医療・介護の相互連携を注視
──直近では、ASP比率はどのくらいあるのですか。また、医療分野でも同じようなビジネスモデルを展開される予定でしょうか。
湯澤 介護福祉のシステム事業の売り上げ構成比で、昨年度は63%まで拡大しました。実数でいえば、06年3月期が7億円余りだったのが、昨年度末は33億円へと拡大しています。毎年、じわじわと実数、比率ともに拡大させてきたことが、昨年度の増収増益をけん引したといえます。介護福祉システム事業全体の昨年度売上高は約52億円ですが、医療情報はまだ7億円余り。ここは介護福祉とは異なり、市場は今後、大きく成長することが見込まれています。当社の売り上げもまだ小さいですし、市場のさらなる拡大も見込めますので、ASP化は現段階ではあまり意識していません。
──政府のIT戦略本部が5月に公表した「新たな情報通信技術戦略」では、重点施策の一つに医療を挙げています。大手コンピュータメーカーなどの大資本が競争相手となり、不利なのでは?
湯澤 これまでも介護福祉分野で大資本と戦ってきましたが、当社の専門性、機動力を生かして勝ち抜いてきました。医療でも同様に勝てるチャンスはある。電子カルテやオーダリング、医事会計(レセコン)といった医療情報システムは、介護福祉よりも大規模で複雑です。当社では、年内をめどに完成する新しい医事会計システムについては、子会社を通じて他社へのOEM提供を予定しています。レセコンソフトは、一般企業でいうところの会計ソフトですので、会計ルール通りにつくるのが基本です。正直、差異化しづらく、この点では他社も同じだろうと考えて、OEMを決めました。すでに数社から引き合いがきており、当社にとってみれば、販売チャネルの拡大による販売増で、投資回収が早まるメリットがあります。
──IT戦略本部は、医療・介護や環境・エネルギー、クラウドなどの分野において、アジア市場の取り込みも視野に入れつつ、2020年までに約70兆円の新市場を創出するといっています。
湯澤 現実的にみれば、まずは2012年の診療報酬と介護報酬の同時改定、このタイミングでの医療・介護の相互連携など政策を注視しています。例えば、全国どこでも過去の診療情報に基づいた医療が受けられるようにする仕組みや、個人自らが医療・健康情報を電子的に管理・活用するための全国規模の情報提供を行う「どこでもMY病院」の構想がありますが、こうした施策は、どれもIT投資に直結するものばかりです。
昨年度は、当社売上高全体に占める介護福祉のシステム事業が約80%、医療が11%余り、その他コンサルティングや組み込みソフトといった構成比でした。将来的には、連結売上高を昨年度比で2倍近い100億円、経常利益率10%に伸ばす方針です。介護福祉だけで売り上げを伸ばし続けるのは難しく、医療分野の成否が今後のビジネスのカギになります。売り上げや利益が増えれば、投資体力も増し、競争力を高めやすい。こうした好循環の創出に取り組みます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ワイズマンは、介護福祉市場の成熟度合いにタイミングを合わせ、パッケージソフト型からASP型へ移行。トップクラスのシェアを維持しながら収益基盤を確立させた実力派ソフト開発ベンダーである。創業社長の南舘伸和氏(現代表取締役会長)のカリスマ性と強力なリーダーシップがあってこそだと評される。
湯澤一美社長がトップに就いたのは09年6月。「南舘が敷いた路線を守るのが私の務め」(湯澤社長)と、ツートップの体制を敷く。成長性は高いものの、大資本との激しい衝突が予想される医療分野では、南舘会長が従来通りのリーダーシップを発揮。守りが重要視される介護福祉では、組織戦を得意とする湯澤社長が指揮を執る。
「成長市場と成熟市場では、自ずと戦い方が違う」(同)と、タイプの異なる経営トップが、機動力と組織力のそれぞれの持ち味を生かし、事業拡大を推進する。(寶)
プロフィール
湯澤 一美
(ゆざわ かずみ)1958年、栃木県生まれ。80年、東北大学工学部卒業。同年、日産自動車入社。00年、商品企画室課長。01年、退社。05年2月、ワイズマン入社。同年6月、常務取締役管理本部長。06年10月、常務取締役第一営業本部長兼福祉営業部長。07年5月、常務取締役第一営業本部長。09年6月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
ワイズマンの2010年3月期の連結売上高は、前年度比4.5%増の65億円、経常利益は同452.6%増の3億円。11年3月期の連結売上高は同13.3%増の73億円、経常利益は戦略的な先行投資を行うためゼロ円の見込み。今期主要セグメントの売上高は、介護福祉向けシステム事業が同12.6%増の59億円、医療向けシステム事業が同20.3%増の8億9400億円の見通し。