2月1日から新トップとして、シーイーシー(CEC)を陣頭指揮する新野和幸社長。「品質と生産性の向上をさらに進めることが飛躍のカギ」と説く。ソフト開発単価の下落、顧客ニーズの複雑化など、SI(システムインテグレーション)、ソフト開発事業が慢性的に抱える課題に“原点回帰”で立ち向かい、「ITのプロフェッショナル集団」へ同社を導く。
品質と生産性の向上で事業基盤強化、プロジェクト管理を徹底
──社長就任から2か月半が経ちました。現在の市場環境をどのように捉えて、シーイーシー(CEC)の成長戦略を描いていますか。
新野 IT産業は、技術革新の進展とともにビジネスも自然と拡大してきましたが、今はそうではありません。ITインフラは水道やガス、電気のような生活インフラとなりつつあり、コモディティ(日用品)化してきました。ユーザーは、ITに関する知識を豊富に持つようになり、ITベンダーの言いなりではありません。ユーザーの要求は高くなり、複雑化しています。開発単価やサービス金額の下落も続いており、楽観視できる状況には決してないと受け止めています。提供する側は、これまで以上に“プロ”として仕事をしていかなければ、生き残っていけないでしょう。
その厳しい環境のなかで、社長に就きCECが成長するために何が必要なのかをまずは考え、3つの指針を定めました。それが「ITプロフェッショナル集団の確立」、「顧客志向」、「QCDSの追究」の3つです。「QCDS」とは、「Quality=高品質」、「Cost=適正価格」、「Delivery=納期厳守」、「Speed=高生産性」の4つの意味で、これまでのCECでは「QCD」を掲げていたのですが、新たに「Speed」を加えました。このビジョンを達成することが、CECが飛躍するうえでの至上命題になるでしょう。顧客のニーズを的確に把握し、高品質の製品・サービスを創出し、いち早く顧客に届ける。つまり、ITのプロとしての地位を確立することが重要だと考えています。
CECには、業務系ソフトや組み込みソフト開発、システム構築、ITサービス、自社開発パッケージソリューションなど、豊富な製品・サービスがあります。約40年、ITビジネスを手がけてきた実績もある。前社長の宮原(隆三取締役相談役)は、私が社長に就いた今年度(2006年1月期)を“第2の創業”と位置付けています。ユーザーの要望が厳しく、複雑化するなかで、品質と生産性の向上を図り、事業基盤を再度強化することが重要になります。
──品質と生産性向上のための具体的な施策は。
新野 ソフト開発事業では、プロジェクト管理や開発手法の指針を定め、どの案件でも共通した枠組みのなかで開発できる体制を確立します。開発の効率化や不採算案件の撲滅への取り組みは従来から行っており、昨年度は不採算案件が一昨年度に比べ半減するなど、実績が出てきています。改良の余地はまだまだあるので、プロジェクト管理の徹底、開発効率化をさらに進めていきます。
人材教育も重要なポイントになります。システムインテグレータ、ソフトウェアハウスにとって人は最も大きな財産だと思っていますから、社員のスキルアップに対する施策は今まで以上に積極化させます。人材教育のために、今年度1億円はかけるつもりです。
現在は各部門ごとにそれぞれ人材教育を行っており、全社的な教育カリキュラムが整備されていません。半年以内に「ITスキル標準(ITSS)」などを参考にCEC独自の教育プログラムを作成し、各社員がどのスキルを身に付けなければならないかを示し、各自が率先してスキル向上が図れるようにします。
オフショア開発は優秀な人材確保が目的、組み込みソフト開発で売上高100億円目指す
──ソフト開発では03年8月に、中国・上海市に開発拠点として100%出資子会社を設立したほか、オフショア開発を10年以上前から活用していますね。
新野 10年以上の実績がありますし、外注先として中国のソフト開発会社を活用するためのノウハウは、相当蓄積しています。ただ、コスト削減だけを目的に、中国に目を向けているわけではありません。
当初は、中国の安価な開発者に着目しました。しかし、今はコスト削減よりも優秀な人材を確保することの方が狙いとして大きいのです。
中国は優秀なソフト開発者が非常に多い。また、日本に比べ圧倒的に人口が多い中国は、ソフト開発者の数も日本より多いですし、今後はさらにその差は広がっていくと思います。開発案件が増え、人手が足りなくなった時に、日本国内の外注先だけでは対応できなくなるケースもあるでしょう。その時に備えて、足りないマンパワーを補うために中国の開発者を活用していくつもりで、信頼できる開発会社とのアライアンスや、急ぎの案件でもまとまった開発者を確保できる基盤を作っておく必要があるのです。
