日商エレクトロニクス(日商エレ、瓦谷晋一社長CEO)は、シトリックス・システムズ・ジャパン(マイケル・キング社長)と戦略提携し、同社の全製品を販売することを決めた。シトリックスの全製品を取り扱うパートナーが、国内で初めて誕生したことになる。日商エレは、従来販売してきた仮想化関連製品群だけでなく、ネットワーク系プロダクトの販売も始める。「シトリックスの全製品に精通する唯一のIT企業」を謳うことができる日商エレ。そして、全製品を販売してくれるパートナーを欲していたシトリックス――。両社の思惑が合致した。互いの幹部が、正式発表前に「週刊BCN」編集部の単独取材に応じた。
シトリックスの製品は、「Xen Desktop」などの仮想化関連と、「Access Gateway」「NetScaler」などのネットワーク系に大きく区分できる。シトリックスの課題は、同社の製品を取り扱うパートナーも、この2区分で分断されており、両方の製品群を販売するIT企業が存在していなかったことだ。シトリックスにとっては、今回の提携で両ジャンルの製品を販売する念願の戦略パートナーが生まれたことになる。
日商エレクトロニクスは、「MetaFlame(現・XenApp)」を国内で最初に販売したIT企業。現在はシトリックスが組織する4社の認定ディストリビュータの1社だ。ただ、ネットワーク関連製品では、他メーカー製品を販売していた。
日商エレの木部俊明・執行役員ソリューションパートナ事業本部長は、今回の提携を決めた理由について、「仮想化ソリューションでは、ネットワークの構築も含んだ提案が不可欠になる。1社の製品で網羅できれば、ユーザー企業に対する提案力が増す」と話した。また、「『オープンクラウド』『バーチャルコンピューティング』といったシトリックスが考えている中期戦略に共感した。仮想化は、サーバーに続いてデスクトップ、そしてネットワーク、ストレージまで広がる。シトリックスは、それを見越して戦略を立てている」とも話している。
日商エレは、今回の提携を受けて約20人の専門チームを発足させた。シトリックスの認定技術者も「現在に比べて2~3倍に増やす」(木部執行役員)。そして、東京だけでなく、全国の支社・営業所に技術者を配置する計画を立てている。
シトリックスの伊藤利昭・マーケティング&ディベロップメント本部本部長は、「われわれの組織体制はこれまで各プロダクトごとに分かれており、パートナーにとっては最適ではない部分があった。今年1月からそれを改め、パートナーとやり取りするSEには全製品に精通する知識をもたせている」と説明。戦略に沿った支援体制に変更したことを明らかにしている。
2010年度、「XenDesktop」は前年度比で6倍増など、仮想化ソリューションで驚異的に伸びているシトリックス。その高成長率と中期戦略を武器に、水面下で交渉を続けていた戦略が実を結んだ格好だ。一方、日商エレは唯一無二の存在を謳い、シトリックスのソリューションで優位なポジションを手に入れたことになる。(木村剛士)

取材後の撮影に笑顔で応えた日商エレクトロニクスの木部俊明執行役員(左)とシトリックスの伊藤利昭本部長