その他
日系ITベンダーはなぜ中国でシェアが低いのか 社名一つで命運が大きく変わる現地の事情
2011/11/02 21:07
週刊BCN 2011年10月31日vol.1405掲載
日本のSIerの主な海外進出先である中国では、現地法人を誰に任せるかによって、その後のビジネスの成長が大きく左右される。具体的には、中国法人のマネジメントを日本人の駐在員が担うか、中国人の実力あるマネジャーに任せるかで選択肢が分かれ、仮に後者を選んだ場合、どこまで中国法人の自主性を重んじるのかで第二の選択肢にぶつかる。
自らの国に置き換えて考えたとき、日本IBMや日本マイクロソフトなどの外国の日本法人の成功例をみると、黎明期から日本人管理者を育て、彼らの成長期の中心的役割は日本人が担ってきた。これを日本のSIerやITベンダーの海外法人に置き換えてみて、さらにSIやITサービスといった法人向けソリューションの特性を鑑みると、地元の商慣習に精通しているマネジメント層を選ぶほうが得策といわざるを得ない。
一つのエピソードがある。中国では法人名の登記は、原則として漢字である。このためNECは、中国にある34の法人名の冠に「日電」や「恩益禧(NECの表音表記)」、場合によっては英字イニシャルの「NEC」と入れている。NECに統一したほうがわかりやすいのは明らかなのだが、個々の事情があってのことだろう。この点について、中国有力SIerの東忠集団の丁偉儒董事長は「実は“NEC”が世界で通用する唯一無二のブランドだと、地元の役所に認めさせられるかどうかで対応が変わる」と、事情を説明してくれた。
つまり、誰でもそのブランドを知っていて、混乱を招かなければ“NEC”での登記は可能だということだ。いかにも中国らしい融通無碍な対応ともいえる。さらにいえば、「“NEC”で登記できなければ、今回の投資話は難航しますよ」と言い添えることも忘れない。登記の段階ですでに投資計画は決まっていて、名称程度では路線に変更はないのだが、ちょっとしたツボの押さえどころで、「ごく一般的な総務部の平社員でも“NEC”で登記できる」(丁董事長)とのこと。東忠集団とNECの合弁会社の“NEC軟件系統科技”も英字イニシャル登記に成功している。これはNECのブランド力を最大限生かしたケースだとみることもでき、実際、東忠集団は“NEC”のブランドをテコに中国杭州の地元政府から5万2mの広大なテクノロジーパークの土地を得て、今では1500人規模の人員を擁する有力SIerに成長している。
なぜ、富士通よりはるかに小さい東軟集団(Neusoft)が中国の情報サービス市場でトップクラスのシェアを獲るSIerに成長し、どうしてIBMやHP、SAPなど欧米有力ITベンダーのシェアの総和が中国で2割もあり、それに引き替え、なにゆえに日系ITベンダーのシェア総和が統計できないほどの小ささなのか。IT商材の実力そのものよりも、こうした文化理解度や商習慣のあたりに解の一つがあるような気がしてならない。(安藤章司)
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