2次代理店を増やしていく
――御社はこのほど、コンテナ型のDCをターゲットにして、小型の分散型コアスイッチを発売されました。新しい分散型コアスイッチは、林田社長が目指しておられる事業拡大に向けての重要な商材になりますね。
林田 そうです。コンテナ型DCは日本ではまだあまり普及していませんが、今後、需要が高まるとみています。DCでは、サーバーの冷却にかかる費用が非常に高く、コスト削減や省エネを図って、DCの面積をなるべく小さくする事業者が増えているのです。DCの小型化が進むとともに、当然小さいスペースでも高性能を発揮する小型ネットワーク機器のニーズが出てきます。当社はその需要を狙って、小型機器の展開に注力していきたい。
米国本社は2009年に、ネットワーク機器ベンダーのTurin Networks社と合併して、資金的に余裕が生まれ、技術を大幅に強化することができました。技術の強化を踏まえて製品戦略を一新し、製品開発に取り組んできたのです。フォーステンは、他のベンダーに先駆けて、業界初の10ギガビット・イーサネットスイッチを開発した企業ですが、競合も相次いで10ギガビットの製品を投入するようになって、埋没していった時期がありました。しかし、2年前の合併によって、ネットワーク機器業界での強さを取り戻し、売り上げに関しても、従業員の数に関しても、成長の道を歩んでいます。
――今後、御社がDC向けビジネスを柱として事業を拡大していくためのポイントとなるのはパートナー戦略だろうと思います。これに関してはどのような施策を打っていかれるのでしょうか。
林田 当社は今、テクノロジーと販売の両分野で、パートナー戦略の強化に取り組んでいます。技術パートナーは、現時点で10社を有しており、近々、8社くらいをパートナーとして新規に獲得すべく、展開しています。
われわれは、テクノロジー分野でのパートナーシップの構築にあたって、ユーザー企業は新しいIT機器を既存の機器に合わせて有効に利用したいという要望が多いので、複数のベンダーの機器を並行使用できるオープンなエコシステムをつくることがとても重要だとみています。当社の製品展開を拡大するために、現在、オープンなエコシステムに基づいて、デルやIBMなど、サーバーやストレージを展開するベンダーとのアライアンスを組むことを検討しているところです。
――販売パートナーついてはいかがでしょうか。
林田 1次代理店として、NECや伊藤忠テクノソリューションズ、ネットワンシステムズなどの有力なパートナーを抱えています。1次代理店に関しては、今後も戦略は大きく変えません。これから重点的に新規の販売パートナーとして獲得していきたいのは、システムインテグレータ(SIer)を中心とした2次代理店なのです。今年の2月に、2次代理店向けのパートナープログラムを開始し、何社かに興味をもっていただき、好調なスタートを切りました。2次代理店の数を増やすことが、事業拡大を実現するためのカギを握っていると考えています。
――御社は、パートナー販売を重視して、ハイタッチ営業にはあまり積極的に取り組んでおられませんね。
林田 ハイタッチ営業よりも代理店、というスタンスを徹底しています。製品の数を出していくために、リソースが限られたハイタッチ営業は非効率だと捉えているからです。成長に向けては、何より2次代理店を増やしていくことだと考えています。
・こだわりの鞄 林田社長のこだわりの鞄は、「MANHATTAN PASSAGE」のビジネスバッグ。「常にパソコンを持ち歩くので、超軽量で耐久性と機能性を求めて、4年前から愛用している」とのことだ。MANHATTAN PASSAGEはもともと、軍用のバッグを製造していたが、今は、一般の人にも愛用者が多いとか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
2009年のTurin Networks社との合併によって息を吹き返したForce 10 Networksは、グローバルでの成長を目指して、アジアでの事業拡大に注力している。現在約650人の従業員を有する同社は、社員の数を増やしており、アジアでの採用を推し進めているところだ。林田社長は、「日本でも、社員数を順次増やしていく」という。フォーステンにとって、日本はアジアのなかでもフォーカスを当てている市場で、日本での売り上げが中国やインドでの売り上げよりも大きいそうだ。
林田社長は、東日本大震災の影響を受けたDCの首都圏離れにとどまらず、震災のリスクが低い海外でバックアップ用のDCをつくる動きが出てくるとみている。ここ数年、クラウド・コンピューティングがアジアで普及し、DCの需要が拡大している。今後、日本企業がアジアを中心とした海外でバックアップ用のDCをつくることによって、アジアでのDC需要がさらなる刺激を受けるといえそうだ。(独)
プロフィール
林田 直樹
(はやしだ なおき)1961年4月、長崎県長崎市生まれ。85年、中央大学商学部卒業、87年にシドニー大学のスモールビジネスコース修了。オーストラリア三菱商事機械部などを経て、セガエンタープライゼス・オーストラリアのマネージング・ディレクターに就任。99年に帰国後、ポリコム、ネットギア、日本タンバーグ(現シスコシステムズ)の社長を歴任。10年8月、フォーステン・ネットワークスに入社後、同年11月に代表取締役社長に就任。
会社紹介
ネットワーク機器ベンダーの米Force 10 Networksの日本法人として、2002年3月に設立。NECや伊藤忠テクノソリューションズなどの代理店を介して、イーサネットスイッチやルーターを販売している。主なターゲット市場はデータセンター(DC)をはじめ、エンタープライズや通信キャリアなどの大手。グローバル事業での売上構成比は、現時点でおよそ5%。東京・築地にオフィスを構え、約80人の従業員を有する。