末年始は、薄型テレビやDVDレコーダーが好調でした。デジタル家電の登場により、パソコンや関連機器が伸び悩んだという見方もあります。
高橋 しかし、将来的にホームネットワークを実現するうえで、パソコンが核になるのではないでしょうか。地域コミュニティが叫ばれていることに加え、電子政府・自治体の動きもあり、IT化を進めるためには、まずパソコンが必需品となります。パソコンおよび関連機器市場が厳しいといわれていますが、そんな時こそ、ハードメーカーとソフトメーカーが良く話し合うことが今後の課題です。
──メーカーに対し、量販店の間からは「魅力ある製品を開発して欲しい」という声もあがっています。
高橋 消費者は、パソコンスキルが上がっており、さらに高い機能や用途を求めています。そのなかで、例えば周辺機器とソフト製品を連携させて付加価値を見出すといった、これまでとは異なった考えで製品を開発することも必要になってきます。それがマーケットニーズに上手くはまれば、魅力のある製品になります。量販店さんには、消費者が多様なイメージを膨らませることができる売り場を作ってもらいたいと考えています。量販店さんが、フロアで消費者の購入意欲を刺激するコーナーを作りたくなるような製品開発に注力していきます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
データクラフトの高橋社長は、北海道IT推進協会理事や札幌市IT振興普及推進協議会理事などを務めており、韓国や中国、台湾などと日本をつなぎ、アジアのIT産業都市とのネットワーク構築を目指す「e─シルクロード」構想にも関わっている。同構想の進捗状況は、「最近では韓国ベンチャーとの交流が増えてきた」と、着々と進んでいるようだ。 「アジア地域との交流も重要だが、北海道内の産官学がより深く交流することも重要」と、北海道庁が取り組んでいるIT化とe─シルクロードの取り組みを連携させることに意欲を燃やす。北海道のIT化を促す第1人者といっても過言ではない。地域の活性化とソフト市場の活性化──、ともに目的を達成することに期待したい。(郁)
プロフィール
高橋 昭憲
(たかはし あきのり)1970年3月、高崎市立経済大学を卒業。73年4月、朝日サービスに入社。83年11月にデービーソフトへ入社し、84年4月に同社取締役開発本部長に就任。91年3月、データクラフトを設立し、代表取締役に就任。北海道情報産業クラスターフォーラム議長、札幌地区知的クラスター本部会議委員、北海道IT推進協会理事、札幌市IT振興普及推進協議会理事なども務める。
会社紹介
北海道を本拠地にデータクラフトが設立されたのは1991年。マルチメディアシステムやテレビ・ビデオ向けCG(コンピュータグラフィックス)映像制作など、マルチメディア関連事業を中心にビジネスを手がける。コンシューマ製品では、クリップアートソフトの「素材辞典」を主力製品としており、デザイナーやクリエーターをターゲットに100種類以上のタイトルを市場に投入している。
BCNランキングによると、03年のクリップアートソフト市場でシェア32.3%と年間トップの座を獲得。「BCN AWARD 2004」の最優秀賞に輝いた。素材辞典は、「著作権フリー・デジタルフォトコレクション」により、ユーザーが何度でもデジタル素材を利用できることが特徴。デジタル素材の制作にあたっては、メーカーや博物館、大学、研究機関、学者などに取材や調査を依頼。この取材や調査をもとに、作家やカメラマン、スタイリスト、コーディネータ、有名スタジオなどと連携を図っている。