東日本大震災を受けて、BCP対策やグローバル化への対応、スマーターシティへの取り組みが進展した日本IBM。クラウドサービス、ハードウェアの販売が好調だった。2012年は、「ビッグアジェンダ」をキーワードに設定。インダストリスキルの強化やパートナーとの関係構築を進める。
BCP対策やスマーターシティが活況
――2011年を振り返って、どのような一年でしたか。
橋本 2010年度(12月期)の第4四半期に景気が少し落ち込み始めましたが、2011年には好転すると思っていました。ところが、3月に東日本大震災が起きたでしょう。5月の連休までの間、ほとんど営業活動ができない状況が続きました。そのため、上半期は非常に厳しかったですね。夏以降、少しずつ需要が回復していき、そのままよい方向に向かうと思っていましたが、今度は円高、タイの水害ですよ。というわけで、見込みよりは市場の回復が遅いというのが実感です。ただし、着実に回復傾向にはあります。
震災によって、(ユーザー企業が)まだ手をつけていなかったけれど、早くやらなければと悶々としていた分野へのIT投資が加速しています。一つは、事業継続計画(BCP)対策です。バックアップに対して、これまで金額面で躊躇しておられたお客様の導入意欲が高まっています。加えて、クラウド。クラウドは震災によってその有用性が証明されました。二つ目は、グローバル化の進展に伴うシステム構築です。三つ目は、スマートグリッド、スマーターシティなど。もう少し、盛り上がりは先だと思っていましたが、震災を受けて宮城県でスマーターシティがかたちづくられる環境が整ってきました。
――震災を受けて事業が停滞していたとき、どのような手を打たれたのですか。
橋本 プライオリティー(優先順位)を変えて取り組んできました。レスキュー(救助)、リカバリ(回復)、トランスフォーメーション(変化)という流れです。レスキューのフェーズでは、震災復興のために、被災地で住宅を流されて学校などに避難していた方々を、ITを使って支援しました。その次のリカバリで、BCPや堅牢なシステムの構築、クラウドサービスを提供し、トランスフォーメーションを手助けしました。
――震災がなければ、もっと伸ばせたと思うビジネスはありますか。
橋本 もう少しBAO(ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション)を伸ばしたかった。加えて、グローバル化に対する投資をもっと早くできたかもしれない。基幹業務システムは更新する需要が少し減りました。それは、投資のプライオリティーの問題です。まずは工場を立ち上げなければ、ということでしたからね。
BAOの見込み客は増えてきました。サプライチェーンの可視化だとか、お客様の視点でのマーケティング分析をきちんとやっていきたいなど、引き合いは上々です。お客様の業務の高度化、効率化に対する意識の高まりはもちろん、震災の影響によるサプライチェーン強化の動きなどがこうした状況の背景にあるのでしょうね。
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