パソコンから派生するビジネス
──主力としているパソコンメーカーはありますか。
玉田 店舗をもっていた頃には、企業のニーズが強かった「ThinkPad」の販売を重視していたので、その流れでレノボ・ジャパン製品の販売数が多いです。全体の50%ほどを占めているかな。残りの50%はさまざまなメーカー製品で構成しています。
──パソコンはメーカーから直接調達しているのですか。
玉田 いや、直接仕入れるのはデルくらいで、ほかはすべてディストリビュータを通します。特定のディストリビュータだけとおつき合いするのではなく、まんべんなく複数のディストリビュータから調達しています。
──ディストリビュータにとっては、在庫をもってくれる販売会社は貴重な存在だと思います。
玉田 当然、ユーザー企業の満足度を向上させることを大切にしていますが、ディストリビュータの要望に応えることも、同等に重要視しています。例えば、OSが切り替わる時期には、ディストリビュータも倉庫を空にしたいはず。そんな時は、ハイパーが大量に在庫を引き受けることがあります。こうした活動で、ディストリビュータに高く評価してもらえている部分も少なからずあるのかな、と。要するに、八方美人なんですよね(笑)。販売先のユーザー企業にも、仕入先のディストリビュータにもわが社を認めてもらおうとしていますから。
──今後もコンピュータの販売事業をメインに進めていく方針ですか。
玉田 コンピュータは必ず買い替えの時期が来ますので、販売するチャンスはずっとあります。すでに多くのユーザー企業とのおつき合いがありますから、顧客満足度を高める活動を怠らなければ、事業としては安定しています。なので、今後も中心になるでしょう。
ただ、それ以外のビジネスも伸ばします。オフィス用品の販売ビジネスであるアスクルの代理店事業、コンピュータの設置・保守などのサービス&サポート事業は今以上に成長させることができるでしょう。コンピュータの販売で取り引きさせていただいている既存のユーザー企業に提案できますからね。強化策の一貫として、アスクルの代理店事業では、オフィス用品の販売代理店として営業展開していたガレリア・レイノの一事業部門を譲り受けました。大阪に支店を開設します。
これまでは、地道に着実に慎重にビジネスを進めてきましたが、今年度(2011年12月期)は「攻めに出よう」がテーマ。パソコンで培ったビジネス基盤をもとに、新しい分野にもチャレンジしていきますよ。
・こだわりの鞄 関根俊一会長(前社長)と、新宿の伊勢丹に一緒に買いに行った鞄。2年前から使っている。「社長になる時、関根さんから『今使っている鞄ではダメだ』といわれて買った」。一緒に買いに行ったものの、「プレゼントではなく、自腹だった(笑)」とか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
個人客が中心の秋葉原での法人向け店舗の出店、あえて在庫を抱える逆転の発想、外出しない営業スタイル。そのユニークな発想でパソコンという薄利商品で儲けを出し続け、着実に成長を続ける企業だ。着実といえば、玉田社長は、挑戦的な目標は口にしないし、大げさな表現もしない。慎重で、緻密な人だ。
ハイパーのロゴは、三つの四角形が太線でつながって円を形成する模様。そこには、あるメッセージが込められている。「三つの四角形は、一つが顧客、一つがディストリビュータ、そしてもう一つが当社を表している。ユーザー企業だけでなく、ディストリビュータにも喜んでもらえるような存在になりたいという意味」と玉田社長は説明してくれた。
顧客満足度や従業員満足度の向上を求める企業はたくさんあるが、“仕入れ先満足度”を求める会社はそうはいない。売り先だけでなく、仕入先にも求められる存在。なかなかしたたかだ。(鈎)
プロフィール
玉田 宏一
(たまだ ひろかず)1986年3月、立正大学経済学部経済学科卒業。同年4月、新日本工販(現・フォーバル)入社。91年、フォーバルを退社。92年1月、ハイパーに入社し、同月4月に取締役に就任。96年に常務取締役、08年に取締役副社長を歴任し、09年4月から現職。
会社紹介
設立は1990年で、従業員数は約190人。昨年度(10年12月期)の売上高は前年度比21.1%増の137億1700万円で、営業利益は同269.7%増の3億1100万円。オフィス機器の販売事業から始め、設立して3年後にパソコンの販売事業に参入した。現在はパソコンの販売ほか、サプライ品の販売、アスクルの代理店事業、コンピュータのサポート&サービス事業を手がける。コンピュータの販売事業が全売上高の81.2%を占める。06年、ジャスダック証券取引所に株式を上場した。