将来的に年商1000億円へ
──業績をみて、今年度(2010年3月期)はどんな感触ですか。
杉本 景気後退の影響で、大半のユーザー企業はやはりIT投資に慎重です。ただ、新任挨拶を兼ねた顧客訪問で、ユーザーのなかには、「不況だからこそ他社に差をつけるチャンス」と感じている方も結構おられると思いました。「ためになる提案ならどんどんもってきてください」と。投資に慎重といっても、実態はまだら模様なんです。
──Fsolにとって、今の時代にマッチするすぐれた提案とは?
杉本 全体的には、導入しやすく、すぐに効果が現れるソリューションを望むユーザーが多くなってきています。従来は手組み系の仕事が多かったのですが、今は「より手軽に・より即効性の高い」ITソリューションが求められています。
Fsolには、この要望に応えられる商品・サービスがあります。それは「WebSERVE」と「WebSERVE smart」です。製造業や流通業など各業種の業務にマッチした形でソリューションをパッケージ化しているモデルで、ユーザー企業の業務に合ったソリューションを手軽に、そして容易に導入できるのが強みです。
「WebSERVE」では、すでに約100種類のメニューを揃え、導入企業は5000社を超えました。今後は、さらにユーザーの細かな部分の要求に応えられるように、メニューを増やすつもりです。
──富士通の野副社長は3か年の中期経営計画を公表し、最終年度に過去最高益を出すとぶち上げました。Fsolにも当然、挑戦的な計画が求められますね。
杉本 3年先なのか、5年先なのかはまだ定めていませんが、1000億円企業が目指すべき一つの目標だと捉えています。野副社長は、富士通グループとして、ソリューションビジネスを伸ばす方針を示しています。Fsolはそれを支える存在であると認識しており、方針を具現化するには1000億円の売り上げは必要だと。
──具体策はこれからだと思いますが、計画を実現するためには何が必要だと考えていますか。
杉本 はっきりしているのは、新しいユーザーをいかに多く獲得していくかです。既存顧客からの新規や追加の案件を獲得することで、10~20%伸ばすことが可能だと思いますが、1000億円の到達(約300億円の売り上げ積み増し)は、それだけでは到底無理です。今まで手つかずだった市場にアプローチして、ユーザー数を7000社ぐらいにはもっていきたい。
──手つかずだった市場の例を教えてください。
杉本 国内にももちろんありますが、中期的な観点でみれば、世界市場を視野に入れなければならないと思っています。
Fsolは、主に関東圏の企業を対象にビジネスを展開していますが、既存顧客のなかには、世界に拠点をもつ企業もあれば、他国の企業とサプライチェーンを組んでいる企業も当然あります。そうなると、多言語多通貨対応などソリューションのグローバル化と、グローバルなサービス基盤が欠かせない。その需要を取り込むための準備は、早急に行うべきと思っています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
Fsolを取材し始めてから、もう6年になる。開発力やプロジェクトマネジメント技術、SE育成プログラムが抜きんでており、「本体(富士通)よりもSE力が長けている」と富士通関係者から聞いたのがきっかけだったように記憶している。5年前、数件の大規模プロジェクトで不採算案件を発生させたものの、撲滅施策を矢継ぎ早に打ち出し、昨年度の経常利益率は9.9%という高水準まで引き上げた。富士通は中堅企業向けERPの開発でFsolの協力を仰ぐなど、その力はグループ内外で評価されている。そんな企業の新社長が、どんな経営戦略を描いているのか――。インタビューを待ち望んでいた。
歯に衣着せぬコメントが持ち味の 前社長。一方、柔らかい雰囲気をかもし出す杉本社長。両者の印象は異なる。だが、挑戦的な目標を示す強気な姿勢、そして人づくりを重視する考えは、 社長と相通じるものがある。そんな感想を抱いた。(鈎)
プロフィール
杉本 隆治
(すぎもと りゅうじ)1948年2月10日生まれ。福岡大学経済学部卒業後、74年1月に富士通入社。94年、関西営業本部システム統括部第一製造システム部長。00年、システム本部関西システム統括部長。03年、地域ソリューション本部長。04年、関西営業本部副本部長と、富士通関西システムズの代表取締役社長を兼務。09年6月26日、富士通システムソリューションズ(Fsol)代表取締役社長に就任。
会社紹介
富士通グループのSE会社で従業員数は約2200人。昨年度(2009年3月期)の売上高は697億円で、経常利益率は9.9%。富士通グル―プのソフト開発会社のなかでも、保有するSE数と売上高、利益率はトップレベル。富士通が受注した大規模プロジェクトの開発を請け負うほか、関東エリアに的を絞った自社営業によるビジネスも手がける。強みは各業種ごとにラインアップを揃えるソリューション「WebSERVE」とアウトソーシングサービスの「Apl serve」。