有力SIerの東忠集団は、中国・杭州市にある東忠テクノロジーパークをベースにして、中国市場でのビジネス拡大を推し進めている。NECやNTTデータ、富士ソフトグループ、シーイーシーといった日系有力SIベンダーと合弁会社をつくり、東忠は彼らのビジネス基盤を支える役割を担う“東忠プラットフォーム戦略”を展開。現在、中国各地にテクノロジーパークを開設する準備を進めており、日系SIerの力量を最大限引き出すことでビジネス拡大を狙う。創業トップの丁偉儒董事長に話を聞いた。
大手日系SIベンダーが結集
――中国杭州市の御社が運営する東忠テクノロジーパークには、NECやNTTデータ、富士ソフトグループ、シーイーシーといった日本を代表するSIer、ITベンダーが結集しています。いったい何が起ころうとしているのですか。
丁 東忠プラットフォーム戦略にご賛同いただいたSIベンダーが、当社の敷地面積約5万m2の東忠テクノロジーパーク(東忠科技園)で、中国でのビジネスを展開中という状況です。合弁方式を採っており、当社は出資比率が2割を超えないことを目安にしています。
――どのような狙いがあるのですか。
丁 いうまでもなく、日系SIベンダーの中国でのビジネスが実を結ぶのを手助けするためです。中国の情報サービス市場が大きく伸びているなかで、日系SIベンダーは中国市場への参入を急ピッチで進めています。しかし、実際のところ、外国のベンダーが中国でビジネスを立ち上げるには、いろいろと手間がかかります。
情報サービス事業は、人材が資産そのものですので、まず、人の確保をどうするのかという大きな課題から始まり、細かいところでは法人登記の手続きやさまざまな規制をクリアする方法など、対処すべきことが多岐にわたります。
中国の市場成長のスピードは速いので、もたもたしていたら、獲れるはずの案件を逃しかねない。当社のテクノロジーパークを活用すれば、われわれが人材獲得から各種手続きに至るまでトータルで課題を解決して差し上げましょうという提案です。テクノロジーパークは2008年に竣工して、2011年4月には第二期工事が終了。直近では、およそ1500人の開発・運用のエンジニアが勤務しています。
――つまり、日系SIベンダーが中国でのビジネスの拡大を円滑に進められるような開発プラットフォームを提供している、と。
丁 そうです。例えば、合弁パートナーの日系SIベンダーA社が中国で大きな案件を獲得したら、この1500人のなかからSEを供給します。次に合弁B社が案件を獲得すれば、同じように人材を供給する。SIプロジェクトはどうしても繁閑のバラツキができますので、複数の合弁パートナーで開発リソースを実質的にシェアすることで、SE稼働率を最大限に高めるというスキームです。
直近では、日系SIベンダーやアウトソーシング会社など9社と合弁事業を立ち上げており、2012年3月末までには12~13社に増える見込みです。開発やアウトソーシングの案件も順調に増えていますので、2012年末をめどにテクノロジーパークの開発・運用人員を今の約2倍の3000人に増やす準備を進めています。
物理的な収容可能人数は5000人という想定で設計していますが、おそらくそこまで増やす前に、中国のほかの場所で杭州と同じ方式のテクノロジーパークを開くことになるでしょう。
――テクノロジーパークの次の候補地は決まっているのですか。
丁 今のところ、2012~13年をめどに山東省済南市に2か所目のテクノロジーパーク開設準備を進める一方、内陸部の成都や中国東北の吉林、将来的には南部の広西チワン族自治区や西部の陝西省でのテクノロジーパーク開設を構想中です。済南拠点にはすでに200人ほどの当社スタッフがいますので、足がかりはすでにあります。
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