クラウド、モバイル、ソーシャルネットワーク
──基幹システムのクラウドサービス化やモバイル活用が話題です。事業の方向性を表すキーワードは?
村上 クラウド、モバイル、ソーシャルネットワークですね。SOA基盤「Infor ION」は、すべてに対応していきます。いくつかのアプリは、すでにクラウド環境で提供を開始していますし、iPhoneをはじめとするメジャーなスマートフォンには対応します。ソーシャルネットワークについては、FacebookやLinkedInなどと簡単に連携できるような業務シナリオを想定して、製品対応していくつもりです。例えば、製品を販売するために営業担当者が在庫情報を確認したり、顧客の情報を調べたりするときを想定してみましょう。基幹システムにアクセスするでしょうけれど、Googleのほか、米国ではほとんどのビジネスパーソンが利用しているFacebookやLinkedInで顧客のことを検索すれば、詳細なプロファイルを得られる可能性があります。
基幹システムの定型に近い情報と、外部の膨大な情報との接点をもつようにしていかなくてはなりません。すでに新しいユーザーインターフェースの「Infor Workspace」があります。この半年で、対応製品を増やしていきます。
──基幹業務にクラウドサービスはどれだけ浸透するでしょうか。
村上 クラウドサービスの引き合いはかなり多い。実際の利用は徐々に進んでいるという状況です。少なくとも、プライベートホスティングは相当進むでしょう。パブリッククラウドはアプリによるのですが、生産管理や販売管理、在庫管理などの基幹システムが速やかにパブリックに移行するとは到底思えません。
パブリックにしろプライベートにしろ、まだまだ利用料金はそんなに安くないので、もっと安くなれば利用が進む可能性はあると思います。
──ところで、今年3月に米本社は400人のエンジニアを採用する計画を明らかにされました。どのような目的があるのでしょうか。
村上 全従業員8000人中、1800人がR&D(研究開発)の人材でしたが、これを2200人に拡張する。先ほど触れたソーシャルネットワーク、モバイル、「Infor ION」関連の開発環境をより充実させることが目的です。
背景を説明しますと、企業の経営判断や現場での判断を加速する仕組みをつくりたいという考え方が土台にあるんですよ。当社はERPやSCM、BI、設備保全などの製品をもっていますが、ユーザー企業は競合のパッケージや手組みのシステムも利用しているケースがあります。
でも、システムを統合するには時間もお金もない。今あるものの相互運用性を高めつつ、なるべく時間とお金かけずに、好きなデバイスで簡単に情報を見たいわけです。これを実現する環境を推進するために「Infor ION」関連の研究開発投資を増やしました。当社の製品はもちろん、それ以外の他社製品、手組みのシステムとの相互運用性を高めるために、標準化と開発を進めていきます。
──今年4月には、ERPベンダーである米ローソンソフトウエアを買収するとの発表がありました。
村上 買収の件に関しては、本社サイドでないとコメントできないのです。一ついえるのは、インフォアは今後も積極的に企業買収をしていくということです。
──中堅規模の製造業に強いという御社の立ち位置は今後も変わりませんか。
村上 日本では、中堅規模の製造業に強いと強烈にアピールしていますが、グローバルでみると製造業だけではないし、中堅規模だけでもない。実は、日本でも製造業以外のユーザーをたくさん抱えています。大手企業のプロジェクトもあります。
ことさら中堅企業向けと強調しているのは、外部に対するメッセージをシンプルにするためです。買収対象も中堅製造業向けベンダーだけに絞るのではない。ただ、オラクルのように一挙に百貨店のようになるかといえば、そうではないと言っておきます。
・お気に入りのビジネスツール複数のデバイスを普段持ち歩く村上社長。「かさばるので大変」という鞄のなかには、ブラックベリーやAndroid端末などのスマートフォン、iPadなどを収納している。複数のSNSのアカウントを一括管理できる「HootSuite」や「Evernote」を愛用しているという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
1年ほど前、村上社長にインタビューした時、ERPの導入期間の長期化という課題の解決に向けて、人材育成の強化に取り組んでいるということ聞いた。同時に、短期間での導入に成功した事例も紹介していただいた。
今回の取材で、さらに導入期間の短縮が進んでいることを知り、正直なところ驚いた。グローバルプロジェクトの案件が倍増しているというから、大変忙しいのではないかと思う。
事業の柱として掲げる三つのキーワードは、主要なERPベンダーのそれと大きくは変わらないが、積極的な投資姿勢と意気込みは十分に伝わってきた。「Infor ION」をはじめとする新製品で市場を拡大しようとしている。
村上社長には、あらためて若々しい印象を受けた。年齢を聞いた時は、いささか意外に思った。若々しいエネルギーを存分に発揮したさらなる飛躍に向けて、次の一手に注目したい。(宮)
プロフィール
村上 智
(むらかみ さとし)富士通に入社し、システム営業として9年間の経験を積んだ後、日本タンデム・コンピュータ、コンパックコンピュータを経て、EMCジャパンで幅広い分野での営業責任者を歴任。2003年からは日本ピープルソフトでエンタープライズ・ソフトウェア製品に関わる営業部門の責任者を務めた。05年、オラクルによるピープルソフト買収に伴い、日本オラクルインフォメーションシステムズで要職を歴任した。07年に代表取締役社長に就任。
会社紹介
インフォア・グローバル・ソリューションズは125か国、7万社以上のユーザー企業を抱える業務アプリケーションベンダーである。世界中に8000人以上の従業員を抱える。地域別売上分布は、南北アメリカが49%、欧州・中東・アフリカが42%、アジア太平洋地域が9%。