東日本大震災のインパクトを受けて、「データセンター(DC)の市場は確実に伸びる」──。DCを主要顧客とするネットワーク機器ベンダーのフォーステン・ネットワークスの林田直樹社長は、ここにきて、DC業界の活発化に強い手ごたえを感じている。DCの首都圏離れが進むなど、取り巻く環境が大きく変動しているなかで、事業の拡大に意欲をみせているフォーステン・ネットワークス。林田社長に事業戦略を聞いた。
日本の売上構成比を2~3倍に伸ばす
――ディザスタ・リカバリ(DR)や節電への対策として、企業がDCを関西など“非首都圏”へ移設する動きが加速しています。林田社長は、この動きをどう捉えて、ビジネスの面でどのような手応えを感じておられますか。
林田 東日本大震災と電力供給不足の問題を受けて、企業は、震災が発生した際にも事業を継続できるようにするために、いかにリスクを分散していくかに腐心しています。また、夏に懸念される停電に備えて、対策を急いでいます。その一環として、ITインフラの根幹をなすDCを分散したり、DCを東京電力管外の場所に移設する動きに出ているのです。DCが首都圏に集中しすぎたこれまでの状況ががらっと変わり、今後、地方に普及する動きが急速に進んでいくとみています。
われわれは、金融系の企業やメーカーがDCを関西や福岡に移設したり、地方にDCをもつユーザー企業やDC事業者がDCの設備を拡大する動きをみて、商売の面においても、確かな手ごたえを感じています。西日本を中心としたDCの新設・増設をめぐって、当社は数件の案件が引き合いをいただいている。これらが売り上げにつながるよう、各案件のフォローに力を入れていきたいと思っています。
――御社のビジネスであるDC向けネットワーク機器の市場は、どのくらいの伸びをみせるのでしょうか。
林田 まず、市場が伸びるのは確実です。現在に比べて2割程度は拡大していくと見込んでいます。ここ数年、DCが多様化しているので、当社はDCを五つのカテゴリに分類しています。そのなかで、とくにSNSや検索エンジン、ゲームなどのプロバイダが運営する「Web 2.0」系のDCと、SaaSやPaaS、IaaSなどクラウド型サービスを提供する事業者のDCを重点的に狙っていきます。この二つの領域は、今後、市場が伸びると確信しています。一方で、現時点で最も数が多い、プライベート・クラウドで利用されるエンタープライズの従来型DCは、ネットワーク機器の需要が減少しているのです。当社は、DC市場をこのように分析して、成長が見込める「ウェブ2.0」と「クラウド」のDCにフォーカスして、事業の拡大を推進していきます。
――Force 10 Networksの過去12か月のグローバル売上高は、約1億7400万ドルに及びました。日本では、震災前から、DCを中心としたネットワーク機器のハイエンド市場が活発になっています。フォーステン・ネットワークスのグローバル売り上げへの貢献度の「現状」と「今後」を教えてください。
林田 日本法人の売上構成比は、現時点でおよそ5%と、まだ比較的低い。しかし、日本では、当社が強みとするハイスペックのネットワーク機器が多くの企業に望まれ、機器の導入を他の国と比べて速いスピードで実現できるなど、市場の条件は揃っています。これを生かして、向こう2年で、日本の売上構成比を、10~15%に拡大していくことを目標に掲げています。
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