「これまで十数年も事業計画立案・実行の経験を積んできた。この経験を生かすためにも、新しいビジネスを創造したい」──。2011年4月1日、双日グループでネットワークインテグレーション(NI)を提供する日商エレクトロニクスのトップに就任した瓦谷晋一社長は、同社を従来型のインテグレータから「事業開発型の企業」に変貌させようとしている。サービス事業の拡大、複合技術ソリューション展開の強化、そして海外展開。瓦谷社長に、今後の事業戦略の柱となるものについて聞いた。
サービスの売上比率を50%に
──日商エレクトロニクスの社長に就任されて、およそ2か月。今、どんなことに取り組んでおられますか。
瓦谷 私は昨年10月に当社の副社長に就き、当社の経営方針などについての考えを整理・構築するために、半年の助走期間をいただきました。いきなり社長になった、というわけではありません。今現在は、2012年度から始まる3か年事業計画を立てることに取り組んでいます。当社がどのようにして事業を拡大していくか、各事業本部の部長などと議論を進めながら、方向性を具体化しているところです。
2012年4月をスタートポイントとした3年間で、大きく三つのことを実現していきたいと考えています。一つは、クラウドサービスを含めたサービス事業の大幅な拡充です。二つ目は、当社でこれまで収益要因が最も大きいソリューションビジネスを、さまざまな技術と組み合わせることによって付加価値を発揮する複合ソリューションを提供すること。三つ目は、海外展開の本格化です。2012年度から、中国などアジアの成長市場で、日系企業と現地企業の両方をターゲットに据え、海外ビジネスを拡大させていきたい。
──サービス事業を大幅に拡充していくとおっしゃいましたが、具体的にはどういうことでしょうか。
瓦谷 エンタープライズ事業本部で直接販売のかたちで展開しているサービス事業は、売上高構成比は現時点で約35%。サービスプロバイダ向けに販売しているハードウェアの事業よりも、まだ割合が低い。それを、2015年をめどに、変えたいと考えています。2015年度には、サービス事業の売上高比率を50%まで引き上げることを目標に掲げ、サービスの売り上げがハードウェアを上回る構成を目指しています。
──昨年末の本紙インタビューで、前社長の大橋文雄氏(現会長)は、「サービス事業の拡大に向けて、M&Aによるアプリケーション開発部隊の強化を図っていく」と言っておられました。その後、M&Aの進捗はいかがでしょうか。
瓦谷 M&Aは、当然ながら適切な企業を買収するチャンスがあれば、ということが前提条件ですが、今後、M&Aを含めて、サービスに必要なアプリケーション開発に的を絞って投資していく考えです。3か年計画のスタートに向けた基盤づくりとして、2011年度の上期中(4~9月)、商材としてのサービスの開発を加速化していきます。
──すでに新しいサービスの事例は生まれているのでしょうか。
瓦谷 現在、同じ双日グループで、当社の兄弟会社であるさくらインターネットと協業して、データセンター(DC)向けのサービスを提供する計画を推進しているところです。東日本大震災の影響を受け、企業がディザスタ・リカバリ(DR)対策として、利用しているDCを分散する動きが活発になっているとみています。それに対応して、さくらインターネットが今年の秋に北海道・石狩市で開設する予定の石狩データセンターを活用して、DC向けサービスを開始していく予定です。
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