NTTデータは、中国での事業運営体制を4月から順次刷新する。同社は中国で約15社のグループ会社と、5社の一部出資を含むビジネスパートナーの計約20社でビジネスを手がけている。設立や合弁・提携の経緯から、これまではともすれば個別最適が過ぎる傾向がみられたが、これを「One NTT DATA」をキーワードに、一体感ある運営体制へと移行する。約20社で共有する事業イメージとして、今後5年で88億元(約1000億円)への売上拡大を据える。(安藤章司)
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NTTデータチャイナ 神田文男総裁 |
NTTデータの中国事業体制の一体化は、2012年にスタートした世界のNTTデータグループ会社の統合・再編の一環だ。北米では1月から、EUとアジア地区は4月から順次スタートする。NTTデータの山下徹社長は、「“One NTT DATA”をテーマに、グローバルガバナンスの強化やグローバルブランドの統一を本格的に進める」として、中国でもグループとしてのガバナンスやブランドの強化に乗り出す。
4月からの刷新に先立って着手したのは、NTTデータチャイナの体制強化だ。昨年末までに旧NTTデータチャイナと旧北京NTTデータを統合し、その直下にデータセンター(DC)やBPO事業を手がける無錫NTTデータを置く再編を実行。新生・NTTデータチャイナを中核に、中国でのグループ会社約15社と、一部出資会社5社の連携や結束を深めていく。中国総代表の立場にあるNTTデータチャイナの神田文男総裁は、「中国と日本はビジネスが密接であるがゆえに、同じグループ会社でありながらも、各社がバラバラの運営になりがちだった」と反省を口にする。
NTTデータは、2013年3月期に海外売上高3000億円を目指し、理想的な構成比として米州、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)、APAC(アジア・太平洋地域)で、それぞれ1000億円ずつの売り上げを目標に掲げていた。しかし現時点では、米州とEUを中心としたEMEA地域は目標に向かって順調に推移するものの、APACの最大市場である中国での売り上げは「米、EUにはほど遠い状態」(神田総裁)という。この背景には、中国ビジネスでは日本向けのオフショアソフト開発が全体の9割近くを占め、欧米市場とは事情が異なるということが挙げられる。
中国で約15社のメジャー出資グループ会社は、社員総数がおよそ4000人。マイナー出資や合弁のビジネスパートナーは5社ほどで、大連華信計算機技術や上海啓明軟件など有力地場SIerも含まれる。神田総裁は、「まずはこの約20社を“One Team”と捉え、このとりまとめ役を新生・NTTデータチャイナが担う」という。北米では、KeaneやIntelligroupなどの主要グループ会社6社を順次統合し、社員数約1万6000人、売上高約12億ドル(約1000億円)規模の会社へと再編するが、中国ではグループ各社の独自性を生かしつつ、当面は緩やかな合議制で臨む。
中国地場市場は、ここ数年、年率2~3割増の勢いで拡大しており、市場環境もめまぐるしく変化している。「中国の事業会社は、年率2~3割で売り上げを伸ばすところはざら。なかには50~80%増やしている会社もある」(神田総裁)と、当面は個別最適+合議制でビジネスを伸ばせると判断。神田総裁はその議長的な存在として全体をとりまとめ、One NTT DATAとしての一体感を強める。

五つの地域・ソリューションを軸に統合・再編、一体化を推進
ビジネスパートナーを含む約20社全体で共有する売り上げイメージは、向こう5年で88億元(約1000億円)。マイナー出資の会社も含まれているので、厳密な意味での連結売上高とはギャップがあるものの、「“88”という数字は末広がりで縁起がよく、まずはわかりやすい将来イメージを共有することが大切」(神田総裁)として、中国地場の有力企業の旺盛なIT投資やスマートコミュニティを中心とする公共分野、もともと得意とする金融分野を軸に、グループ会社がそれぞれの強みや営業コネクションを生かすことでビジネスの拡大を推進する。
表層深層
中国事業の中核を担うNTTデータチャイナに統合された旧NTTデータチャイナと旧北京NTTデータは、ともに中国地場ビジネスと深い関わりをもつ。1990年代、旧NTTデータチャイナは中国人民銀行の業務システム、旧北京NTTデータは中国版郵貯システムの構築を担った。だが、改革開放のただなかにあった当時の中国でも、さすがに国の中枢を担う金融システムを外資に依存するのは抵抗があったようで、その後の保守メンテナンスまではつながらなかった。
以来、20年近くにわたって、対日オフショアソフト開発を軸にグループ会社は約15社まで増え、ビジネスパートナーとの関係を深めてきた。NTTデータはM&A(企業の合併と買収)をベースに欧米でビジネス基盤を築きつつあり、今後は日欧米のグループ会社と中国事業会社との連携をより密にすることで、外資系を含む中国市場での受注拡大を狙う。
アジアビジネスを成功させるには、最大市場である中国地場での事業拡大が欠かせない。NTTデータチャイナの神田文男総裁は「サービス基盤であるDCも無錫だけでは足りない。バックアップ先を1~2か所確保したい」と、中国での投資に強い意欲を示している。今年4月には、北京と上海で、中国政府要人や顧客幹部らを招いて、新生NTTデータチャイナグループのお披露目を行う予定。NTTデータブランドの地場市場での認知度向上にも力を入れることで、中国市場により深くコミットする考えだ。