日立グループの強みを生かして
――海外市場でも、御社と日立製作所、日立ソリューションズの連携は生かせそうですね。
高橋 中国・ASEANでは少しずつ輪郭ができつつあります。まず、2012年11月をめどに中国・大連で約2000ラック相当の大型DCを開設します。日立製作所と中国地場有力SIerの大連創盛科技などが連携して開業するもので、当社は長年培ってきたDCの運営面を担う。このスキームは中国・広州でも展開していて、11年6月には広州有力SIerの広東華智科技と協業してDCを活用したBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)拠点を開設します。さらに溯る10年6月には、タイでのビジネスに強いSIerと組むかたちでDCを活用したクラウドサービスを始めています。
いずれも日立製作所と密接な連携をとっていますが、11年10月1日には日立ソリューションズが中国法人を北京に開設。中国での拠点展開を進めているとのことですので、日立ソリューションズともより深い連携が可能になりそうです。彼らは強みとするSIビジネスを主軸に据え、当社は大連や広州のDCを活用したサービスビジネスの側面で存在感を示していきます。当社がDCやクラウド運用のノウハウを海外の地場有力SIerに提供し、ともにビジネスを展開するスキームは、今後も応用が利きそうです。
――日立製作所は社会インフラに強く、重電で培った制御技術は他のITベンダーやSIerにない強みになると思いますが、いかがでしょう。
高橋 成長国ではスマートコミュニティをはじめとする社会インフラ分野へのIT投資が大きな比率を占めますので、ご指摘いただいた日立グループの強みは、当然、大きなビジネスチャンスへとつながります。スマートコミュニティは往々にして公共案件絡みとなることが多いのですが、例えば当社の中国におけるビジネスパートナーのなかには、公共分野を得意とするケースも少なくありません。先の大連創盛科技は、地元自治体向けの電子政府システムの設計・開発で実績があるSIerで、DC完成後はクラウド形態の行政サービスを本格的に支援していく見込みです。
また、当社独自のサービスとしては、製造業・卸売業向け基幹業務パッケージや、流通業向け受発注データ交換サービスといった業種・業務に適した商材を海外でも展開していく方針です。
――日立システムズとしてのビジネス目標をどのようにイメージしておられますか。
高橋 旧2社の連結売上高の単純合算ベースでは約3500億円規模で、社内的にはこれを2015年度をめどに5000億円、海外売上高比率を10%に高めていくイメージを描いています。向こう4年で500億円プラスして4000億円に高めるという現実路線も選択肢としてありましたが、冒頭に言及した通り、“すべてを任せてもらえるグローバルサービスカンパニー”になるためには、高い目標を掲げて、それを実現していく力が求められていると考えています。
・こだわりの鞄 お気に入りは「HUNTING WORLD」のビジネスバッグ。「事業部長になったばかりの2002年頃に、妻がプレゼントしてくれたもの。大きい鞄が苦手で、出張に行くとき以外は、ほとんどこの薄めのバッグを愛用している」と、重宝している様子だ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
長年、ストレージビジネスに関わってきた高橋直也社長は、グローバルでシェアを獲得することの大切さを身に沁みて感じてきた。世界でまとまったシェアを確保している日立のストレージは、今となっては日本のIT産業にとって貴重な存在だ。「ユーザーの海外進出が拡大し続ければ、IT設備の購入決定権が国内に残るとは限らない」(高橋社長)とみられるからだ。
情報サービスでも同様で、ドメスティックのままでは、いずれ行き詰まる。「アプリケーションソフト開発一つ取り上げても、国内でしか売れないのと、世界で売れるのとでは、1ライセンスあたりの開発コストは大きな違いが出る。利幅をみても、海外で一定のシェアがあるアプリケーションとの差は歴然」と、グローバル化の重要性を説く。
経営統合によって売上規模がほぼ倍増した日立システムズは、日立製作所や日立ソリューションズと密接に連携して、海外事業の拡大を目指す。(寶)
プロフィール
高橋 直也
高橋 直也(たかはし なおや)
1948年、神奈川県横浜市生まれ。73年、慶応義塾大学大学院工学研究科修士課程修了。同年、日立製作所入社。01年、情報・通信プラットフォームグループRAIDシステム事業部長。03年、情報・通信グループCOO。06年、執行役常務。07年、執行役専務。09年、代表執行役副社長。11年4月、日立電子サービス代表取締役社長執行役員。11年10月、日立システムズ代表取締役社長に就任。
会社紹介
日立システムズは、2011年10月1日、旧日立電子サービスと旧日立情報システムズが経営統合してスタートした。年商規模は旧2社の連結売上高の単純合算ベースで約3500億円。およそ10か所のデータセンター(DC)を運用するとともに、全国拠点による保守サービスを強みとする。中国・ASEAN市場においても日立製作所や地場有力SIerとの協業を通じてDC運営に取り組んでいる。