金融や産業、スマコミに手応え
──パートナーを含めたおよそ20社の合議体制というイメージは掴めましたが、ビジネスの状況もお聞かせください。
神田 現実をみると、純粋な意味での中国のビジネス規模はまだそれほど大きくありません。中国でのビジネスは二十年来の歴史があるものの、この内訳をみると、日本向けのオフショアソフト開発の比率が実に8割方を占めています。日本側からも国内でのコスト競争力を高めるために、中国への発注量を増やす傾向が強まっており、直近では、日本のNTTデータ単体ベースのソフト開発の外注金額のうちのオフショア開発比率は10%程度に拡大しています。この多くが中国への発注と捉えてもらって結構です。
中国での人員規模はおよそ4000人に拡大し、開発力は大幅に高まっています。昔の話になりますが、旧北京NTTデータは中国人民銀行、旧NTTデータチャイナは中国版郵便貯金のシステム開発プロジェクトに参画した経緯があり、もともと中国地場ビジネスの受注を主眼に置いた会社でした。その後のシステム運用・保守は、中国側の都合で残念ながらわれわれ外資は直接関わることはできませんでしたが、その一方で、対日オフショア開発が拡大しました。今後の発展の方向としては、対日オフショアを手がけつつも、やはり巨大な地場市場でのシェア拡大を目指したい。
──地場市場への足がかりはどのあたりでしょうか。
神田 もともとNTTグループは銀行や保険といった金融分野に強く、中国では人民銀行、中国版郵貯システムの実績があります。産業分野はSAPを軸とした基幹業務システムやサプライチェーン管理、公共分野はスマートコミュニティ(スマコミ)に可能性をみています。
スマコミ系では、例えば2012年1月から北京市の高度道路交通システム(ITS)の技術実証実験に参加しています。渋滞情報の収集からデータ分析、情報配信まで手がけることで、交通渋滞の緩和と省エネ運転意識を向上させます。同じくITS系では、江蘇省江陰市で高速道路などの橋梁の振動幅や歪みなどをセンサーで計測し、市内のソフトウェアパークに開設した分析センターに情報を収集・分析するシステムの実証実験を手がけるなど、実績が出始めているところです。江陰の近くにある無錫のグループ拠点にはデータセンター(DC)設備を順次拡充しており、これとは別に1~2か所のバックアップサイトの確保も検討しています。
──今後の売り上げ規模については、どのくらいを見込んでおられますか。
神田 中国地場市場に向けた売り上げは、まだ公表できるだけの規模に達していないというのが正直なところです。ただ、ビジネスパートナーを含めた約20社では、向こう5年で88億元(約1000億円)のイメージを共有しています。厳密な意味での連結売上高ではありませんが、末広がりを表す88という数字を掲げて、皆で共有できてわかりやすいイメージを打ち出すことが、まずは大切だと考えています。
・お気に入りのビジネスツール iPhoneグローバルモデルには、日中小辞苑や名刺管理の「WorldCard Mobile」を入れて持ち歩く。急な赴任で秘書の手当てが間に合わず、「辞書や名刺管理ソフトが役立った」と顔をほころばす。一時帰国をする際には、NTTドコモの回線を使っているとのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
世界5極体制への移行を進めるNTTデータは、地域ごとに“One NTT DATA”のブランドを確立する。さらに、ITソリューション商材や業種対応の組織は世界横断的な“One Team”とする。壮大な構想ではあるが、こと中国では一足飛びには理想に近づけそうにない。
神田文男総裁は、「中国総代表としてグループのガバナンスの強化に努める」としているものの、中国は人と人のつながりや地の利が重視される市場。合理的だからといって多様性を不用意に切り捨てれば、失敗しかねない。
あるNTTデータ役員は「神田さんは飄々としているが、実はタフネゴシエーター。あまり角を立てずに全体をとりまとめる才覚で右に出る者はそうそういない」と、中国市場の特殊性を織り込んだ総裁人事だと推測する。独立心旺盛な中国のグループ会社トップらを、いかに“One NTT DATA”としてまとめあげるのか──。総裁としての腕のみせどころである。(寶)
プロフィール
神田 文男
神田 文男(かんだ ふみお)
1954年、京都生まれ、大阪育ち。78年、京都大学工学部卒業。同年、日本電信電話公社(現NTT)入社。04年、NTT東日本法人営業本部流通・サービスソリューション営業部長。06年、NTTコミュニケーションズ第三法人営業本部流通・サービスソリューション営業部長。07年、法人事業本部第四法人営業本部長。09年、NTTデータ執行役員ビジネスソリューション事業本部長。11年、NTTデータチャイナ総経理。同年、北京NTTデータと合併し、新生NTTデータチャイナ総裁に就任。
会社紹介
情報サービス業界最大手のNTTデータの今年度(2012年3月期)連結売上高は前年度比3.3%増の1兆2000億円、営業利益は同2.2%増の800億円を見込む。うちグローバルでの売上高は今期約2000億円、来期(13年3月期)は約3000億円を目指す。直近の構成比では欧米の比重が高く、アジア最大市場である中国でどこまでビジネスを伸ばせるかがグローバルビジネスのカギを握る。