富士ゼロックスは、国内で最大の競合であるリコーとキヤノンへの対抗策を強めている。「ソリューションカンパニー」と銘打ち、“箱売り”脱却に向けて大きく舵を切った。山本忠人社長は「今年は変革の年になる」と宣言。これまで希薄だった有力SIerや全国販社との関係を深める施策を次々と打ち出す方針だ。
谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文 大星直輝●写真
「グローバルサービス」が鍵に
──国内プリンタ市場が年々収縮傾向にあるなかで、機器とソリューションを融合する戦略を打ち出しておられますが、具体的にはどのような形で収益性を向上させるのでしょうか。
山本 こういう経済状況だからこそ、われわれも踏ん張りどころでしょう。2003年頃からは、当社のドメインを三つに定めて変革してきました。一つは性能そのものが良くなった機器を印刷業を生業とする顧客に提供する。もう一つは「サービス・ビューロー(業務請負)」。さらには、顧客に対してカスタマイズして情報提供する意味で、営業支援活動の増強を図ってきました。
それにより、ワークフローや各種「ドキュメント・デザイン」、出力装置などのマーケットを育てることができた。当社にとってここは、インクリメンタル(領域拡大)な領域になっています。
──おっしゃった市場は、もともと富士ゼロックスの得意とするところでは?
山本 だからといって、印刷業者と競争するわけではありません。テクノロジーの変化とともに印刷業ではできない「プリント・オンデマンド」の領域などを広げていく。もう一つが「グローバル・サービス」です。「アウトソーシング事業」とも呼んでいますが、「ドキュメント・マネジメント」と「コミュニケーション」になります。
どの顧客にも、ITメーカー各社の製品によって構築された業務フローがあり、それに基づいて業務をこなしているのが社員、その周辺にコミュニケーションとドキュメントがあります。つまり、業務フローのなかには「ドキュメント・マネジメント&コミュニケーション」が必ずくっついているわけです。企業にとってはノンコアであるこの部分について、当社が「アウトソーシング」のお手伝いをすることができると考えています。
──コアではなくて「ノンコア」な部分を支援するということですか。
山本 そう、「ノンコア」です。「複写機の管理」は、顧客側でやる仕事ではない。われわれは“複写機屋”ですから、顧客が使いたい時にドキュメントをコピー・FAXできる状態で管理することができます。顧客に「この文書を100部印刷して欲しい」と言われれば、言われた通り印刷する。簡単なお手伝いから、ハードコピーしたアナログなドキュメントを電子化して順番にストレージにファイリングする業務まで、当社が手伝う。
顧客側では「使いたい時」にPC上でストレージからドキュメントを引っ張り出し、コアな仕事でそれを利用できる。こうしたことの一切合財をお手伝いしていきます。顧客にとっては機器自体の設備費や固定費はいらず、人件費を含めたコストを変動費化できる。このご時勢に、ずいぶんと仕事をいただいています。
──「ノンコア」のアウトソーシングの対象企業は大企業になりますね。
山本 主にはそうなります。大企業にはプリンタが何十台もあります。プリンタ機器のドライバーを変更するだけでも大変。そういうことは顧客の社員がやることでなく、私どもがやる。顧客にとって重要ではないことは特に引き受けたい。例えば、製造業などの工場では、膨大な数のカタログやマニュアルを作成し、製品数と同じ数だけ用意しておく必要があります。このような場合は、データ化からマニュアル作成までを当社に投げていただければ、処理できる。それも日本語だけでなく英語、ドイツ語など世界の言語で翻訳するところまでやる。
──一般的に製造業の工場などでは、マニュアルを作成する部門があって、印刷・製本を外注に出して何日後に届く仕組みですが、そこに切り込んでいく、と。
山本 従来は自社内でプリントするのが一般的でした。マニュアルなどはすぐに改訂されることになりますね。この部分は3か月くらいのライフサイクルですから、余った在庫は捨てちゃうんです。
いまは「オンデマンド」印刷で、こうした無駄を排除できる。この仕組みのサンプルを顧客に見せると「これで十分だ」と満足していただける。世界展開する大手自動車メーカーでは、日本語化された製造工程のマニュアルをハンガリーや中国などに新たな工場ができると現地語に翻訳して作成する必要があります。それをいちいち社内でやるのは大変でしょう。
これからは、SIerや大手コンピュータメーカーとのつき合いが重要になる。地場の有力販社ともジョイントする。当社は顧客のパートナーであり、「ソリューションカンパニー」だ。
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