ネットワーク構築、保守サービスに強みを持つユニアデックスのビジネス基盤が大きく拡大している。親会社の日本ユニシスから数々の事業を引き継ぎ、総合的なITサービスを提供できる企業に生まれ変わった。指揮を執る福永努社長は、「日本ユニシスがいなくても成長路線を走り続けられる企業」を標榜。売上高2000億円突破に向け、自主ビジネスの拡大でユニアデックスを加速させる。
日本ユニシスから事業部門を次々と吸収 システム設計から運用・保守までカバー
──この2年で、事業基盤を急速に拡大させています。
福永 ユニアデックスというと、日本ユニシスグループのなかのネットワーク構築、そしてサポートサービス会社というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、今は違います。業容を大きく広げました。親会社の日本ユニシスから次々と事業部門を吸収し、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク分野を網羅し、システム設計から構築、運用、保守サービスまでを提供できる基盤が整いました。
ユニアデックスは、1997年の設立から一貫して2ケタ成長を続けています。しかし、将来のIT産業を考えた時、設立した当初のユニアデックスのサービスだけでは、今後の飛躍は難しいと判断しました。
競争の激しい経済環境のなかで、どの業界の企業も勝ち残るために必死です。ITを活用して競争力を高めるという意識はユーザー企業に根付き、ネットワークと情報システムに対する重要度も増しています。その一方でITベンダーに対しては、オープン化、ダウンサイジングの流れのなかで、顧客の要望は複雑・多様化しています。「ネットワーク構築だけ」、「サポートサービスだけ」というスタイルでは顧客の要望を満たすことはできず、生き残っていけなくなっています。情報システムに関するすべてのサービスをワンストップで迅速に提供できる体制が、日本ユニシスグループとしてではなく、ユニアデックス1社のなかに必要だったのです。
──相乗効果は出てきましたか。
福永 昨年度(2005年3月期)は各事業を結びつけるための準備期間で、今年度が本格展開の年になります。さまざまな事業部門を吸収したことで、効率的に動かす仕組みが整っていなかった部分を改善したり、昨年度は各事業部門との連携を進めることに時間を費やしました。今年度は各部門が連携し、総合的なITサービスを提供できる基盤も整いました。新たな成長エンジンとなるいくつかの芽も出ています。業容が進化したユニアデックスの強みを今年度から本格的に発揮し、これまで保守サービスやネットワーク構築サービスだけでしかお付き合いのなかった顧客に、さらに深く入り込んでいきます。
──新たな芽とは、具体的にどのような分野ですか。
福永 特に力を入れているのは、ワイヤレス環境でのITサービスです。今年度は、この分野に全社を挙げて取り組みます。無線LANや第3世代携帯電話の普及など徐々に環境は整ってきましたが、ユーザーはまだ本格的に「いつでも、どこでも」のワイヤレス環境のメリットを享受できていません。ユニアデックスはネットワーク構築で実績があり、この分野に関しては先進的な取り組みを行ってきました。ソフト開発事業も取り込んだことで、アプリケーション創出能力も備わりました。すでにいくつかのソリューションが提案できますので、この分野は他社との大きな差別化ポイントになります。
代表的なのが、GPS(全地球測位システム)機能付き携帯電話と情報システムを合わせたソリューションです。たとえば、外回りの営業担当者にGPS機能付き携帯電話を持たせ、会社の情報システムで担当者の位置を把握します。顧客から声がかかった時に、一番近くにいる営業担当者につなぎ、即座に顧客先に向かわせるようなことが可能になるわけです。
このシステムは、ユニアデックス社内で昨秋からすでに使っています。保守サービス担当者600人にGPS機能付き携帯電話を持たせ、社内の監視センターで保守担当者の位置を管理し、修理サービスの迅速化に役立てています。ユーザーとなって見つけ出した課題を解決し、サービスに生かしているので、質の高いソリューションになったと自負しています。
海外進出企業も現地スタッフがサポート、自主ビジネスの割合をさらに増やす
──業容が拡大したことで、営業や保守サービス担当者にはさらに高いスキルが要求されますね。
福永 当社はサービス会社であり、人がすべてですから、人材教育にはこれまでも積極的に投資してきました。特に顧客と接する担当者は提案力が重要になりますから、今は上流工程のコンサルティング能力向上に向けての教育を積極的に行っています。