開発コストは、今は日本の開発者よりも安価ですが、この先は分かりません。そして何より、低価格だけを求めていたら品質が低下します。高品質のソフトを開発してくれるのであれば、たとえ日本人と同じ人月単価であっても、中国のソフト開発会社に発注していく可能性もあります。コスト削減だけの拠点としてはみていません。
──中国を“マーケット”として捉え、営業展開する計画は。
新野 今年度から進めていきます。細かな部分は現在詰めている最中ですが、中国に進出した日系企業向けのITサービスやシステムサポートなどを中心に営業していく方針です。また、自社開発のソリューションパッケージ「ワンダーウェブ」は、日本国内で好調ですので、時期は未定ですが中国語版を開発し、中国でも販売していく計画もあります。中国市場のビジネスで、3年後には売り上げ10億円規模に成長させたいですね。
──「ワンダーウェブ」の日本国内での販売状況は。
新野 昨年度の売上高は10億円で、今年度は15億円まで伸ばします。知名度を上げるとともに、他社製品との連携や販売パートナーとのアライアンスを強化していきます。他社製品との連携では、すでにピー・シー・エー(PCA)のERP(統合基幹業務システム)「PCA Dream21」との連携が可能になっています。PCA製品との連携が可能になったことで、PCAの販売代理店にも取り扱ってもらえるようになり、販路が広がりました。これまで直販が中心だったので、パートナーを経由した間接販売も本格化させていきます。
──ワンダーウェブの開発・販売とともに、携帯電話やデジタル家電向けの組み込みソフト開発も強化事業に挙げている分野ですね。
新野 デジタル家電の急速な普及で、組み込みソフト開発案件は増えており、技術者不足に悩むほどです。CECは携帯電話やデジタル家電向けなど、幅広く開発できる体制を整えていますし、開発だけでなく、完成品の品質検証までを提供できることが強みになっています。組み込みソフト開発事業は、今後も需要が見込めますし、優秀な人材を確保し、開発体制をさらに整備していきます。品質検証サービスなども含め3年後の07年度には売上高100億円を目指します。
眼光紙背 ~取材を終えて~
CECは、2002年に開催された「FIFAワールドカップ」の、日本の情報ネットワークシステム構築を手がけた実績を持つ。
そのシステム構築のプロジェクトリーダーだったのが新野社長だ。元請けのコンサルティング会社が急遽変更になり、2年かけて開発するはずが、8か月間で開発しなければならないことに。それでもトラブルは全くなかったという。
「危機的状況のなかで、みんなが緊張感を維持できたことが成功の理由。私は現場担当者のモチベーション維持と人手の確保をしたぐらい」と謙遜するが、トップとして仕切ったその功績は大きい。
プロとして、大規模プロジェクトを成功へと導いた新野社長。トップとしての新たな仕事は、「ITプロフェッショナル集団の確立」。インタビューのなかで、10回以上もプロという言葉を口にしていたことに、その思いの強さが表れている。(鈎)
プロフィール
新野 和幸
(しんの かずゆき)1954年3月生まれ、東京都出身。76年3月、工学院大学工学部卒業。同年4月、シーイーシー(CEC)入社。96年、ネットワークインテグレーション事業部副事業部長。97年、取締役。03年、取締役ITサービス本部長。04年、取締役兼執行役員兼ITサービス本部長。05年2月1日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
シーイーシー(CEC)は、1968年設立の中堅システムインテグレータ。ソフト開発に強く、売上高の59.4%をソフト開発事業が占める(05年1月期)。
このほか、ITコンサルティングサービスやシステム構築、ITアウトソーシングなどのITサービス事業、中堅企業向け自社開発パッケージソリューション「ワンダーウェブ」の開発・販売も手がける。デジタル家電などへの組み込みソフト開発でも実績があり、完成品の品質検証までを請け負う体制を築いている。
主要顧客は、富士通グループ、トヨタグループ、NTTグループ、官公庁。この4顧客で売上高全体の45.13%を占める(05年1月期)。特に富士通グループからの売り上げは大きく、全体の27.3%を占めている(同)。
昨年度(05年1月期)の連結業績は、売上高が前年度比0.5%増の411億600万円、経常利益が同7.6%増の27億3400万円。この3月には、双日の全額出資子会社である双日システムズの株式70%を取得し、連結対象子会社とした。この結果、今年度(06年1月期)の業績では売上高455億円、経常利益27億5000万円を見込む。中長期的には、07年度(08年1月期)に売上高500億円、経常利益40億円、経常利益率8%を目標に掲げる。
社員数は約2300人で、中国・上海市に開発拠点を設けている。90年11月、東京証券取引所第2部に上場。01年7月に同1部に市場変更した。