地域販社との連携を模索
──NECフィールディングはCS(顧客満足度)を重要視してきましたが、CSについての考えはいかがですか?
中西 CSを大切にする考えは変わりません。ある調査会社が毎年行っているCS調査で、当社は長年取り続けたCSナンバーワンの座を今は明け渡してしまった状況です。ですので、CS向上に対する思いはむしろ以前よりも強い。今は「チャレンジ、CSダントツナンバーワン」を掲げ、ワーキンググループを6個つくって改善策を検討している最中です。
──NECグループも不況で苦しんでいます。NECフィールディングは売り上げ規模が大きいだけに、求められる業績も水準が高いはず。ですが、今年度は減収減益を見込んでいます。
中西 ストック型ビジネスが多いので、景気後退の影響を受けにくいビジネスモデルではありますが、やはり以前は獲得できていた保守契約が結べないなど、不況の影響はあって、それを重く見ています。
グループ内で、NECフィールディングに対する業績面への期待が高まっているのは確かです。「1000分の100」というコミットメントがあります。NECの今年度(2010年3月期)連結営業利益計画1000億円のうち、当社がその10分の1にあたる100億円を稼ぐという必達目標で、是が非でもやらなければならない。教育に対する投資も今年度からやりたいですが、我慢の年と位置づけて、この目標を達成することに集中します。
前社長が定めた計画や施策があって、それを否定するつもりは一切ありませんから、より実現性を高めることが、まずは私の役目だと思っています。
──ほかの保守サービス会社はここ数年、事業基盤を変化させ、プラットフォーム系システムの企画から構築、運用、そして保守まで網羅する体制を築きつつあります。
中西 それはNECフィールディングも同じです。そのための人材育成を加速させています。
当社は約500拠点に約4000人のCEを配置しています。この巨大なサービス網のなかで、それぞれのCEがユーザーに直接会って、どんな要望があるのかを聞いています。もうすでに「場」はある。あとは人の育成です。
──地方まで張り巡らしている拠点と人員は強力な武器です。どの企業も地方の中小企業を攻めあぐねている状況だけに、NECフィールディングの強みをこの市場で生かせるのではないですか。
中西 大規模なミッションクリティカルシステムの運用・保守にも強く、確かにこの領域も得意としています。ただ、この領域を今後拡大させるには、各地域に点在する販売店との連携が必要だと思っています。
販売店がもつ得意分野とNECフィールディングができる分野を組み合わせ、ユーザーに提供する体制を築きたいと考えています。
グループ企業のNECネクサソリューションズが東名阪地域に集中する体制になった今、NECグループとして、それ以外の中小企業へのアプローチは当社の役割だとも感じています。ですので、お客さん回り、現場回りがひと段落したら、その次は販売店回りに時間を割きたいと、社内で宣言しています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
中西社長は、「現場主義の徹底」を強く意識しながら、ミドル層(中堅社員)の底上げも強化ポイントに置いている。「経営陣の考えを把握し、アクションプランを作成して現場に落とす。その役割を果たすミドル層が育っていれば、会社はもっと強くなる」。中堅社員とのタウンミーティングを計画しているようで、モノづくりのプロが、「ヒトづくり改革」に着手し始めようとしている。
今回のインタビューの大半を従業員の話に費やした。決して、記者が誘導したわけではない。メーカーに長く身を置き、モノづくり畑が長かったからこそ、ヒトを重要視する考えが強いのかもしれない。
「サービス業はヒトが命」。そう聞くことが多い。ただ、育つには時間がかかる。目先の利益を重視して、二の次、三の次になりがちだ。「不況下でも中期的な視点で人材育成の強化に取り込む」と強調した中西社長。その内容に期待がもてる。(鈎)
プロフィール
中西 清司
(なかにし きよし)1950年2月14日、東京都生まれ。73年3月、横浜国立大学工学部電気化学科卒業。同年4月、NEC入社。04年、CSR推進本部長兼支配人。05年4月、プロセス改革推進本部長兼知的資産R&Dユニット支配人。同年7月、ものづくり革新ユニット支配人兼知的資産R&Dユニット支配人。06年、執行役員。08年、執行役員常務。09年4月、NECフィールディングに移り顧問。同年6月、同社の代表取締役執行役員社長に就任。
会社紹介
NECグループの保守サービス会社で、業界最大手。連結従業員は約6500人。国内に483か所(連結)に営業・サービス拠点を設置し、全国を網羅するサービス体制を築く。PCやサーバー、ネットワーク機器などのハード修理・メンテナンスサービス、またアウトソーシングや情報システムの運用代行などのITサービスも手がける。ハードの単価下落で保守サービス単価も下落し、売上高が下降線をたどった。だが、構造改革や業務効率化、リストラで持ち直し、利益率は回復傾向にある。