また、技術的なスキル向上施策だけでなく、次世代の経営者を育てる教育制度も設けています。5─10年先を見たときに、ユニアデックスを支えることができる幹部候補を早い段階で育てるためです。この制度では具体的に、30─35歳の若手メンバー数人を選抜して「準執行役員」と位置付け、役員と一緒に経営会議に参加してもらい、いくつかの意見を出してもらっています。実際、来年度で最終年度を迎える中期経営計画にはこのメンバーの意見が盛り込まれていますし、今の組織体制の起案を作ったのは若手社員です。
人によって価値観は違いますから、最初は意見が合わずにぶつかることもあり大変でした。ですが、議論を重ねると、若手の方が正しいことを言っていることも多く、将来の経営者育成という当初の目的だけでなく、今の経営にも役立っていますよ。
──海外市場にも進出しています。今後の拡大施策は。
福永 日本ユニシスをはじめグループ企業と連携し、主に海外に進出した企業のサポートサービスを現地スタッフを張り付けて展開しています。今は中国市場への進出企業が多いですね。売り上げ規模は10億円程度と決して大きくありませんが、順調に伸びています。
今後は保守サービスだけでは面白くありませんから、数社の大手ユーザー企業に向けて、業容拡大したユニアデックスの強みを生かして総合的なITサービスを提供していく考えです。グローバルレベルのIT戦略立案をサポートするような形で、かなり深いお付き合いができるようアプローチしていくつもりです。
──中長期的な計画については。
福永 日本ユニシスグループの1社、日本ユニシスの子会社という位置付けが変わることはありません。ただ、ユニシスグループ以外からのビジネスをもっと増やしていきます。実際、私が社長に就任した2年前は、ユニシス以外からの仕事は200億円程度しかありませんでしたが、昨年度には500億円まで引き上げました。この自主ビジネスをもっと増やしたい。
中期経営計画で来年度に売上高1000億円の突破を掲げていますが、このうち自主ビジネス比率を全体の6割までまずは伸ばします。そして、09年度には自主ビジネスをさらに増やし、全体の70─80%をユニシス以外からのビジネスで構成して、売上高2000億円を超える企業に成長させます。
親から生まれた子供が、しっかりと成人を迎えられるように、日本ユニシスに頼らずとも十分ビジネス展開できる会社にユニアデックスを育てますよ。それだけの活力がこの会社にはあります。
眼光紙背 ~取材を終えて~
現場回りを欠かさない。インタビューした日の3日前も、突然、神奈川県川崎市にあるオフィスへ、社員の顔を見に行ったという。予定を前もって入れずに各拠点を回ることも少なくないとか。
社長就任前は、マーケティングや営業業務が長かった。「会社にいるよりも、現場が性に合っている」。だが、理由はそれだけではない。社員との対話を何よりも重視しているからだ。
「トップマネジメントで最も重要なのは現場担当者との会話。現場の人間と面と向かって会話し、将来のビジョンを伝える。これをしなければトップにいる資格はない」。社長に就任した約2年前に描いたイメージと現実とのギャップは、良い意味で大きかった。「社員の活力は予想以上。こんなにパワーがあるとは思わなかった」。「社員のモチベーション維持が私の仕事」と、自ら現場を歩き、会社全体の士気を高めている。(鈎)
プロフィール
福永 努
(ふくなが つとむ)1947年2月生まれ、兵庫県出身。69年3月、同志社大学商学部卒業。同年4月、日本ユニバック(現日本ユニシス)入社。89年4月、マーケティング企画本部営業推進部長。91年4月、金融営業第一本部金融営業部長。94年4月、総合マーケティング部経営企画室長。97年6月、総合企画部長。99年4月、マーケティング部担当役員補佐。同年6月、取締役。00年6月、日本ユニシス情報システムに移り、取締役に就任。02年6月、日本ユニシスに戻り、執行役員に就任。03年4月、ユニアデックス顧問。同年6月、ユニアデック代表取締役社長。日本ユニシス取締役も兼務する。
会社紹介
ユニアデックスは、日本ユニシスのネットワーク構築事業部門などが独立し、日本ユニシスの100%出資により1997年に設立された。その後、99年には基幹系サポートサービス事業、03年にはソフトウェアサービス事業、04年には設備事業を日本ユニシスから引き継いだ。また、インターネット接続サービスの日本ユニシス情報システムが手がける回線リセール事業も04年に譲り受けた。
事業基盤を積極的に広げ、ネットワークおよび情報システムの設計コンサルティングから構築、保守・運用サービスまでを手がける。日本市場のほか、海外ビジネスも展開しており、主に日系企業の海外現地法人の情報システムの保守サービスを手がける。
業績は、設立以来一貫して増収を持続。昨年度(05年3月期)は、売上高が前年度比23・3%増の823億円、営業利益は同23・0%増の32億円となった。中期計画としては、来年度(07年3月期)に売上高1000億円の突破を掲げる。従業員は約2350人。東京本社のほか全国10か所に支店および営業所を設置。サービス拠点は全国に約200か所ある。