パートナー投資を高めて新たな市場を狙う
──御社は中小企業市場で大きな存在感がありますが、今後も中小を中心に拡販戦略を進めていきますか。
小池 中小企業市場に対しては引き続き積極的に展開していきますが、新しい分野への挑戦として、エンタープライズ市場で成長機会をうかがっています。とくに、従来のファイアウォール(FW)では不可能だったアプリケーションを可視化して制御する「次世代FW」という新たな市場が目の前に存在しています。全世界でみると、従来のFWがワールドワイドで約2200万台。日本はその10%くらいに当たる200万台強の市場があるとされています。しかし、現在は次世代FWは1%しか入っていません。調査会社のガートナーは、2014年、グローバルで次世代FWの市場占有率が35%になると予測しています。当社の次世代FWでは独自開発の「アプリケーションインテリジェンス」を搭載しています。この機能を前面に出してリプレースを推進したいと考えています。
──アプリケーションインテリジェンスとは?
小池 企業は多くのウェブアプリケーションを利用していますが、仕事には関係ないアプリケーションを利用している社員がいれば、セキュリティやコンプライアンスの面からみても健全ではありません。企業が必要な帯域の確保や生産性を落とさないために、アプリケーションインテリジェンスを利用してFWを通過するアプリケーションを識別・可視化し、制御帯域管理を行うことは必須となります。それを実現するためのものです。
──エンタープライズ市場を開拓するにあたって、その推進力になるのは何だとお考えですか。
小池 ビジネスに生かすことができる技術知識や、サポートに関する高い能力をもっているSIerをパートナーにすることが重要です。1年前から、ディストリビュータで、SIerとの関係も強固なマクニカネットワークスと協業して、エンタープライズ市場に本格的に参入しました。その成果として、売り上げの55%強を大企業向けUTM製品「NSA E-Class」が占める状況になっています。
──順調に成長しておられるようですが、今後の課題を挙げるとすれば…。
小池 最も重要なのは、パートナー開拓です。その促進策の一環として、技術者向け支援プログラム「テクニカル ブートキャンプ」を開始しました。250人ほどの受講者を集めて、SEレベルで技術的な面をしっかり理解できるようにするのと同時に、営業担当者は当社製品について顧客に技術的なレベルでも説明して提案を行っていく。アプリケーションインテリジェンスをはじめ、データ解析やブロックを行う際にパケットを再構築することなく検査できる独自特許技術「RFDPI(Reassembly Free Deep Packet Inspection)の技術と合わせてマルチコア・プロセッサを搭載することで、高いパフォーマンスを実現することができます。今は3500以上のアプリケーションのシグネチャと1500以上のアプリケーションを特定し、制御できるようになっています。こうした最新技術をいち早くお伝えし、販売できる環境を提供することにチャレンジしていきます。
──今後の目標は?
小池 確実にいえることは、昨年よりも高い水準でビジネスが動いているということです。次世代FWという新しい市場で高い成長率を実現していきます。
・こだわりの鞄 エディ・バウアーの鞄で、1年前に購入したもの。米国からキャリアをスタートしている小池代表らしく、鞄を選ぶポイントは、「いつでもどこでもすぐに動ける機動性と耐久性」だそうだ。PCと資料など、必要なものを格納すれば、国内出張ならすぐ行けるとのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
小池代表は、肌身離さずアイデアノートを持ち歩いている。朝起きたとき、電車に乗っているとき、ふとひらめいたことをすぐにメモする。「アイデアを凝縮することで、かなり膨大なアウトプットを引き出せるようになります」。常に24時間体制で思いついては書き留める。その内容は会社の運営から、ビジネス戦略、はたまた学生向けの講演内容まで、さまざまに生かされる。
ソニックウォールは、まだグローバルで900人弱の会社。「私がいうのもなんですが、小さい会社なんです。日本で事業を展開して競争に打ち勝つために大事なのは、スピードと知恵です。スピードと知恵こそが命綱なんですが、アイデアノートはそれに大いに役立ってくれています」と明かしてくれた。
仕事一筋にみえる小池代表だが、プライベートでは3児の父。用途によって使い分けている鞄には、「子供の教育用」として塾関連のものが一式入った鞄もあるとか。子煩悩ぶりが垣間見える。(環)
プロフィール
マイク 小池
(まいく こいけ) 1988年、アメリカ国際大学院(サンダーバード)で経営学修士号(MBA)を取得後、米インテルに入社。カストマ・マーケティングマネージャを務める。90年、米アダプテックに入社。93年、日本法人設立のため東京に赴任。97年には韓国法人を設立し、日本および韓国(北アジア)のセールスディレクタに就任。2004年、アジレント・テクノロジーに入社。執行役員、半導体部品本部長に就任。07年8月、米ソニックウォールに入社。同年10月1日付で日本支社代表に就任。
会社紹介
米ソニックウォールの設立は1991年。米カリフォルニア州サンノゼに本拠を置き、全世界25か国、約840人の従業員を擁する。ファイアウォール/UTM(統合脅威管理)、SSL VPNやEmailセキュリティ製品を手がけている。日本法人は2000年に設立。SMB向けのUTM製品で大きなシェアをもっているが、最近は大企業向けのビジネスに力を入れており、昨年、キャリアグレードの次世代ファイアウォール「Super Massive」を発表した。