――拡販していくためのチャネル戦略で、強化策を講じるのですか。
グッドウィン パートナー同士で差異化が図れるように取り組んでいきます。販売パートナーによって得意な業界やユーザー企業の規模に違いがあります。そこで、当社が攻める市場を細分化し、その領域に見合ったパートナーを確保します。
販売支援については、当社の製品をよく知ってもらうためのトレーニングを引き続き強化します。ただ、それだけでは販売パートナーは納得しない。ですので、案件が獲得できる武器を用意しました。「Virtualization Pack」というパッケージです。このパッケージは、ストレージ機器と仮想化環境に必要なソフト3種類を組み合わせたもの。価格は販売パートナーで異なりますが、これまでより40%程度の割引率になります。
――価格を引き下げて売りやすくするとしても、販社の儲けが減るのでは?
グッドウィン 販売パートナーには、このパッケージで利益を稼ぐというよりも、ユーザー企業に対して「まずは試しで」という感覚で提案してもらいたいと考えています。仮想化環境をスモールスタートで構築したいというユーザー企業は数多い。しかも、必ず増設したいというニーズが出てきます。販売パートナーには、この商材で新規顧客を開拓し、増設の際に儲けを出すと認識してもらいます。
――このパッケージを何社のユーザー企業に導入することを狙っていますか。
グッドウィン 年内までに40~50社への導入は固いと確信しています。
仮想化でチャンスをつかむ
――製品機能の優位性やパッケージ提供などで謳っていますが、現段階で力を入れている分野は仮想化ですか。
グッドウィン 仮想化環境は、サーバーなどのフロントエンドで浸透している。しかし、ストレージまでは普及していない。だからこそ、チャンスと捉えています。
ただ、「仮想化で主導権を握る」という当社のビジョンをアピールするだけではユーザー企業に理解してもらえない。販売パートナーの販売意欲を高め、なおかつ仮想化の普及につなげるために、今回のパッケージを提供したのです。
販売パートナーからよく聞くのは、「ストレージのハードウェアだけではマージンが取れない」という悩みです。これは他社製品を含めての話ですけれど。価格が折り合わないことを理由に、ユーザー企業が当社の製品を導入しないというのでは、意味がありません。しかも、販売パートナーは他社製品も扱っています。こうした状況を鑑みて、さらには仮想化ニーズが高まっていることも踏まえ、当社と販売パートナー、ユーザー企業のすべてがメリットを享受できる策が必要なのです。
――ユーザー企業にとっては安価に仮想化環境が構築でき、販社にとってはパッケージでの新規開拓とデータ増加に伴う増設案件が獲得できると。
グッドウィン その通りです。仮想化を導入するのはコストを削減したいからなんです。その際に、製品単価が高ければ意味がない。その壁をパッケージ化で突き崩すということです。
――仮想化に関しては、EMCがVMwareを子会社化していますよね。ストレージ専業という同じ立場にあって、仮想化に関する優位性はあるのですか。
グッドウィン VMwareに限らず、さまざまな仮想化関連メーカーとアラアンスが組めるというのが当社の強みです。ソリューションのラインアップを増やすため、今まさに大きなアライアンスを組もうとワールドワイドで進めている段階です。近日中には発表できるはずです。
――サーバーメーカーとのアライアンスについては考えておられますか。多くがストレージをもっていますが…。
グッドウィン 確かに、サーバーメーカーはストレージももっていますが、ストレージに関してはサーバーと比べると弱い。もちろん一概には言えませんが、サーバーに力を入れているメーカーであればあるほど、ストレージをベースとしたソリューションを強化できない傾向が強いのではないでしょうか。ですので、ベストブリードの観点から、案件ベースでサーバーメーカーとアライアンスを組んでいるケースがあるんです。お互い得意な分野で製品開発を高めていこうと機運が高まっているのです。
――となると、サーバーメーカーと大きなアライアンスを組む可能性があるということですか。
グッドウィン この件に関しても話が進んでいるところです。来年3月までには実現したいと考えています。
――今後の成長率に関して描いている目標数値などはありますか。
グッドウィン 今は不況ということを踏まえ、四半期ごとに前年比10~15%の成長率をキープしていきます。景気が回復した際には前年比20~30%増を目指します。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ストレージ業界のメーカーについて、「他社は、どこも大規模になりすぎている」とみている。専業メーカーならば話は別だが、ストレージメーカーの多くはサーバーやネットワーク機器、さまざまなソフトウェアをもつ。「ほかの製品が主力になっているケースが多い。他社でストレージ事業を手がける担当者は、社内調整が難しいのではないか」と弱点を指摘する。一方、「当社は、すべての社員がストレージをベースとしたソリューション創造に力を入れることができる。しかも、15人体制とまだまだ小さいだけに小回りが利く」としている。社内組織については、「業績を伸ばさなければ人員を増やすことはできないので、成長につれて考える」という。
日本には19年間在住。日本の文化を心得ており、海外出身なだけに日本の優れた点も弱点も理解している。ビジネスの面では、ストレージ業界に根づいた文化を良い方向に進めることを考えている。(郁)
プロフィール
ティム・グッドウィン
米F5ネットワークスのバイスプレジデント兼日本法人の代表取締役として日本市場でビジネス拡大を実現。Q1 Labs社のAPACエリアの代表として営業に従事した。2009年7月にアイシロン・システムズの代表取締役に就任。
会社紹介
クラスタリング接続の「クラスタストレージ」を開発する米アイシロン・システムズの日本法人として2005年4月に設立。最近では、クラスタストレージはスモールスタートができて拡張性も高いということから、「スケールアウトNAS」を標榜している。
ユーザー企業となっているのは、放送局など映像関連をはじめ、通信事業者やサービスプロバイダといったデータを大量に保管する企業が多い。しかし、最近では一般オフィスでもデータ量のが増加で、ユーザー層が広がっている状況。低価格製品の投入で新規顧客を開拓している。